とある姉達の心理感応(メンタルリンク)   作:絶対能力進化ver1.3

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第02話 『中止されたはずの計画』

             

 学園都市―――。

 

 それは東京都の1/3ほどの面積を誇り、人口の8割が学生という「学生の街」だ。

 

 東京の西に位置する学園都市の周囲は巨大な壁で覆われており、外の世界とは完全に独立した空間となっている。その中では外より数十年は技術が進んでおり、世間一般で“超能力者”と呼ばれる存在がごく当たり前に存在している。

 

 

 そんな街のとある一角で、御坂美琴は。

 

 

「あ、すいません」

 

 

 考え事をしながら歩いていたからか、対面を歩いていた女子学生とぶつかってしまった。

 

 

「いえいえ。気にしないで」

 

 

 霧ヶ丘中学の制服を着た相手は、上品に微笑んだ――共に会釈をして通り過ぎようとした美琴は、しばし遅れてある違和感を覚えた。

 

(あれ、どこかで会った……ような)

 

 失礼だと思いながらも、じっと相手を頭の上から下まで眺めていく。

 

 やや着崩した制服、長身痩躯のモデル体型、胸は平均的、ふんわりと軽やかにカールしたミルクティー色のエアリーボブ、()()()()()()()()()()……。

 

 

「―――っ!?」

 

 思わず、目を見開いた。

 

 

(いや中学は元より、髪色も髪型もスタイルも違うから気づかなかったけど、この子の目にある星模様ってまさか――)

 

 

 そんな特徴的な目をしている人間を、御坂美琴は1人しか知らない。

 

 

 学園都市230万人の頂点に君臨する7人の超能力者、第3位『超電磁砲(レールガン)』に続く第5位『心理掌握(メンタルアウト)』。

 

 ――その、彼女の名は。

 

 

(食蜂……操祈!?)

 

 

 よくよく見れば、顔つきなんかも似てる気がしてきた。他人の空似という線も捨てきれはしないが、姉妹だとか言われれば普通に信じてしまうだろう。

 

 

 あまりに長く見つめていたせいで、流石に向こうも不審に思ったのだろう。

 

 不思議そうな顔で、少しだけ首をかしげる。そして続く質問は、美琴を動揺させるには十分過ぎるほどインパクトのあるものだった

 

 

「質問します。()()()に何か?」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、美琴は全身に電流が走ったかのような衝撃を受けた。もしかすると無意識に放電していたのかもしれない。

 

 だが、今そんな事はどうだっていい。

 

 問題は、今がした彼女が発した言葉だ。目の前の少女は、御坂美琴がよく知っている苦手な同級生によく似ているその女は、今なんと言った?

 

 

「みさ……き……?」

 

 

「はい。私の名前はミサキです」

 

 

 目の前の少女は淡々と名乗った。常盤台中学の同級生で、レベル5の第5位である、食蜂と同じ名前――ミサキ――みさき――そう、名乗った。

 

 もう、これは偶然でも他人の空似でも無いだろう。

 

「あの、アナタのお名前を伺っても?」

「え? あ、あぁ……そういえば、自己紹介がまだだったわね。私は御坂美琴、よろしく」

「認証しました。常盤台が誇るレベル5の第3位『超電磁砲(レールガン)』こと御坂美琴、ですね」

「あー、うん……まぁ、その通りなんだけど」

 

 自慢ではないが、メディアへの露出は割と多い方だ。だから知られていても不思議はない。

 

 

「ねぇ……ちょっと変なこと聞くけど、アンタ、食蜂操祈って知ってる?」

 

 わざわざ質問しておいてなんだが、知らないということはないだろう。

 

 レベル5の第5位『心理掌握(メンタルアウト)』ともなれば、自分ほどではないにしろ学園都市では超有名人だ。つい先週の大覇星祭でも食われ気味だったとはいえ、選手宣誓を担当して町中のテレビに顔が映っている。

 

 とはいえ、いきなり「親戚かどうか」なんて初対面の相手に聞くのも憚られる。

 

 そこで恐らく返ってくるであろう、一般論としての肯定の返事を聞いたうえで、「なんか凄い似てるんだけど~」みたいな感じで深堀りしようと考えていたところに、思わぬ答えが返ってきた。

 

 

「肯定します。()()()()()のことでしたら、それはもうバッチリと」

 

 

 **

 

 

 ―――操祈お姉様。

 

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、御坂美琴は完全に硬直していた。まるでハンマーで頭をガツンと殴られたような衝撃が走る。

 

 なぜなら、それは“あってはならない言葉”だったからだ。

 

 

