とある姉達の心理感応(メンタルリンク) 作:絶対能力進化ver1.3
10月6日、第3学区にて――。
「遅いよー、浜面」
浜面仕上が『アイテム』の隠れ家に帰るなり、リーダーの麦野沈利がのんびりした調子で言った。
場所は第3学区にある高層ビルの一角。スポーツジムやプールなど、屋内レジャーだけを集めた施設で、利用者のグレードはかなり高い。
建物に入るだけで会員証の提示を求められ、さらに各施設を利用する際に、会員証のランクまで調べられる。
いわゆる上流階級と呼ばれる人々が、ステータスとしてまず手に入れたいものが、ここの会員証らしかった。
浜面たちがいるのは、VIP用のサロンだ。年間契約の貸し切り個室で、2つ星以上の会員ランクが無ければ借りる資格すら与えられないという、まさに最高級な感じの部屋。
個室と言っても軽く3LDKを超える広さの空間で、麦野はゆったりとしたソファに身を沈めていた。
「フレンダは?」
「昨日に車寄こせって言われて言う通りにしたら、なんか怪しげな車の追跡に付き合わされて、それっきり」
浜面の報告に麦野が怪訝な顔をするが、嘘は言っていない。というより、逆に浜面の方が何の用事だったのか聞きたいぐらいだ。
「……フレンダから何も聞いてないのか?」
浜面の質問に、麦野は肩をすくめて答えた。
どうやら、先日のカーチェイス&ドンパチはフレンダの独断行動だったらしい。
「浜面、フレンダにメール」
「へいへい」
「んじゃ、仕事の確認いくよー」
とりあえずフレンダの合流は後回しとして、麦野は今ここにいるメンバーだけで行動することに決めたらしい。携帯電話を取り出すと、全員にファイルが送信された。
「ふむふむ」
浜面、絹旗、滝壺の3人が、それぞれの携帯電話で情報を確認する。画面に出てきたのは、ふんわりとした雰囲気を放つ、目鼻立ちの整った美女の写真だった。
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対象情報
対象:木原ミサキ
年齢 : 22歳
身長 : 164cm
スリーサイズ : B83/W53/H84
職業 : 大学院生
能力:レベル4『心理感応(メンタルリンク)』
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(えっ、誰これめっちゃ可愛いんですけど―――!)
にわかにテンションのあがる浜面。
やさしげに微笑む理知的な青い瞳は思わず吸い込まれてしまいそうな魅力をたたえ、ゆるく巻かれた茶色のロングヘアは良質の絹のようで艶やか。やわらかな肌は滑らかで美しいラインを描き、頭の上からつま先まで上品な雰囲気を漂わせていた。
白を基調にしたモノトーンのバイカラーワンピースに黒のサッシュベルト、華やかなドロップイヤリング、シンプルなゴールドのバングル・ブレスレットという気品ある服装もあいまって、完全に良いとこのお嬢様大学生といった印象を受ける。
(なるほど、ミサキちゃんって言うんだ。3サイズもなかなか……って、ハッ!?)
――気づいた時には既に時遅し。
かつて100人以上のスキルアウトを束ねた不良のリーダー、浜面仕上の表情がだらしなく緩んでいくのを、アイテムの3人が汚物でも見るかのように遠巻きに見ていた。
「違っ、待て! これは何かの間違いだッ!」
「浜面、お前……」
「浜面的には、いかにもなお姉さんキャラな年上が超ヒットだったんですか」
「大丈夫だよ、はまづら。私はそんなはまづらを応援してる」
生暖かい言葉を受けて小刻みに震える浜面は、がっくりと肩を落としてファイルの続きを読む。
指令は単純なものだった。
―――手段を問わず、対象・木原ミサキを捕獲せよ。
「これって……」
浜面が言葉に詰まる。
一応「捕獲」とあるが、問題はその前だ。暗部において「手段を問わず」というのは、「とりあえず死んでなければいい」というもので、細胞さえ動いていれば学園都市の最新技術でどうとでも生かしておける。
さらに続きを読むと、現在学園都市で発生中の能力者が昏倒するという事件の黒幕が彼女である可能性が高いとのことが示唆されていた。
「そんな事件があったのか」
「私も今、超知りました」
浜面の呟きに怪訝な顔をして答える絹旗。その反応から、それほど同時多発的に起こった事件というわけでもないらしい。
どうやら犯人の木原ミサキは慎重に犯行計画を練っていたらしく、断続的かつ散発的にターゲットを昏倒させ、しかも搬送先の病院にいる医者まで洗脳していたという。
そのため「重度の熱中症」や「低血圧による急性の失神」といった虚偽の診断が出され、事件としての発見が遅れたのだ。
「マジかよ……」
可愛い顔してエゲつねぇな、という心の声を奥底にしまいつつ、浜面は携帯から顔を上げる。
「麦野、これからどうするんだ?」
「決まってんだろ」
ふぅーっと一息ついた後、麦野の顔が好戦的なものへと変化する。
「今回の騒動を起こした連中、全員ぶっ殺す」
『アイテム』の存在意義は、学園都市の上層部や暗部組織の暴走を防ぐことにある。まさに打ってつけの任務というわけだ。
送られたファイルによれば、犯人グループの大半はレベル2かレベル3程度らしい。雑魚でも群れれば厄介だが、一人一人はそれほど脅威ではない。
「滝壺」
麦野が滝壺の方を見る。
ぼーっとした表情で、別のソファにだらっと手足を投げ出している少女。彼女の『
「既に数匹はこっちで潰してある。連中、クローンにしては髪型やら化粧やら着こなしやらでうまく人間様に擬態してるみたいだけど、AIM拡散力場は同一クローンである以上変わらない。雑魚が一般人に紛れて2万もいようが、場所さえ炙り出せれば『アイテム』の敵じゃない」
麦野がそう言っている間に、滝壺がポケットから白い粉末の入った小さなケースを取り出した。
「麦野、検索対象は『
「ああ。そのクソビッチで合ってるよ」
そんなやり取りを、絹旗が不思議そうな目で見ている。
「しかし滝壺さんも超難儀してますね。『体晶』がないと能力発動できないなんて」
「別に。私にとっては、こっちの方が普通だったから」
滝壺は言いながら、白い粉末を少しだけ舐めた。
「ッ―――」
次の瞬間、彼女の目に強い光が宿る。まるでそちらの方が正常であるかのように、背筋を伸ばして滝壺理后は佇んでいる。
「AIM拡散力場による検索を開始。近似・類似するAIM拡散力場のピックアップは停止。該当する単一のAIM拡散力場のみを結果報告する。検索終了まで残り5秒」
機械のように放たれる声……そして答えが返ってきた。
「結論。『心理感応』のうち50体を、この建物内で確認」
なに!?とその場の全員が愕然とした瞬間、個室サロンの扉が爆破された。
いつもの木原一族