とある姉達の心理感応(メンタルリンク) 作:絶対能力進化ver1.3
触れただけで身体が溶解・気化・砂状化する物質、人体だけに刺さる翼、この世に存在しない発火現象に、理論的にはあり得ない有機物の結晶化……そうした‟この世に存在しない物質”が作れるのは、たしかに脅威だろう。
しかし、どんなに恐ろしくて驚異的な物質でも、1つや2つでは学園都市最強たる『一方通行』の前では大した脅威にはならない。
だが、その数が倍々ゲームで増えていくとしたら。
「未元物質は‟今この世にある物質をどう扱うか”じゃなくて、‟全く新しい物質をゼロから作れる”からこそ価値があるのよ」
戦争に例えるなら、他の能力者が開戦時の常備軍で戦うしかないのに対して、未元物質はいくらでも動員をかけて兵士を徴兵できる。
無限に手駒が増やせるのならば、戦闘技術だの戦法だのといった小手先のテクニックは用を為さない。ただひたすらに人海戦術、物量作戦で押し潰す――その単純な繰り返しが、王道にして最強不敗の必勝法となる。
「ほら」
木原ミサキは、空を指さした。
――ビルの屋上、そして空中に。
いくつもの人影が浮かんでいるのが見えた。ラグナロクに天から舞い降りる神の軍勢の如く、白い羽を羽ばたかせた何体もの「木原ミサキ」が舞い降りてくる。
「美少女に囲まれるって男の子の夢でしょう? 金髪巨乳ギャルから黒髪大和撫子に清純派幼馴染み系まで、好みの子から壊しちゃっていいわよぉ」
「……真っ向から勝てねぇからって、数で押すやり方に変えたわけか。ったく、その発想が三下なんだよ。能力者は量より質だ。その程度すら分かんねぇのかよ」
口では強がってはみたものの、言うほど状況が生易しいものではないことを一方通行は弁えていた。
せいぜいレベル3程度の能力しか持たないクローンとはいえ、『
「どうして生身の人間ってこんなに弱くて脆い生き物なんだろう、って思ったことはない? 私はあったんだけど、ちょっと実験で燃やしたり切り刻んだぐらいで簡単に死んじゃって、不便だなーって」
それはレベル5とて変わらない。たった1人で学園都市を半壊させるほどの脅威である一方通行や垣根提督でさえ、能力が使えなくなればそこら辺の一般人と同じだ。銃で撃てば死ぬし、刀で斬っても死ぬ。
「だから私、考えてみたの。能力を人間が使うんじゃなくて、人間が能力そのものになっちゃえば、この脆い肉体の呪縛から解き放たれるんじゃないかって」
その答えが、未元物質だった。
「そうそう。その力を応用すれば、こーんな事も出来ちゃうんだゾ」
木原ミサキが何を言わんとしているのか、一方通行は気づき始めていた。未元物質と融合した『姉達』の集合体であるミサキネットワークが持つ、あってはならない異様さに。
――それは真実。
「未元物質で欠損した人体を複製できるなら、脳だって例外じゃないわよねぇ。なら、『垣根提督=未元物質=姉達』の複製だって不可能じゃない。何しろ、脳も心臓も内臓も、しょせんは臓器の一部に過ぎない細胞の塊なんだから」
声に応じるように、さらに無数の翼を持つ影がこちらに飛んでくるのが見えた。
「未元物質の本質は‟生成”にあるの。それなら、脳だって例外じゃないわ。より正確には‟脳と全く同じ動きをする、この世には存在しない物質から生成される疑似脳”って呼んだ方がいいかもしれないけど」
思いつく限り、最悪の可能性だった。
「これでも博士の卵として用語に正確を期すなら、厳密には『自分だけの現実』と定義するのは誤解を招く表現ね。そのうち出来るようにはなると思うけど、今はまだ能力の‟噴出点”を製造することで分配された平等な力を振ってるだけ。まぁ、原理は違っても実際に生じる現象は『未元物質』の量産であることに変わりはないんだけど」
それは未元物質を使う人間ではなく、もはや人の形をした『未元物質』だ。
否、もはや『未元物質』ですら、ミサキネットワークを通じて改良版『
「てめぇ……」
「垣根君の能力って便利よねぇ。手足がもげようが内臓が潰れようが、欠損部に未元物質を生成すれば元の機能を補える。いいえ、それ以上のことが出来る」
それは強い不死性の獲得ともいえるし、命や魂というものが『未元物質』の中に希釈されていっているとも言える。
その『未元物質』すらスマートフォンで例えればアプリケーションの1つに過ぎず、多種多様なアプリの土台となる『
