とある姉達の心理感応(メンタルリンク) 作:絶対能力進化ver1.3
※独自設定・独自解釈あり。
がくん!!と。垣根提督は解析が唐突に停止したのを感じた。
「あ?」
垣根は肩眉を動かし、怪訝な顔になる。
「なん、だ?」
学園都市第2位の怪物は、思わずといった調子で、小さく呟いた。
「何を、した? テメェ、俺の脳に一体なにを、何……を……ッ!?」
「う~ん、なんていうんだろう?」
対する木原ミサキは、ちょこんと首を傾げた。人差し指を頬に当て、少し考えてから言葉を選ぶ。
「簡単に言うと『能力』の乗っ取り、みたいな」
「何を言ってる……なに言ってんだお前!?」
「わたしだけど、わたしじゃないよ。この能力は」
いま見せるから、と木原ミサキはジャケットからスマートフォンを取り出した。慣れた手つきでサッと画像フォルダを開き、一枚の写真を見せる。
映っていたのは、ピンク色のジャージを着込んだ少女の寝顔。
「この子、とっても面白い能力を持ってるのよ。『
本来であればピンク色ジャージの少女――滝壺理后の能力は、記録したAIM拡散力場の持ち主を検索・補足・追跡というのものだった。
だが、その能力の真価はAIM拡散力場を伝った『
実際、滝壺は麦野の『
麦野沈利によれば、全力で行えば相手の能力を乗っ取ることも出来るらしい。
だから、と木原ミサキは告げる。
「AIM拡散力場にアクセスできるなら、そこから『逆流』して能力者の『自分だけの現実』……つまり能力者の能力を
――まさか。
「俺の『未元物質』をも……奪い取れるだと……?」
――そんなことが。
「出来ないと思う?」
「……滝壺理后は所詮、レベル4に過ぎないはずだ」
木原ミサキの言っていることは、あくまで理論上の仮説に過ぎない。滝壺理后の持つ能力の危険性については、垣根帝督も考慮はしていた。
たしかに『AIM追跡』という能力それ自体は、全力で行使すれば『未元物質』にも対抗できるかも知れない。
だが、それでもレベル4に過ぎない滝壺とレベル5である垣根の間には、絶対的な壁があるはずなのだ。
「ええ。
その疑問に答えるように、木原ミサキはポケットから小さなケースを取り出した。透明なケースの中には、白い粉末が入っている。
「てめぇ、まさか『体晶』を……」
「ええ、そうよ。幻生先生の置き土産だもの。上手に使わなきゃ」
『体晶』――それは能力者へ意図的に拒絶反応を起こさせ、能力を暴走状態にする為の薬品だ。
木原幻生はかつて『暴走能力の法則解析用誘爆実験』でこれを使用した。製薬会社の残した研究論文は今でも残されており、この薬を使用すれば瞬間的に圧倒的な火力を手に入れることが可能だ。
これだけ聞くと便利な代物だが、長らく「使用者への負担が大きすぎる」という致命的な欠陥ゆえに能力進化実験のメインストリームからは捨てられていた。
中には滝壺理后のように「暴走状態の方が良い結果を出せる」という稀有な能力者もいたたが、それでも負担は大きく、『体晶』は彼女の身体を徐々に蝕んでいった。
ましてや、木原ミサキに『体晶』への適性などない。垣根を圧倒するほどの火力を『体晶』で一時的に手に入れても、まず彼女の身体が持たずないはず。
「そうね、実際
木原ミサキは愛おしそうに、うっとりと目を閉じた。
「でも、
垣根帝督は、その姿を見て理解した。
「……そうか。そういう事か……!」
木原ミサキの多才能力は、どこから引きずり出してきたものなのか。
どうやって疑似的な多重能力を行使できるシステムを作ったのか。
なぜ殺したはずの彼女が、何度でも生き返るのか。
そして、いかにして学園都市第2位を圧倒するほどの瞬間火力を手に入れたのか。
「スゲェな……すげぇ悪だ。惚れちまいそうだぜ、クソビッチ。まさか同族に『体晶』の負荷を丸ごと肩代わりさせて、使い捨てのパーツにするとはなぁ!!」
『体晶』を無理に使用を続けると使用者は『崩壊』してしまう。滝壺理后は1人しかいないから、『崩壊』しないよう慎重に調整しなければならない。
だが、木原ミサキは違う。7000人以上のクローンがいる。であれば、1人や10人、あるいは100人や1000人ぐらい『崩壊』したところで、まだスペアは残ってる。
「だって私、君のこと気になってるんだもん。手に入れたいなら、多少の自己犠牲は付き物でしょう?」
「あいにく、テメェみたいなイラつく女はタイプじゃねぇんだ。殴るしかなくなる」
吐き捨てたセリフに呼応するように、垣根帝督は最後の力を振り絞る。身体も脳も浸食されつつあるが、その程度で掴みとれるほど学園都市第2位の底は浅くない。
バォ!!と6枚の翼に触れた空気が悲鳴を上げた。
「俺の裏をかいて能力を乗っ取った小賢しさは認めてやる。こっちに慢心があったこともな。ただし、能力をパクっただけじゃ、使いこなせるとは限られねぇんだよ!」
垣根の叫びと共に、6枚の翼が爆発的に展開された。
数十メートルにも達するそれらの翼は神秘的な光をたたえ、しかし同時に機械のような無機質さを秘めていた。
まるで、神や天使の手に馴染む莫大な兵器のように。
「あれー。まだ動けるんだ。お姉さん、ちょっとビックリ」
