日本国召喚 ダーレクの脅威   作:おは

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トルメスの戦い

中央歴1639年12月30日 トルメス郊外

 

パーパルディア トーパ王国救援軍 リントヴルム移動司令部 アロイス・リンツ

 

フフフフ、フィン王国進攻に入れなかったがトーパ王国救援軍の司令官になれるとは。

レミール様のおかげだな。

 

フィン王国進攻に加えられなかったという点でこの男の軍事的才能は並以下であった。そんな彼が司令官になれたのは彼が皇族の血を引くこと、そして何よりも皇国がダーレクの駆除を容易と認識していたからだ。

 

監察軍の連中も自衛隊に怖気づくとは。連中の兵力動員を見れば、わが皇国との国力の差は歴然だ

300人足らずの連中と15万人の大軍。どちらが強いかなどはっきりしている。

 

 

陸上自衛隊 先遣中隊 10式戦車内 紀平輝彦

 

たしかにパーパルディア軍を見るとこの世界で列強と呼ばれることはあるな。

軍の行軍スピードが近世時代の軍にしては早い。

ただ、軍の水準は近世軍だ。自衛隊の脅威になることはないし、彼らと戦争しても楽勝だろう。

 

パーパルディアが危険な侵略国家であることを異世界の人々は口々に言っていた。

その上にパーパルディア皇国軍と行動を共にするなかでトーパ王国の住民から物資を略奪しているのをを見た。この国は何か大きなことをやらかす。その時は自分たち自衛隊は奴らと戦うことになるだろう。

 

 

トーパ王国 トルメス 奪還部隊 騎乗 フランク・ミューア

我らはあの魔獣に勝てるのだろうか?日本の鉄の竜、パーパルディアの力の源リントヴルム、

トーパ王国軍などあっという間に滅ぼす力を双方ともに持っている。

だが、命からがらトルメスから逃げ出したときに見たあの魔獣の力が俺を不安にさせ続けるのだ。

 

同日 死の都市トルメス 領主の館 

 

兵士の警戒センサーはトルメスに向かう敵の軍勢察知した。

すぐさまダーレク戦闘システムが敵の数、脅威度を推測する。

 

・数ハ17万2472人

 

・デマット兵器存在確認サレズ (存在をこの世界から消し去る武器。例としてレミールに当てると彼女の存在が消えて結果、ニシシノミヤコの虐殺が起きなくなる)

 

・時間兵器確認サレズ

 

・時空ノ歪ミ安定的

 

・・・敵ノ戦力弱小ダーレクノ勝利ハ確実

 

兵士は郊外へ向けて飛び出す。劣等種族、特にトーパ王国軍を消滅させるために。

 

17万の大軍は悠然とトルメスに向かっている。パーパルディアと自衛隊は自分たちが

勝つことを疑っていなかった。方や武力でフィルアデス大陸を治め、方や圧倒的な技術力でロウリアを粉砕した実績が自信を持たせていた。

 

空を飛ぶダーレクに真っ先に気付いたのはトルメスの敗残兵たちだった。

迎撃にきたワイバーンロードを無視して、地上に降り立つと、

 

「降伏セヨ」

 

その言葉に反応したのはパーパルディアの将校だった。

 

「魔獣が偉大なるパーパルディアに降伏を求めるだとぉぉぉぉぉ・・・」

「ダーレクノ要求ヲ拒否スルモノハ全テ抹殺スル」

将校を撃ち殺したダーレクは冷淡かつ傲慢な反応を返した。

将校を殺されて怒り狂ったパーパルディアの一斉射撃から戦闘が始まった。

 

 

強固なフォースフィールドはあらゆる攻撃に無敵だった。

 

トーパ王国の大魔法、

パーパルディアのマスケットや導力火炎弾、

自衛隊の5.56mm弾や対戦車誘導弾そして10式戦車の120mmAPFSDS弾にも。

 

 

 

紀平は茫然としていた。おいおい、反則だろと。

 

確かに自分たちはあの怪物に向けてAPFSDSを打ったのだ。1,600m/s以上の高速弾は運動エネルギーであの魔獣を破壊するはずだった。はずだったのだ。実際の砲弾は魔獣のバリアによって阻まれ、その表面に触れることすらできずに消失していた。

 

あいつ、俺たちのことを気にもせずにリントヴルムを攻撃している。防衛省の試算と違ってあの地竜は

10式以上の戦力を持っているのか!?

