とある姉達の心理感応(メンタルリンク)   作:絶対能力進化ver1.3

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第19話 『未元物質』

           

 次の瞬間、食蜂操祈の脇を掠めてカッ!!という閃光が炸裂する。

 

「吹っ飛べ!!」

 

 高圧電流の奔流が姉達(エルダーズ)の一人を直撃し、感電した『姉達』は小さな悲鳴を上げる間もなく地面に倒れた。その隣にいた白衣の『姉達』も、気づいた時にはどこからか現れた寸鉄によって地面に縫い付けられている。

 

 

 そして襲撃者が姿を現す。

 

 音も無く食蜂の隣に着地したのは、常盤台中学の制服を身に着けた2人の少女。風紀委員の腕章をつけたツインテールの少女に、ボブカットの茶髪にルーズソックスという格好の少女だ。

 

 白井黒子に、御坂美琴。常盤台中学の誇るレベル5『超電磁砲(レールガン)』と、レベル4の『瞬間移動(テレポート)』を自在に操る歴戦の風紀委員。 

 

「待たせたわね、食蜂」

「御坂さん、来るのが遅いわよぉ」

 

「デート前の恋人同士みたいなやり取りは後にしてくださいまし!」

 

「「誰が恋人だ!」よ!」

 

 レベル5の二人の抗議を受け流しつつ、白井は両脚を大きく広げた。反動で短いスカートが舞う。

 

 露わになった太ももには革のベルトが撒いてあり、そこには十数本の寸鉄が差し込んである。先ほどエルダーズの一人を無力化したのも、空間移動を使ってこの寸鉄を標的に送り込んだものだ。

 

 

「お姉さま!」

「分かってる!」

 

 

 白井の声に答えて御坂美琴が叫ぶと、全方位から砂鉄が持ち上がった。それは高速振動する竜巻と化し、360度全方位から木原ミサキに襲い掛かる。

 

 死角となるべきポイントは、既に白井が抑えてあった。もし木原ミサキが移動しようものなら、テレポート直後のラグを利用して寸鉄で動きを封じるまで。

 

 木原ミサキが空間移動で戦線離脱するという可能性もあるが、その時は帆風とラストオーダーの保護を優先すればいい。

 ラストオーダーに関しては、とりあえず食蜂が保有する隠れ家へと避難させる。風紀委員である白井黒子にとって民間人の保護は、何より優先すべき事項だ。

 

 

 だが、木原ミサキの対応はそのいずれでもなかった。

 

 ゴッ!!という爆発音が空から炸裂する。凄まじい勢いで空気が拡散され、生み出されたソニックブームは巨大な磁力で操られているはずの竜巻を、力押しで薙ぎ払う。

 

「やばっ!?」

 

 御坂美琴は崩れたビルの鉄筋を操り、目の前に分厚いコンクリートの壁を作ることで衝撃波をやり過ごす。白井や食蜂たちも無事なことを確認してホッと胸を撫でおろしたのも束の間、すぐさま次の攻撃が来た。

 

「――『水流使い』を行使」

「―――『氷結操作』開始」

 

 2人の『姉達』が言葉を紡ぐと、破裂した水道管から大量の水がドォ!!と宙に集められ、瞬く間に巨大な氷の隕石と化した。

 それは爆撃に使われるクラスター爆弾の如く途中で自ら破砕し、氷の短剣が土砂降りの如く上空から降り注ぐ。

 

 

 だが、凶器の雨が御坂たちを傷つけることはなかった。突如として別方向から、ゴッ!!と複数の閃光が一面にシャワーのように降り注いだからだ。

 

 それも、ただのビームやレーザーといった程度のチャチなものではない。その一発一発が、砲弾にも匹敵する火力。道路に止めてあった車や歩道に面した自販機はもちろん、ビルや屋台ごと片っ端から薙ぎ払う、圧倒的な光の洪水だった。

 

 

「見つけた、みつけた。見ぃーつけたっと」

 

 

 並の軍隊であれば1個師団は優に超える火力を投入したその人物は、鼻歌を歌うような気軽さで現れた。

 

