とある姉達の心理感応(メンタルリンク)   作:絶対能力進化ver1.3

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第13話 『集結』

 女子高生に囲まれるというハーレムは男なら一度は憧れるものだが、いざその当事者となった浜面が感じたのは半端ないアウェイ感だった。

 

「……俺、もう帰っていいかな?」

 

 現在、浜面がいるジャッジメント177支部には白井黒子ら風紀委員をはじめ、食蜂派閥に『アイテム』など様々な人々が一同に会していた。

 

 

 おまけにデリバリーで大量の出前やら宅配フードやらが持ち込まれて、ちょっとした大宴会である。

 

「あれ? 今日のシャケ弁と昨日のシャケ弁はなんか違う気がするけど。あれー?」

 

 秋物らしい明るい半袖コートを着込んだ麦野沈利は、ストッキングに覆われた足を組みなおしながら首を傾げている。

 変わんねぇよ、と浜面は心の中だけで突っ込む。

 

 

(いや、むしろここまでは普通だ。というか最近、普通になった光景だ……)

 

 

 そこで浜面は、麦野の隣に目を向ける。

 

「香港赤龍電影カンパニーとコラボしたこの中華テイクアウトボックス、超常連メニュー入りして欲しいんですけど、今日で終わっちゃうのは何故なのでしょうか。と、そこの『超電磁砲(レールガン)』はどう思います?」

 

「え、アタシ?」

 

 麦野の隣では、ふわふわしたニットのワンピースを着た絹旗最愛が、ハリウッド映画に出てきそうな謎中華の紙箱からビーフンらしき食べ物をつまみつつ、レベル5第3位の御坂美琴によく分からん話題で絡んでいる。

 

 

「結局さ、サバ缶のカレーがキてる訳よ」

 

 絹旗の隣ではフレンダが、サバ缶カレーを猛烈な勢いで食している。そんな彼女とテーブルを挟んだ前では、常盤台の制服を着た縦ロールのいかにもなお嬢様が目を丸くしていた。

 

「まぁ、サバを缶詰にした挙句カレーに? 一般の方々が考えることはよく分かりませんわ……最初からサバをカレーに入れるのとどう違いますの?」

「いや、これが結構おいしいんですよ~」

 

 ひょい、と黒髪のごく普通の女子生徒、といった見た目の生徒が顔を出す。

 

「そうそう、ルイコの作るサバ缶カレーは絶品なワケよ! ってなわけで、おかわり」

「フレンダさん、遠慮ないっすね……あ、帆風さんも一口どう?」

「では、お言葉に甘えて」

 

 帆風、と呼ばれた縦ロールの生徒が鯖カレーを口に運ぶ。そのやり取りを見ていた美琴が首を傾げる。

 

「あれ、佐天さん帆風さんと知り合いなの?」

「はい。白井さんの紹介で、初春と一緒にお会いして」

 

 名前を呼ばれて、佐天の隣にいた初春も会話に入ってくる。

 

「相変わらず、ザ・常盤台のお嬢様って感じで素敵ですよね~。同じ常盤台でも変態の白井さんとはオーラが違います」

「……初春、何か言いまして?」

「いひゃい、いひゃいへす、ひらいふぁん」

 

 こめかみをヒクつかせ、白井黒子が初春の頬を引っ張る。そんな二人を眺めてた帆風順子が、思い出したように手を突く。

 

「そうそう、忘れるといけませんわ。紹介しますわね、こちらが食蜂操祈さま。私達の女王です」

「初めまして。よろしくね~」

 

「「じょ、お……お……女王!!」」

 

 遠くで美琴が「白々しい……」と呆れ顔をしているが、佐天と初春は初めて生で見る「常盤台の女王」呼びにテンション上がりっぱなしである。

 

 

 それをニヤニヤしながら見ているのは、ナース服のコスプレをした変な女。

 

「おやおや、操祈ちゃん大人気だねぇ。これは私も『女王』って呼んだ方がいい流れかな?」

「それはちょっと気持ち悪いわねぇ」

「ありゃりゃ、振られちった」

 

 

 そんな感じで、わちゃわちゃしている風景が繰り広げられていたのだが、それを浜面仕上は信じられない物を見るような顔で眺めていた。

 

 

 そう、問題なのは――。

 

 

 

(なんでレベル5が一度に3人も集まってるんだよ、オイ!?)

