とある姉達の心理感応(メンタルリンク) 作:絶対能力進化ver1.3
結局、御坂美琴は食蜂妹(仮)の家まで同行したが、これといって不自然な点はなかった。
「やっぱ早とちりだったのかな……」
家には雑誌やゲーム、趣味だというバドミントンのラケットなどが揃っており、至って普通の女子学生にしか見えない。
聞けば、普通に第十八区にある霧ヶ丘女学院学校に通っているという。
特徴的な目ではあるものの、髪型も体形も化粧も服装といった小さな違いが積み重なっているせいか、学校でも「ちょっと食蜂操祈に似ている、可愛いけど変な口調の転校生」ぐらいの認識だとか。
「といってもな~。やっぱり気になるっていうか……う~ん」
普通にもてなされた後、泊まるかどうかまで聞かれた。流石にそこまでしてもらうのも悪いので、美琴はそのまま常盤台の自室に戻っている。
だが、やはり気になるものは気になるのだ。
「どうかなされましたの? 随分と遅くまで出歩いていたようでしたけど」
同部屋の白井黒子が心配そうに聞いてくる。
「ううん、ちょっと不思議な人に会ってね」
「はぁ、どんな方ですの?」
「食蜂操祈のそっくりさん」
答えると、黒子は目をぱちくりさせた。
「それはまた……なんというか面妖な」
「そうよねぇ。私も黒子と同じ意見だわ」
そう言ってから、美琴はふと思いたった。
「ねぇ黒子、明日ちょっと
割と真面目な所のある白井黒子は少し考えてから、やれやれといった体で答えた。
「まぁ、一般人に公開できる範囲の情報でしたら……」
***
「あー、それ私も聞いたことありますよ! レベル5のクローンの噂!」
翌日、
「ちょっと前に御坂さんのクローンが噂になったことがあって、しばらく下火になってたんですけど、また最近になって食蜂さんのクローンが出るって噂になってるんですよ。なんでも学園都市が世界征服のために、レベル5のクローン兵士を量産してるとか」
「一気に信ぴょう性が薄くなりましたわね……ハリウッドの大作SFアクション映画じゃあるまいし、まさか」
白井黒子がはぁ、と溜息を吐く。抗議する佐天さんたちの議論を他所に、美琴は初春と一緒にパソコンに張り付いていた。
「初春さん、何か分かった事ある?」
「えっと、あ、ありました! これが、御坂さんの言っていた子じゃないでしょうか?」
――霧が丘中学2年、ミサキ=ウッドフィールド。
パソコン画面上ににアップされたのは、紛れもなく昨日の夕方に美琴が会った、あの少女の写真だった。
プロフィールにはカナダ生まれの日系人で、
「たしかに、よく見ると食蜂さんに似てますね。目とか瞳とか目とか」
「結局、目しか似てないじゃありませんの」
「あっ、でも能力もありましたよ。レベル3の精神系」
むしろ、ますます不安を掻き立てる内容だった。これでは食蜂のクローンだと宣言しているようなものだ。
「経歴は……去年まで施設で育てられたということになっていますけど、その施設は去年に閉鎖されているみたいですね。データも残っていません」
「手がかりは無し、か……」
怪しさ満点だが、証拠が一切残っていないという厄介な状況だった。
現在進行形の研究であれば、必要なデータはどこかに保存してあるだろうし、研究に関わる人材や資材の動きから何らかの足取りを追うことも出来る。
だが、終わってしまった研究ともなれば話が別だ。機密保持のためにデータは消去されてしまうし、研究者だって移籍してバラバラになり、資材や情報の動きも無くなる。
(でも、昨日の様子だと何か危ない目にあっている様子は無かった。いたって普通の学生生活を送ってるみたいだったし、もしかしたら妹達のように実験中止で既に解放されている……?)