 人影は全部で4つ。

 

 ニットのワンピースを着た小柄な少女と、ベレー帽を着た金髪碧眼の少女に、髪を金髪に染めてサブマシンガンを構えたチンピラっぽい青年。その3人を従え、秋物のコートを着込んだ女が歩いてくる。

 

 

 麦野沈利―――学園都市第4位『原子崩し(メルトダウナー)』の異名を持つレベル5の怪物。

 

 

「この私をコケにしてくれたお礼がまだ済んでなかったわね。感謝しな、テメェはこの私が直々に上下左右に引き裂いてブチ殺してやるからよぉ!」

 

 麦野の咆哮と共に、閃光が炸裂する。手心を加えるだの、試し打ちで相手の出方を見るだのといった、小手先のテクニックには頼らない。最初から最大火力で確実に敵を仕留めるべく放たれる死の砲撃。

 

 

「―――ッ!?」

 

 

 だが、その圧倒的な火力が木原ミサキを消失させることはなかった。その身体はバリアのように無機質な白い光に包まれ、第4位の『原子崩し(メルトダウナー)』をもってしても傷一つすらついていない。

 

 

「うんうん、やっぱり『未元物質(ダークマター)』って便利ね。垣根君には感謝しないと」

 

 

 未元物質……本来であれば、麦野たちが倒すべき相手であった『スクール』のリーダー・学園都市第2位の異名。その単語に、麦野が顔をしかめて反応した。

 

「チッ……!?」

 

 何が起こったのか、麦野は瞬時に理解する。

 

「ったく、『スクール』のクソッたれ共め、余計な仕事ばかり増やしやがって」

 

 木原ミサキ、そして『姉達』は全員が他人の精神を操る能力者だ。そして精神を乗っ取った能力者の脳波を自らと同調させ、ネットワークに繋ぐことで取り込んだ能力者の能力を行使できる。

 

 詳しいことは分からないが、確かなのは第2位・垣根帝督が持つ「未元物質」の能力は今、木原ミサキと『姉達』の手の中にあるということ。

 

 

 ――であれば。

 

 

 そう、無傷なのは彼女だけではない。

 

「今のヤバくね? 第4位マジでやべぇ」

「死ぬかと思った……」

「この年で二階級特進とか嫌であります」

 

 木原ミサキの周りにいた、『姉達』も同様に白い翼を展開することで身を守っていた。

 

「みんな、大丈夫? 怪我とかしてない?」

 

 引率の先生のように手を上げ、木原ミサキが安否確認を行う。

 

「この地区には全員で118人いるはずだけど、みんな揃ってる?」

「―――ミサキ2749号より報告しまーす。全員無事デース」

「良かったぁ。みんなが無事で」

 

 ホッとしたように胸を撫でおろす木原ミサキを見て、思わずフレンダが突っ込んだ。

 

「いやいやいや、どう考えてもおかしいでしょ!? あれのどこが精神系能力者よ!?」

「ちょっと前までは、ね。でも、今はそれ以上。これも、あなた達の仲間のおかげよ」

 

 

 お仲間、というのが滝壺理后を指しているのは明らかだった。

 

 

「しかし、これはいよいよマズくなってきたな……」

 

 麦野沈利は苦々しい顔で呟く。

 

 『アイテム』のリーダーとして、メンバーの能力についてはそれなりに調べている。ゆえに、拉致された滝壺理后の能力についても、その特異性と異様さについて誰よりも鋭敏に掴み取っていた。

 

 そして最悪の予想ほど当たるもので。

 

 

「あの腐れビッチの狙いは、『能力追跡(AIMストーカー)』なんかじゃなかった……」

 

 

 欲していたのは、‟AIM拡散力場に干渉できる”という、『能力追跡』の原理そのもの。

 そして、それを応用した‟能力のハッキング”こそが、木原ミサキの求めていたものだったのだ。

 

 

 ――滝壺理后の能力を使って、垣根帝督の能力を乗っ取る。そして脳波を同一に調律すれば、暗部のファイルで見た『外脳代装(エクステリア)』の要領で、ネットワークに組み込んだ『姉達』に、任意に渡すことが可能になる。

