とある姉達の心理感応(メンタルリンク)   作:絶対能力進化ver1.3

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第12話 『鯖缶が繋いだ縁』

           

 独自の情報網で犯人を特定したレベル5の2人、そしてレベルアッパーの模倣犯を調べていた『風紀委員(ジャッジメント)』の2人……この2つの事件が交差したタイミングは、決して偶然ではないだろう。

 

 それは本当に運命の悪戯とも呼べるもので。

 

 

「まさか食蜂さんのクローンの噂が本物で、しかも今回の事件の黒幕かもしれないだなんて……」

 

 普段はあまり使うことのない来客用の茶器をガチャガチャと鳴らしつつ、白井黒子は後ろの椅子に座る学園都市第3位と第5位の2人を眺め、大きな溜息を吐いた。

 

「ごめんなさいねぇ。まさか、こんな事になってたなんて」

「い、いえ! 食蜂さんのせいでは……!」

 

 白井の後ろでは、初春がやや緊張気味に茶葉をあれこれと見比べていた。せめてもの見栄なのか精一杯のおもてなしなのか分からないが、経費削減のツケが回って大したものが出せないのが泣き所である。

 

 

 それにしても大ごとになったものだ、と白井黒子は改めて食蜂を見ながら思う。

 

 学園都市第3位と第5位……何かと2人を引き合いに出す連中とは距離を置いているつもりだが、そんな黒子でもなんとなく2人の反りがあまり合わないことは知っている。

 

 その2人が手を組むということは、事態がそれだけ深刻だということだ。

 

(まだ詳細は聞いていませんが……なんとなく嫌な予感がしますわね)

 

 

 彼女のいる部屋がノックされたのは、その直後だった。

 

 

「こんにちはー」

 

 

 底抜けに明るい声とともに、狙ったのか偶然にしては出来過ぎるタイミングで現れた人物は、黒子の脳裏に浮かんでいた黒髪の少女であった。

 

「あれ? 初春も白井さんに、御坂さんに食蜂さん、それから帆風さんまで……!」

 

 驚いた顔を浮かべる佐天涙子。

 

 いつものメンバーに加え、常盤台最大派閥の食蜂派閥のツートップという豪華キャストである。学園都市でも7人しかいないレベル5のうち2人、レベル4の白井黒子に同じくレベル4の帆風順子と中々の一大戦力だ。

 

 だが、普段と違うといえば、佐天の方も1人ではなかった。追加の客人がもう1人、入ってくるなり絶叫する。

 

 

 

「って、なんでレベル5がここに2人もいるのよーー!」

 

 

 

 サバ缶繋がりで知り合った‟サバ友”こと、『アイテム』のフレンダである。とばっちりで暗部組織に誘拐されかかっていた佐天を救助し、お礼として彼女の家に入り浸っていたらしい。

 

 そんなベレー帽の金髪迫真美少女のフレンダであるが、佐天に「ちょっと紹介したい友達がいて」と誘われて風紀委員177支部まで連れてこられたところ、見事に御坂美琴と食蜂操祈に出くわしたのであった。

 

「聞いてないんですけど! 佐天が風紀委員の支部に良いお茶があるとか言うから、のこのこ付いてきてみればレベル5が2人もいて! 何なの今から戦争でも始まるわけ!?」

 

「まぁまぁ落ち着いてください。滅多に見れる光景じゃないんで、偶然ですよ多分」

「たまには見れる光景ではあるんだ!?」

 

 フレンダが驚愕する。

 

 ただのレベル0だと思っていた佐天だが、本人はともかくコネは想像以上だ。レベル5第3位の『超電磁砲』に第5位の『心理掌握』が揃っている。

 

(あの二人、暗部の情報だと仲悪いってことになってたけど、まさかブラフだったとか!?)

 

 気づいてしまった衝撃の事実にハッとするフレンダ。特に美琴とは一度やりあったことがあるため、現在でも『アイテム』としては要注意リストに載せている。

 

 

「あわわわわわわわわ」

 

 すぐリーダーの麦野に報告した方がいいだろうかと悩んでいると、大体の思考を察したのか美琴が「いやいやいや」と否定にかかってきた。

 

「アンタが何考えてるのか、おおよそ検討はついているけど多分それ違うから。一時的な共闘だから」

「あれ、ひょっとして御坂さんも知り合いなんですか?」

 

 初春が首をかしげる。

 

 佐天が連れてきた謎の金髪美少女だが、どうも美琴は知っているような口ぶりだ。世間は意外と狭い。

 

「なんだ~、フレンダさんのこと知ってるなら、先に言ってくださいよ~。御坂さんも人が悪いなー」

「いや、友達っていうか……」

 

 むしろ互いに殺し殺されかけた仲である。共に研究所での激闘を思い出したのか、いつでも攻撃できるように警戒しつつ睨み合う二人。

 

「フレンダ、だっけ? なんでアンタがこんなとこにいるのよ? 佐天さんとどういう関係?」

「私と涙子は、サバで結ばれた深い仲なワケよ!」

 