それを見ても、木原ミサキは全く焦る様子もなく返した。
決してバカにしているわけではない。ただ、AIM拡散力場から浸食されつつある垣根が執念で『未元物質』を行使したことに、純粋に感心していた。
「わたし、惚れちゃったかも。ますます欲しくなっちゃった」
「お断りだ」
次の瞬間、引き絞られた6枚の翼が弓のようにしなり、木原ミサキに襲い掛かった。正面から彼女に激突し、その衝撃波が周囲一帯に炸裂する。
垣根の一撃を受けたミサキが後方へと吹き飛ばされ、道に面したカフェの中へと突っ込む。今度こそ瞬間移動で躱す間もなく、未元物質は木原ミサキをとらえた。
「……ッ」
しかし、垣根の顔には不快しかない。手応えを意図的に外された感触が掌に残っている。
「乱暴なのも嫌いじゃないけど」
爆弾テロにでもあったような店内から、そんな声が聞こえてきた。
「手荒く扱った後には優しくしてくれるのが、悪くて良い男の条件よ。ギャップにやられる、みたいな? 」
無傷……店から出てきたミサキの全身を、白い繭のようなものが包んでいた。
やがてゆっくりと羽化するように広げられたそれは、白い翼だった。垣根と同じ、無機質で人工的な光沢のある翼が、彼女の背でしなやかに羽ばたく。
唯一の違いは、翼の数だった。垣根の6枚に対して、ミサキの翼は12枚。同時展開できる能力の差は、そのまま現在の2人が持つ演算能力の差―――すなわち戦闘力の差に等しい。
垣根は眉をひそめた。
「俺の底まで掴み取るつもりか」
「だって全部知りたいじゃない。気になる相手のこと」
「ほざけ。形だけ似せても、紛い物は本物にはなれねぇんだよ!!」
再びドバン!!という爆音が炸裂した。
お互いの交差は一瞬………それで、勝敗は決した。
***
「よかった、まだ死んでなくて」
木原ミサキは地面に目をやり、スクランブル交差点の中心で仰向けに倒れる垣根帝督を見つめた。
その周囲には、得体のしれない魔法陣のように赤い血が広がっている。自らの生み出した白い翼を同じ能力で緩衝され、奪われた自らの能力のうち防ぎきれなかった未元物質で身体を刺し貫かれて。
「頑張ったね。あと、痛くしちゃってゴメンなさい」
ちょこん、としゃがみこんで木原ミサキはポケットからハンカチを取り出す。まだ息のある未元物質の口元にへばりついた血を甲斐甲斐しく拭きながら、労わるように端正な顔についた傷を消毒する。
「2875人の『
素敵、と木原ミサキはひたすらに褒めちぎる。
「馬、鹿……な……」
息も絶え絶えに、垣根提督が呻いた。
「馬鹿に……するな」
血を吐き、それでも呟く。
垣根提督を学園都市第2位の怪物たらしめた『自分だけの現実』が奪われつつある状況で、なおもあらん限りの力で叫ぶ。
「馬鹿にするなぁあああああっ!!」
端正な顔を歪ませ、絶叫する。
「これは、この力は俺のものだ! 俺だけの能力だ! 未元物質は俺の脳から、俺の『自分だけの現実』から生み出されて、俺だけが使える!俺だけが使える能力が、こんな―――!?」
「心配しないで」
木原ミサキが、囁いた。苦しみもがく垣根を労わるように、慈愛に満ちた声を紡ぐ。
「あなたの『未元物質』は素晴らしい能力よ。それこそ、スペアプランなのが勿体ないぐらい。使い方によっては、第1位にだって負けないわ」
「あ、あ……」
「たしか理事長との直接交渉権を得るために、これから第1位『
でも心配しないで、とミサキは微笑んだ。
「わたしが代わって倒してあげる。これでも、わたし尽くす方なのよ? アナタの望みはちゃんと叶えてあげるから、安心して」
「…っ……」
既に垣根の意識は薄れ、もはや声を出すことすらままならない。AIM拡散力場を介してその脳波はミサキネットワークへと接続され、システムを構成する一部へと組み替えられていく。
「貴方の能力も、記憶も、意思も。全部わたしが受け継ぐから」
木原ミサキの言葉と共に、一線が超えられる。
それまで必死に抵抗していた垣根提督の一切合切が、ミサキネットワークに吸収されていく。
連鎖反応を起こすように、垣根提督を構成していた全てが音を立てて崩れ落ち、新しいシステムへと生まれ変わっていった。
(き、消え……きえるっ、消える? 俺が、消えるだと……? 学園都市第2位の、この俺が、こんなバカげた理由で……?)
―――いいえ。
必死の抵抗を試みた垣根提督の意識の残渣に、答える声があった。
――あなたは消えないわ。
もはや言葉は不要だった。既に垣根帝督の意識はミサキネットワークに接続され、その一部となりつつある。
ネットワークに不可欠なパーツとして、垣根帝督の能力と思考は木原ミサキと同化する途上にあった。
徐々に垣根提督の目から光が消えていき、比例するように木原ミサキの瞳には新しい光が宿る。
「ようこそ、新しい
第2位の怪物を取り込んだ新たな怪物は、そう締めくくった。
ボン○ルド系ヒロイン「一部のクローンは人間としての運用はしてないの」
『
レベルアッパーを取り込んだ脳波ネットワークに接続させたクローンに『体晶』を使わせて使い捨てれば、ネットワーク経由で一時的に能力の出力ブーストできるのでは?という発想です。名前の元ネタはまんま黎明卿のカートリッジ。