とある姉達の心理感応(メンタルリンク)   作:絶対能力進化ver1.3

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第05話 『弓箭猟虎』

  

 

 10月5日、その事件は起こった。

 

 

「というわけでぇ、まずはスーパーでサバ缶大量購入ってわけよ!」

 

 

 街に明るい女子高生の声が響く。その発生源は金髪碧眼の日本人離れした風貌の少女――フレンダ・セイヴェルンだ。

 

「えぇ……」

 

 フレンダが腕組み――もとい強引に引っ張っている相手は佐天涙子。つい30分ほど前に拉致されかけたところを、鯖缶を通じて知り合ったフレンダに救われた直後であった。

 

 すっかりテンションの上がったフレンダは、後ろからじっと自分を見つめている視線があることに気づかない。

 

 

(あらあら。こっちはあなた方のせいでご学友の誘いを断って来たのに、仲良さそうですねぇ。金髪クソリア充女が……イチャイチャしやがって)

 

 

 そこにいたのは、ツーサイドアップにした黒髪の地味な少女。

 

 獲物を仕留めるハンターそのものの目で、フレンダたちをロックオンしている少女の名は弓箭猟虎という。暗部組織『スクール』に属するスナイパーだ。

 

 彼女は無能力者(レベル0)だが、狩猟民の追跡技術を習得している点で一般人というわけでもない。

 

 血痕など標的の痕跡から移動ルートを把握することが可能な一方、暗殺術の一環として気配を隠し自然体で行動することにも長けている。

 

 なお、本人曰く決して「ぼっち」を極めたからではない。

 

 

(黒毛は生け捕りとの命令ですが……もう片割れは狩っちゃっていいんですよね?)

 

 どす黒い怨念を滲ませ、弓箭猟虎は弓を引くようなポーズをとる。彼女の暗器は、背中に隠してある空気狙撃銃だ。

 

 銃は腕の曲げ伸ばしで自在に組立・分解が可能。袖口から炭酸ガスの圧力で弾丸を射出することで、狙撃する仕組みとなっている。

 右腕が近接用、左手が中距離用。以上から、標的にバレずに追跡しての暗殺に長けていると言えよう。

 

 

 ――そして。

 

 

 今まさに引き金が引かれようとする直前、猟虎の携帯電話が鳴った。

 

 

「ふぇっ!?」

 

 

 画面に表示された発信者の名は『垣根帝督』、彼女の属する暗部組織『スクール』のリーダーだ。

 

「垣根さん……? はっ……はははははいっ!?」

 

 慌てて携帯電話を開く。

 

 テンパって明後日の方向へ発砲してしまったような気もするが、どうせ消音の空気銃なので気にしない。

 

 通話ボタンをONにすると、垣根の声がした。

 

『―――緊急事態だ。すぐアジトに戻ってこい』

「ふえっ? で、ですが今は任務中で……」

『その任務はいったん中止だ』

 

「え」

 

 意外な言葉に、猟虎は素っ頓狂な声を漏らしてしまう。

 

『少しマズい事態になった。俺もちょっと忙しくてな、詳細まで話している時間はない。誉望が車でそっち向かってるから、説明はアイツから直接聞け』

「え? ちょ、まっ――」

 

 そこで通話は一方的に切られた。

 

 

「………」

 

 ちょっとばかし、扱いが雑なのではないだろうか。

 

 確かにまだ新人だし、標的が悶え苦しむ様を楽しむ癖は、教育役の誉望からも苦言を呈されている。

 

 しかもレベル0ともなれば、レベル4~5の他メンバーから見ればミジンコみたいな存在なのかもしれないが―――。

 

 

「でも私だって……」

 

 

 

 ―――10分後―――

 

 

 

「なにブツブツ言ってるんすか」

「あっ、誉望さん」

 

 目的地に到着した誉望万化が見つけたのは、地面に座り込んで延々と呪詛を漏らす猟虎の姿。通りの一般人が遠巻きに彼女を避ける中、呆れ顔で近づいていく。

 

「垣根さんから話は聞いてるだろ?」

「ええ、緊急事態だとか。珍しいですね」

 

 リーダーの垣根帝督は学園都市第2位の座にふさわしい自信家で、そう滅多なことでは動じない人間だ。

 

 大抵のことは彼の能力をもってすれば解決できないことはなく、単に楽か面倒かの差でしかない。

 そんな彼が緊急事態と表現し、任務を中止させ、あまつさえ「忙しい」という状況になるなど前代未聞だ。いったい何が起こっているのか。

 

 

「だから………ぐっ!?」

 

 説明しようとした瞬間、誉望が苦しげな呻き声をあげる。

 

「誉望さん!?」

 

 慌てて猟虎が駆け寄ると、誉望は頭を押さえて地面にへたりこんでいた。見たところ強烈な頭痛にでも襲われているようだった。

 

「どうしたんですか!? これから頭痛で死ぬんですか!? だったら葬式は何形式がいいか教えてください!」

「いや勝手に殺さないでくれる!? たしかに死ぬほど痛いけど、今すぐ死ぬとかじゃないから!」

 

 

 猟虎の容赦ない言葉に若干傷つきつつ、誉望は自身の能力――念動能力(サイコキネシス)を駆使して脳に対する全ての必要外の外部情報をシャットダウンする。

 

 

「……っ、脳をハッキングされかけた。こりゃ、かなり高位の精神系能力者の仕業だな」

「精神系ですか……でも、どうして誉望さんなんかに」

()()()は余計だ。これでもレベル4なんだぞ先輩なんだぞ。もっと敬え」

 

「それで誉望さん、どうして精神攻撃を受けたか心当たりは?」

 

 当然のように無視してくる猟虎に抗議する気力すら失ったのか、誉望は「はぁ~」と大きな溜息を吐いて状況を説明する。

 

「垣根さんが言ってた、例の緊急事態の件が関わってる。つい先ほど電話相手から連絡があって、学園都市中の能力者が次々に精神攻撃を受けてるって話だ」

 

 そして先ほど、誉望万化もその標的となった。

 

 

「能力者だけを狙う精神攻撃、ですか。なんというか、ざまぁみろって感じですね」

「……そう言うと思ったよ」

 

 「ふっふっふ」と黒い笑顔を浮かべる陰キャぼっち女に呆れながら、誉望は本日2度目の溜息を吐いた。

 




  
 ラッコちゃん、とりあえず当面は死亡回避。見た目が作者的には割とドストライク。
 
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