とある姉達の心理感応(メンタルリンク)   作:絶対能力進化ver1.3

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※以前に投稿した6話が、時系列的に後に回した方がいいと思ったので削除し、差し替えました。

注意:独自設定・独自解釈あり。


第06話 『姉達(エルダーズ)』

 

 街には徐々に、崩壊の音が忍び寄っていた。

 

 

 クローンの上位個体であるミサキ00001号『優先信号(ファーストオーダー)』の命令を受け、7000体を超えるクローン・ミサキは一斉に能力を行使した。

 

 

 使用された能力は全て同じもので、平たく言えば食蜂の持つ『心理掌握(メンタルアウト)』の下位互換だ。

 彼女たちが操る能力の名は、便宜的に『心理感応(メンタルリンク)』と呼ばれている。

 

 

 ‟便宜的に”という但し書きが付いているのは、個体によって微妙に能力に差があるからだ。

 

 

 ミサキ・シリーズあるいは『姉達(エルダーズ)』と呼ばれる食蜂操祈のクローンたちは、モデルとなった『妹達(シスターズ)』と同様、オリジナルであるレベル5の能力がコピーされているものの、強度は本家の1%もない。

 

 

 そこで本家の『心理掌握』が持つ汎用性を犠牲にして、『姉達』が操る『心理感応』は通常、特定の精神系能力に特化させた運用がなされている。

 

 『心理掌握』が十徳ナイフであれば、『心理感応』はナイフ・缶切り・栓抜き・ドライバーといったツールの集合体。食蜂がカテゴリ分けしている記憶操作・読心・人格の洗脳・念話・忘却・思考再現・感情移植・事実誤認といった個別の用途を、個々の『姉達』は個体ごとに得意な分野へと特化させているのだ。

 

 『妹達(シスターズ)』と違って、見た目や性格に敢えてバラツキをもたせているのも、こうした運用上の特性ゆえの差と言える。

 

 そのためデフォルトの『心理感応』ではレベル2程度の出力でしかないものの、個々が得意な精神系能力カテゴリに限れば、限定的にレベル3程度の出力を発揮できるのだ。

 洗脳に特化させた個体であれば洗脳はレベル3並み、念話や記憶操作はレベル2並み、といった風に。

 

 

 ――そして、それが7000体以上も集まればどうなるか。

 

 

 話は単純な足し算に留まらない。

 

 『妹達(シスターズ)』と同じく‟クローン体は同一の脳波を持つ”という点と念話能力や精神感応といった精神操作能力を組み合わせることで脳波ネットワークを形成する。

 

 厳密にいえば個体ごとのバラつきを調整するために、『優先信号(ファーストオーダー)』による『心理感応(メンタルリンク) カテゴリ001:脳波調律』を使った制御が必要なのではあるが、基本的にはミサカネットワークと大差はない。

 

 

 問題は、その先だ。

 

 

 ――もし、この精神系能力者からなる脳波ネットワークに、『幻想御手(レベルアッパー)』を組み合わせたらどうなるか。

 

 

 まず、単純に7000体以上のクローンからなる「1つの巨大な脳」状のネットワークが構成され、高度な演算能力が発揮できる。そしてレベルアッパーの名の通り、個々の出力は飛躍的に増大する。

 

 

 しかも『幻想御手』と違って脳波パターンが同一のクローンから構成されるため、純粋なクローンのみのミサキネットワークを使用している限り、脳の疲弊は発生しない。

 

 加えて、無能力者(レベル0)の寄せ集めだった『幻想御手』と違い、ミサキネットワークに組み込まれている姉達(エルダーズ)はレベル2~3程度の能力を持つ。取り込んだ場合の演算能力向上やAIM拡散力場の強度は段違いだ。

 

 

 だが、ミサキネットワークの恐ろしさはそれに留まらない。ミサキネットワークの真の能力は、彼女たちのオリジナルの能力が精神系であることにより、凶悪な威力を発揮する。

 