だが、そもそもクローンとして生まれ、ミサキネットワークによって互いの意識を共有している『
「さぁ、次の実験を始めましょう」
興奮を抑えられないといった表情で、どこからか取り出した眼鏡をかけた木原ミサキが、記録用のデバイスを起動する。いつの間にか身体に羽織っていた白衣も、全て未元物質で精製したものだ。
彼女の声に呼応して、複数の『姉達』の背中から生える翼が巨大化していき、ゆっくりと包囲網を狭めようとする。一方通行が少しでも危害を加えようとすれば、即座に叩き潰せる態勢へと移行していく。
「第2位の持つ『未元物質』が秘めた無限の創造性、限界まで試してみたいわぁ。この数で押される程度ならそれまでだし、押し返されたとしても、その分だけ多様な可能性が獲得できる」
もちろん『未元物質』だけではない。『
ゆえに、ほとんど負担なしに『
加えて元の精神系能力をレベルアッパーで強化して「
一方通行の強さはそのままに、木原ミサキは未元にレベルアップを続ける。
全てを破壊する本物の第1位と、全てを生み出す紛い物の第2位。矛と盾……これはそういう種類の戦いなのだ。
だが、木原ミサキと違って、一方通行には時間制限がある。無限に続く戦いで、しかも手を抜くことは許されない。一瞬の気の緩みが、命を奪う。
否、貴重なサンプルを木原ミサキは殺したりしないだろう。その代わり、死よりも惨い実験サンプルとして、全てを奪われ延々と凌辱しつくされる。
「は~い、よってらっしゃい見てらっしゃい。無数の美少女がより取り見取り、誰を殺しても料金は取りません。お互いに、夢のような時間を過ごしましょう」
悪夢の間違いではないか、と一方通行が思った直後だった。
正真正銘、唯一本物の第1位に向かって、完全なる偽物と紛い物の寄せ集めたる第2位の大群が全方位から殺到していく――。
『学園群体(プラットフォーム)』
・木原ミサキ、というより食蜂クローンの『姉達(エルダーズ)』の最終形態。まぁ早い話がボン○ルドとアンブ○ハンズの関係性です。
それがミサカネットワーク的なものを構成し、さらに脳波調律といった洗脳系能力で能力者を無理やりレベルアッパーに取り込んで多才能力を実現し、取り込んだ能力のうち滝壺の能力で垣根の未元物質も取り込み、未元物質を使ってクローンのクローン(未元物質)をネズミ算式に複製し、それによって更にネットワークの演算能力が倍々ゲームで強化されていくという、割と悪夢。
能力を細かく見ると、以下の通りです。
①心理感応(メンタルリンク)
・欠陥電気(レディオノイズ)の食蜂版。食蜂の持つ『心理掌握』の劣化版。ただし、「十徳ナイフ」に例えられる食蜂の能力が持つ汎用性を犠牲にして、個々の個体を『洗脳』や『念話』に特化させることで、個々のクローンは特異な能力だけに限ればレベル3程度の出力。
なので例えば、『洗脳』が得意な個体は『洗脳』だけはレベル3並、『念話』や『記憶の書き換え』はレベル2程度。
②ミサキネットワーク
・元々の能力は妹達(シスターズ)の食蜂版で、ミサカネットワークと同じようなミサキネットワーク(こちらは電気系能力のネットワークではなく、精神系能力による脳波ネットワーク)を形成。
③レベルアッパーと多才能力
・精神操作のひとつである『脳波調律』を用いて、他の能力者を強制的にミサキネットワークに取り込むことにより、木山春生や木原幻生と同じ、複数の能力を運用できる感じです。
④能力ハッキング
・レベルアッパーの中に滝壺を取り込んだことで、『AIM追跡』を応用した能力の直接的な乗っ取りが可能。
⑤『強装体包(カートリッジ)』
・ネットワークに取り込んだ個体に『体晶』を使わせることで能力をブーストさせ、ミサキネットワーク全体の演算能力を一時的に底上げ。
⑥未元物質
・乗っ取った垣根の未元物質で、無限に自身を複製。複製された個体もミサキネットワークに接続できるため、倍々ゲームで演算能力が向上。
⑦学園群体
・クローンたちは超個体として行動していますが、個々のクローンに意識はあって、それをミサキネットワークという脳波ネットワークで共有しています。
そのため上位個体である木原ミサキはあくまで群体の中の象徴みたいなもので、死んでも別のエルダーズに木原ミサキの意識が上書きされる感じに、