 『絶対能力進化(レベル6シフト)』計画―――。

 

 

 かつて行われていた、最強の超能力者(レベル5)である一方通行(アクセラレータ)を、絶対能力者(レベル6)へ進化させる実験の名だ。

 

 樹形図の設計者(ツリーダイヤグラム)の算出したプランに従い、「一方通行」に2万通りの戦場を用意し、2万体の『妹達(シスターズ)』と呼ばれる御坂美琴のクローンを殺害することで『レベル6』への進化(シフト)を達成する」という、とても正気の沙汰とは思えないプラン。

 

 

(嘘……でしょ)

 

 

 ぞくり、と背筋に寒気が走る。

 

(今度は私のクローンじゃなくて、食蜂のクローンを使うつもり!?)

 

 『絶対能力進化』計画には、御坂美琴も少なからず関わっている。2万体のクローンに使われたのは、美琴自身が幼い時にそうと知らず提供してしまったDNAが基になっていた。

 

 御坂美琴のDNAは当初、 『量産型能力者(レディオノイズ)』と呼ばれる、レベル5の能力者である超電磁砲の量産を目指した実験に使われていた。

 

 しかし量産体制が整ったところで『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』の予測演算により、生み出されたクローンである『妹達』の能力は超電磁砲のスペックの1%にも満たないことが判明する。

 結局、研究所は閉鎖し計画は凍結されたように見えたが、このクローン技術は後に『絶対能力進化』計画に流用されることとなった。

 

 

 ――しかし、最終的に『絶対能力進化計画』は中止されたはずだ。

 

 

 「最強の超能力者が最弱の無能力者に倒される」という、誰も想定していなかった事態の発生によって。

 

 

 ――だが、それが表向きの話で、実は裏で形を変えて密かに進められていたのだとしたら。

 

 

(ありえない話じゃないわね……)

 

 

 御坂美琴は暗部の人間ではないが、様々な騒動に巻き込まれていく中でそれなりに学園都市の闇も見てきた。

 

 研究者や学園都市の上層部の中には、人を人とも思わぬ非人道的な実験を平然と行うような輩がいることも知っている。

 

 

「質問します。もしもしミサカ、様?」

 

 ひょい、と食蜂妹(仮)が身をかがめて覗き込んでくる。

 

「追加の質問をします。具合でも悪いのですか?」

「え? いやっ、別にそういう訳じゃなくて」

 

 不審に思われないよう慌てて否定する。

 

「?」

 

 困惑して首をかしげる食蜂妹に、美琴は思い切って聞いてみることにした。

 

「アンタさっき食蜂のこと“よく知ってる”って言ったわよね? 食蜂とは、どういう関係なの?」

「回答します。ミサキたちは全て、ミサキお姉さまのDNAデータを基に作られています」

 

「………っ!?」

 

 期待した通りの、最悪の回答だった。

 

(やっぱり、思った通りだった……!)

 

 さらに続けて質問する。

 

「答えて。アンタたちを作った連中の目的は何なの?」

「黙秘します。守秘義務により、その質問にはお答えできません」

 

 それ以上は何を聞いても、食蜂妹(仮)は頑として口を割ろうとしなかった。エラーを起こしたパソコンのように、繰り返し定型的なメッセージを返すだけ。

 

(まるで、あの時と同じ……!)

 

 『妹達』の時にも、同じようなやり取りがあった

 

 『妹達』は研究の詳細について、禁足事項であることを理由に回答を拒絶した。その結果、自らが命を落とすことになると知っていながら。

 いや、死ぬことがどういうことか、それが悲しいことだと思う感情すら与えてもらえなかったのだ。

 

 

 しばらく延々とやり取りが続いたが、先に音を上げたのは御坂美琴の方だった。根負けしたように「はぁ~」と大きな溜息を吐く。

 

「まぁ、いいわ。答えられないってんだったら、このままアンタに付いていくから。どうせ研究所に帰るなり、実験に参加するなりするんだろし、この目で確かめるまでよ」

「容認します。ですが、御坂様の期待と違ってミサキは研究所に所属しておりませんし、実験にも参加しておりません。これから帰宅するだけです」

 

「え、そうなの?」

 

 今度は美琴が驚く番だった。『妹達』の件から、てっきり危険な研究が行われているとばかり考えていたが、早とちりだったのかもしれない……。

 

 いや、そうであって欲しい……そう、御坂美琴は思い始めていた。

  




 オリジナルの『妹達』と違って、食蜂クローンは見た目や年齢、学校や性格に多少のバラツキを敢えて生じさせています。

 あと霧が丘女学院の制服かわいい。
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