 

 実際、木原幻生は似たようなことをやってのけ、多才能力やミサカネットワークへの干渉を行っていた。

 

 

 もちろんキャパシティの問題はあるだろう。木原ミサキ一人に『未元物質』の能力を集約した場合に比べて、例えば10人のエルダーズに『未元物質』を分散させた場合では、後者の出力は1人当たり1/10まで低下する。

 

 

 だが、たとえば1発の大型核弾頭が1つの地点しか攻撃出来ないのに対し、威力が1/100の小型核弾頭が100発にあれば、100地点を100のタイミングで攻撃できるため戦術の幅は広がっていく。要は使い方次第なのだ。

 

 

 何より、『未元物質』は限定的であっても大きな脅威であることに変わりはない。

 

 

 

 不利だ、と咄嗟に麦野は判断した。

 

 

 学園都市にレベル5は7人いる。だが、第1位と第2位、それ以降には絶対的な戦力の格差がある……それが分からないほど、麦野は無能ではなかった。

 

「フレンダ、絹旗――撤退だ!」

 

「え?」

「麦野!?」

 

「いいから、車まで全速力だ! アイツは――」

 

 

 せめて第3位と第5位が囮になっている間に、自分達だけでも。そう思って駆け出した麦野の前に、ひらりと無機質な白い羽が舞い散る。

 

 

「逃げちゃだーめ♪」

 

 

 ほんわかした柔らかい声とは裏腹に、麦野が『原子崩し』を展開するより早く。木原ミサキの『未元物質』がその肩を貫く。

 

 

「ぐ、っ……!」

 

 

 殺られる―――そう、麦野が覚悟した瞬間だった。

 

 

 ドゴォッ!という爆音と共に、目の前にいた木原ミサキが真横に吹き飛ばされ、ビルのガラスをぶち破って煙の中へと消えていく。

 

 

「……ったく、しけた遊びではしゃいでんじゃねぇよ。三下が」

 

 

 聞こえてきたのは、声だった。学園都市最強の、悪魔のような第1位の声。

 

 

「もっと面白いことして盛り上がろぉぜ。悪党の振る舞いってのをおしえてやるからよぉ!」

 

 

 

 ***

 

 

 

「ぅ~、痛ぅったぁ~」

 

 木原ミサキは視線を『一方通行(アクセラレータ)』へ向けると、静かに言った。

 

「う~ん、まさにヒロインのピンチで颯爽とヒーロー登場って感じね。軽く惚れちゃうかも」

「はっ、こんな回りくどい手を使ってハンデを求めたチキン野郎が何を余裕ぶってんだ。あのガキを狙うなんつー手を使った時点で、もう戦力差は決まっちまってんだよ」

 

 木原ミサキがラストオーダーを狙った理由など、一方通行にとってはどうでもいい事だった。何に使おうとしているのかも、興味はない。

 

 ただ、彼女を狙ったというだけで、目の前にいる女を殺しても構わないことだけは確信が持てた。

 

 

「んっ……凄い上から目線でドS発言、やっぱり強い男の子が言うと違うわね。お姉さん、色んなところが濡れちゃいそう」

「チッ、変態マゾ女が。そんなに刺激が欲しいんなら、お望み通りぶっ壊れるまで遊んでやろうじゃねぇかよォッ!」

 

 学園都市第1位と第2位の力。それを手にした一方通行も木原ミサキも、もはやコソコソした隠蔽などに気は配らない。そういった後始末は、どこかの誰かに任せればいい。

 

 次の瞬間、二人は激突していた。

 




   
 当然ですけど、ラストオーダーに手を出したらアクセラレータがすっ飛んで来るの法則。
 
 ちなみに作中では木原ミサキが未元物質の能力をミサキネットワーク経由で他のクローンにも与えているため、他のクローンも第3次世界大戦で浜面の粛清に学園都市が投入した『Equ.DarkMatter』部隊の兵士ぐらいの力は持っています。
 
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