「え、なに……サバ?」

 

 ちょっと何を言っているか分からない。

 

「えっと、サバってあの鯖のことよね? 海泳いでて、缶詰とかにして食べるやつ」

「そうよ! むしろ他にどんなサバがあるのかって、いたらこっちが逆に聞きたいワケよ」

 

 とりあえずサバの件は解決した御坂だったが、やはり何ひとつ分からない。見かねた佐天が割って入る。

 

「えーっとですね……サバはともかく、さっき困っているところをこのフレンダさんに助けてもらったので、そのご縁といいますか」

 

 謎の組織に誘拐された話まですると長くなりそうだったので、かいつまんで説明する佐天。

 

 

「そしたら御坂さんたちが勢ぞろいしてたところに出くわしたという訳でして。あ、そういえば聞き忘れてたんですけど、そういう御坂さんたちこそ揃って何を?」

 

 逆に質問され、御坂美琴は言葉に詰まる。

 

 どこまで答えて良いものか。まだ不確定情報が多すぎるし、答えた以上は佐天まで巻き込むことになる。何より、目の前にいるフレンダが何者かも分からないまま、デリケートな話はしたくない。

 

 結局、無難なところだけを抜き出したところ、はぐらかすような説明になってしまう。

 

「んー、謎の集団昏倒事件を調べていたら、黒幕が食蜂のクローンだったから呼んだ、みたいな?」

「あらぁ、御坂さんったら説明がお上手ねぇ。小学生でも理解できるぐらい簡単すぎて、逆に何ひとつ伝わらない気もするけどぉ」

 

 食蜂が茶化すように口を挟む。

 

「まぁ、見た目がお子ちゃまだからぁ、そのぐらい可愛い説明の方が違和感力ゼロで相応じゃないかしら。よしよし、よく言えまちたね~」

 

 ブチィッっと御坂の中で何かが弾ける音がした。

 

「おおおお落ち着いてくださいまし、お姉さま!?」

 

 普段暴走しがちな黒子だが、今回ばかりは珍しく抑え役に回る。荒ぶる御坂を止めようとわたわたしている黒子を見るのは、初春や佐天にとってもなかなかにレアな光景だ。

 

 

 **

 

 

 ――しばらくして。

 

 

 おっほん、と白井黒子は大きく咳払いをした。

 

「と、とにかく、ですの。今は共闘中なのですから、お姉さまは抑えてくださいな。食蜂さんも常盤台の生徒として、あまり大人げない茶々入れないでくださいな」

 

「はぁ~い。白井さんがそう言うなら、仕方ないわねぇ」

 

 気の抜けた食蜂の声が返ってくる。とりあえずは黒子の仲裁で場を抑えることに成功したようだ。続けて黒子は佐天の連れてきた金髪の少女に目を向ける。

 

「それで、そこの貴女。フレンダさん、でしたわね?」

 

 黒子の問いに、フレンダがこくんと頷く。

 

「そういうアンタも、前にどこかで会ったわね。たしか……」

「白井黒子ですわ。常盤台中学1年、風紀委員も務めておりますの。そしてこちらが同僚の初春」

 

 黒子の紹介で初春も頭を下げる。ひととおり挨拶が済み、黒子はフレンダをどう扱うべきか思案する。

 

(ただの一般人なら、あまり関わらせたくは無いんですけど……)

 

 問題は、目の前にいる金髪少女が“ただの一般人”には見えないということだ。

 

 佐天がさらっと流していたが「困ったことがあって助けてもらった恩」というのが、ただのナンパやポン引きのようなもので無い事を、黒子は風紀委員としての勘でなんとなく察していた。

 

(パッと見はただの一般人ですけど、自然体に見える動きの中にもキレがある……それに、服の下に何か隠し持っていますわね……)

 

 間違いなく、何かしらの戦闘訓練を受けている。それも、風紀委員などよりずっとレベルの高いものを。

 

 

「なになに? なんか面白そうな動画じゃん。ちょっと見せてー」

 

「――ってぇ、何しれっと風紀委員の機密情報を覗きこもうとしてやがりますの!!?」

 

 しれっと初春の前にあるパソコンに身を乗り出したフレンダを、白井黒子は全力で止めにかかった。風紀委員でない御坂や佐天がしょっちゅう入り浸ってる時点で今更ではあるが、一応は一般人に見せてはいけない機密レベルの情報なのだ。

 

 だが、わずかにフレンダの方が早い。彼女とて伊達に暗部をやってるわけではないのだ。

 

 

「ふむふむ、食蜂操祈のクローンねぇ……ふぅん、なかなか面白そうじゃない♪」

 

 

 かくして、白井黒子の‟嫌な予感”は見事に的中したのである。

  




 
 ラッコちゃんの襲撃がなかったので、フレンダはそのまま佐天さんと家でいちゃいちゃしてました。たぶん。知らんけど。
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