 

『――ミサキ2345号より報告。トラブル対応の発生により、対象の調律を70%で一時凍結』

『――ミサキ6567号、対象の調律を完了。調律対象を次の個体へ移行します』

 

 

 早い話が、精神操作によって狙った能力者の脳をハッキングし、無理矢理ネットワークへ組み込むことが出来るのだ。

 

 

 モデルとなった『幻想御手』では、個人差を無視した特定の脳波を強要されることで脳が疲弊するという弱点があった。

 

 しかしこのミサキネットワークでは、能力者の精神を乗っ取った上で『優先信号(ファーストオーダー)』が自身の能力を利用したミクロレベルの脳内物質操作を行うことで、間接的に脳波を同調させやすいよう調律することができる。

 つまり『幻想御手』の弱点を、精神系能力の組み合わせによって克服したのだ。

 

 これによって理論上はノーリスクかつ無制限に、『幻想御手』を運用することが可能となる。木山春生が見せたようなネットワーク内に取り込んだ能力者の能力使用はもちろん、精神操作とネットワーク化によって『幻想御手』のように暴走して『幻想猛獣(AIMバースト)』が生じるといった問題も起こらない。

 

 

 しかも『幻想御手』に取り込める能力は任意に選べるものではなく、あくまで木山が作った共感覚性を利用して脳波に干渉する音声ファイルを使用した人間に限られていた。

 

 だが、ミサキネットワークでは元の能力が精神系ということもあり、こちらから積極的に任意の対象を選んで洗脳することで、()()()()()()()()()()()()ことが出来るのだ。しかもネットワーク化によって演算能力が向上した結果、精神攻撃の強度は倍々ゲームで増えていく。

 

 

()()()()()を開始」

 

 

 現在、学園都市には180万人の学生が暮らしている。そのうち6割は無能力者(レベル0)で、「戦闘面においては軍隊で戦術的価値を得られる」と評される大能力者(レベル4)以上となると、数百人とかなり数が絞られてくる。

 

 

 それでも『幻想御手(レベルアッパー)事件』の時、最終的な使用者はおよそ1万人に達していた。

 

 対して、ミサキネットワークの総数は7000人。脳波調律による脳への負荷を考えれば、強力なレベル4ないし一定の有用性を持つレベル3を、最大で1万人ほど取り込むのが最も効率が良い。

 

 

 ――であれば。

 

 

 姉達(エルダーズ)の頂点に立つ上位個体、優先信号(ファーストオーダー)の出した結論は明快だった。

 

 

「まずは洗脳した『風紀委員(ジャッジメント)』を使って、ターゲットを選定しないと」

 

 

 学園都市の総合データベースである『書庫(バンク)』は、学園都市最大の武器である「科学的な叡智」の集合体だ。

 ここには各学校生徒の情報や成績表から超能力開発に使用する薬品や機材、各種研究の成果や学園都市の超兵器など、学園都市に関する情報のほぼ全てが登録されている。

 

 基本的には誰でもアクセスできるが、個人情報などの機密度の高いデータは『風紀委員(ジャッジメント)』や『警備員(アンチスキル)』など、特殊な立場の人間か関係者しか閲覧出来ない。

 

 

 もちろん、アクセス可能な風紀委員は既に数人洗脳してある。風紀委員の権限に電気系能力者の能力を組み合わせれば、かなり強力なハッキングが行使できる。

 

 

「最優先目標は……この子ね」

 

 

 モニターに映っているたのは、ピンクのジャージを着てぼーっとした表情を浮かべている少女。レベル4の『能力追跡(AIMストーカー)』を持つ、滝壺理后だった。

 




 
 精神操作能力なら、レベルアッパーの弱点(わざわざ音声ファイルで取り込まないといけない、脳波の強制によって負担がかかる)あたりを洗脳能力とか木原幻生がやってた脳波調律とかで克服できそう。
 
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