そういえば昨日も本人が「ミサキは研究所に所属しておりませんし、実験にも参加しておりません」と言っていた。
――もしそれが本当であれば、もう心配することなど何もないのではないか。
過去に何があったにせよ、既にそれは終わって彼女は普通の学生生活を送っている。そうであれば結果オーライと言えるのではないだろうか。
これ以上調べても出てくるのは、過去に行われていた学園都市の不愉快な実験の記録だけで、今さら過去に戻ってやり直すことも出来ない。終わった過去を蒸し返して、どうしたいというのか。
「初春さん、本当に他には何も無いのよね?」
「はい……ここまでデータが完全に消去されているとかなり怪しいんですが、いったん消されちゃった以上はどうにも……」
少し悔しそうな初春の声。だが、プロである彼女がそう言うからには、調査の継続は困難なのだろう。
どうしたものかと御坂が考えていると、横で聞いていた黒子が提案する。
「お姉様。そんなに気になるのでしたら、いっそ食蜂操祈に直接聞くというのはどうでしょうか?」
「あっ、たしかに食蜂さんなら何か知ってるかもしれません! 食蜂さんのクローンであれば、少なくとも食蜂さん本人は何か関わりがあると思いますし。さすが白井さんです!」
「たしかに! どうですか、御坂さん!」
「食蜂かぁ……」
うげ、と頬の筋肉が自然に固まってしまいそうになるのを抑えつつ、美琴は少し考えこむ。
たしかに、黒子の提案はもっともだ。唯一難点があるとすれば、それは御坂美琴が食蜂操祈を苦手にしているという、その一点に尽きた。
「食蜂……食蜂ねぇ」
「お姉さま」
まったく子供じゃないんだから、と口で言わずとも、黒子の呆れた表情には言葉がありありと浮かんでいる。
「あー、分かったわよ! 行くわ。食蜂のとこに行ってやろうじゃない!」
**
食蜂操祈と御坂美琴――。
常盤台が誇る2人のレベル5。片や最大派閥を形成する第5位と、どこの派閥にも属さず一匹狼を貫く第3位。
精神攻撃vs物理攻撃、ロングvsショート、巨乳vs貧乳、などと対照的な2人は何かと話題の引き合いに出されがちだ。
しかしながらこの2人、周囲の妄想とは裏腹に日頃の接点はそれほどない。というか美琴が一方的に毛嫌いしている。
もっとも食蜂にしても性格にやや難があり、直情型の美琴を煽って遊んでいるような節があるから、どちらが悪いとは一概に言えないのだが。
そんなわけで、食蜂操祈が派閥メンバーとお茶会をしているところに御坂美琴が訪ねてきたのは、ちょっとした一大イベントであった。
「まさか御坂さんの方から訪ねてくださるなんて、とても嬉しいですわ」
「あはは……」
満面の笑顔でお茶を用意するのは、食蜂派閥の帆風順子。実質的なナンバー2である彼女は、2人に仲良くしてほしいと常々思っている。
「これがお嬢様のお茶会……!」
そして初春と佐天の2人は、2度目とはいえ慣れない優雅なお茶会に圧倒されていた。
「ねぇ初春、このカップって幾らするのかな?」
「佐天さんが一生働いても返せないぐらい……?」
「ちょっ、怖いこと言わないでよ!」
「2人とも、はしたないですわよ。落ち着きなさいな」
こういう時、白井黒子はとても常識人だ。というか御坂美琴が絡まなければ、完全にただの良い人なのだが。実際、食蜂からも派閥に誘うなど人格と能力を高く評価されている。
「それで、今日は何の用かしらぁ?」
アールグレイを一口飲み、食蜂操祈が聞いてくる。
「本当に、御坂さんの方から私に会いたいだなんて、珍しいじゃない」
「別に、アンタに会いたいってわけじゃないし……」
ぶつぶつと呟きつつも、美琴は先日に会ったミサキと名乗った少女のこと、そして彼女が食蜂のクローンではないかという疑念まで、正直に食蜂に話すことにした。
食蜂も最初こそにやにやしていたが、話が進むにつれて徐々に真顔になっていく。
「私の……クローン?」
どうやら食蜂にとっても、初耳だったようだ。かつての超能力者量産計画と同様に、食蜂の知らないところで勝手にDNAが使われていたらしい。
「詳しい経緯は分からないけどぉ、DNAの出所なら『
『
もし食蜂のDNAサンプルが流出していたとすれば、そこからだろう。調査を進めるなら、まずはエクステリアの関係者を全員洗い出して、怪しい線から調べていくのが現実的だ――食蜂はそう告げた。
食蜂かわいいよ食蜂