 

 

 

 浜面とて、かつては100人以上のスキルアウトを束ねたリーダー、それなりにプライドはある。

 

 だが、レベル5の第3位から第5位までが一堂に会すると、やはり縮こまってしまう。

 

(そうでなくとも、年下の女子ばっかの中に一人だけ男がいるってのは、なんとも居心地が悪いな)

 

 『アイテム』の面々とは仕事柄、多少は慣れたが今は目の前にその倍はあろうかという女子生徒が女の子同士でワイワイしている。

 

 

「はーまづらぁ」

 

 そこに、麦野が割って入ってくる。

 

「この状況、140文字以内で説明して」

「え、ええとだな」

 

 喉まで出かかっているからあと少しで分かる気がする、と浜面は息巻く。そして結論に辿り着いた。

 

「フレンダが余計な首つっこんだのが悪い」

 

 

 **

 

 

「結局、敵の敵は味方って訳よ!!」

「と、とりあえず皆で仲良くやっていきましょ~……あはは」

 

 

 30分後、なぜか一同を仕切っていたのは、ドヤ顔のフレンダと苦笑いを浮かべる佐天涙子だった。

 

「け、結論からいうとですね、今回の騒動の原因となっているのは、食蜂さんのクローンである『木原ミサキ』さんが原因です」

 

 緊張しながら佐天が説明すると、さっそく食って掛かったのは麦野だった。

 

 

「んで、どう落とし前つけてくれんのかしら。常盤台の女王さん?」

 

 

 明らかにバカにした口調の麦野に、帆風を始めとする食蜂派閥が一斉に身構える。その様子を見て、麦野はさらに上機嫌で煽っていく。

 

「おうおう。虫一匹すら殺したこと無さそうな箱入りお嬢様風情が、数が多いからって調子に乗ってるんじゃねぇぞ」

 

 滝壺を誘拐されて気が立っているのか、喧嘩腰を崩そうとしない麦野。実際、単純な攻撃力だけでいえばこの場にいる誰よりも強い。

 

 対して、食蜂は優雅に紅茶を飲む姿勢こそ崩そうとしないものの、密かに片手をバッグに入れて中に入っているリモコンに指をあてた。

 あとは食蜂の指先ひとつで、一斉に派閥の全員が戦闘態勢に移行する。

 

「………」

「………」

 

 一触即発の空気の中、沈黙を破ったのは御坂美琴だった。

 

 

「アンタたちがやり合うのは一向に構わないけど、せめて外でやってくれないかしら」

 

「あん?」

 

 振り返った麦野が不機嫌そうな声を出す。

 

「ほほう、今度は第3位のお子ちゃまと来たか。お互い、知らんとこで自分のクローンを言いように使われた間抜け同士、傷の舐め合いでもしたいのかにゃーん☆」

 

「あ゛?」

 

「お、お姉さま! お待ちくださいまし!」

 

 御坂美琴が全身から放電するのを見て、今度は白井黒子が慌てて止めに入る。

 

 

 ――船頭多くして船山に登る。

 

 

 そんな諺があったなー、などと若干の現実逃避を含めて浜面仕上は目の前の諍いから距離を置いていた。

 

(とりあえずレベル5を3人も集めれば一大戦力だしどんな難事件もすぐ解決、なんてのはフィクションの世界の話だということがよーく分かったぜ)

 

 むしろレベル5同士で足を引っ張り合って、内輪揉めで敵を利するんじゃないかと思えるほど。

 このままでは『アイテム』vs 食蜂派閥 vs 御坂美琴&『風紀委員』連合軍、という学園都市最大規模の3つ巴の内戦が発生しかねない。

 

 

 真剣にどうしたものかと悩んだ末に、浜面はダメ元で手を挙げた。

 

「あのー、ちょっといいですかね」

 

 次の瞬間、ギロッと音が聞こえそうな勢いで3人のレベル5の視線が集中する。

 

 心の中で「ヒィッ!!」と悲鳴を上げてちびりそうになるのを我慢しつつ、浜面は「もうどうにでもなれ」と投げやりに言葉を続けた。

 

 

「とっ、とりあえず現状を整理しよう!」

 

 もうどうにでもなれ、と浜面は半ばヤケクソで一気に口走った。

 

「第5位のクローンが徒党を組んで、手当たり次第に能力者へ精神攻撃をかけている。精神攻撃をかけられた能力者は昏倒し、かけたクローンは相手の脳を乗っ取って、それをネットワーク化することでどんどん強力になっている」

 

 

 問題は、敵がどこにいるか分からず、誰を襲撃するかも分からないということだ。

 

 食蜂が派閥を総動員すればそれなりに数は揃えられるが、学園都市中に分散している相手を全てカバーできるほどではない。

 闇雲に探していても、後手に回るだけだ。その間にも被害者は増え、犯人は益々手が付けられなくなる。

 

 

 案の定、絹旗が怪訝な顔で聞いてきた。

 

「浜面。そもそも向こうの狙いも超分からないんじゃ、どうしようもありませんよ」

「いや、狙いなら分かる」

 

 正確には狙いの傾向だけどな、と浜面は付け加えた。

 

「相手は基本的に、特定の誰かを狙っているわけじゃない。自分の演算能力を上げるために、手当たり次第に能力者を取り込んでひたすらレベル上げをやってるだけだ」

 

 

 だとしたら――。

 

 

「狙うのは、なるべく効率よく演算能力を底上げできる場所か人物なんじゃないのか?」

「つまり、上位ランクの学校とかですか?」

「ああ、そうだ。特に常盤台のある『学び舎の園」みたいな場所は危ないと思う」

 

 浜面の言葉に、御坂と食蜂の顔色が変わった。

             




 
 レベル5、混ぜるな危険
  

 
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