 

真実は残酷である。ダーレクが10式を後回しにした理由は、リントヴルムが生き物でありその上

リントヴルムを殺しても騎乗者が死なない可能性があるが、10式では死んでしまうからである。ダーレクはこの戦いを娯楽とみなしていた。

 

目の前で僚車が魔獣に突進する。砲弾が効かなければ自重で踏みつぶす腹のようだ。

初めて魔獣は10式に攻撃をした。放たれたビームは複合装甲を紙のように突き抜け砲塔が空高く舞い上がった。紀平は10式戦車から逃げ出した。

 

 

先遣派遣中隊は戦場から敗走してゆく。中隊最強の戦力10式を全く脅威とすら受け取らない。

魔獣を前に逃げ出す兵士たちはロウリアとの紛争を無傷に勝利した兵達ではなく、

オペレーションモモタロウの名前の通りの鬼退治の一行ではなく、鬼という怪物になすすべもなく

やられてゆく人々でしかない。

 

同日 トーパ王国海上 おおすみ

 

先遣派遣中隊からの連絡は当初の楽観的な予想と違い、援護の要請と死傷者の報告が繰り返しだった。

想像だにしなかったこととはいえ自分たちが彼らを死地に送ったことに動揺している隊員に、艦長からの放送が入った。

「諸君らが思っている通り死地に彼らを送り出してしまった。だが、死地に送り出したということは死地から救い出すこともできるということだ!本艦はこれから負傷者の救助を行う!!」

 

艦長の言葉のようにおおすみは戦場に向かう。

 

トーパ王国軍は魔獣の虐殺が始まってからすぐさま逃げ出した。待ち望んだ救援など役に立たないこと、

王国が滅びることを確信した彼らは家族のもとに向かってゆく。家族を連れて魔獣から遠くの場所に

行くことのみが彼らの望みだ。

 

トーパ王国軍は弱かったわけではない、強いのだ。パーパルディアも日本も同じようにやられているのだから

弱いわけがないアハハ!

 

笑っているフランクにビームが当たりこれまでに倒れた人々の仲間入りをさせた。

 

皇国軍もなすすべもなくやられていく。騎乗していたリントヴルムマスケット銃の一斉斉射を物ともせず魔道砲をものともせず魔法の攻撃で皇国軍を打ち破ってゆく。まさに戦場の死神だ。

退却いや敗走しているパーパルディア軍に再び死神の鎌が振るわれ、一個連隊が刈られた。

司令官のアロイスの死も近い。

 

人は死ぬときに真価を発揮するときがある。コネで出世した無能な指揮官のアロイスは

死が目前に迫った時に無抵抗のまま殺されることを拒否した。武器をなくした彼はせめてもの抵抗に

僅かな宿る魔力を魔獣に当てる続ける。

 

紀平はアロイスを見ていた。彼自身はパーパルディアの将校としかわからなかったが

その姿が自分達がなっていたものだったのはすぐに分かった。その英雄に魔獣が攻撃の矛先を向けた瞬間。紀平は司令官の盾になっていた。

 

わ、儂は、蛮族に救われたのか!?あの蛮族いやあの男に・・

生き延びなければいかんか・・・

 

パーパルディア軍は撤退してゆく。トーパ王国の属領化とその功績によって皇后になるというレミールの野望は無残にも失敗した。

 

 

戦場に残るはただ一つダーレクだ。

 

自衛隊、撤退ダーレクノ勝利、トーパ王国軍、消滅ダーレクノ勝利、パーパルディア皇国軍、撤退

ダーレクノ勝利。

 

兵士にとって勝利は当然の結果だった。

米軍と一つのアリの巣ほどのの戦力差で勝たない方がどうかしているのだから。

 

目的を果たした兵士はマラストラスを呼び命令を下した。

トーパ王国ヲ破壊セヨ

 

 

 

ダーレクの力は計り知れない。太陽神の使いすらほかの連中と全く同じように歯牙にもかけず

撃破した。もしかすると魔帝様ですらダーレクにとっては弱い存在に過ぎないかもしれない。

 

のちにマラストラスは知るだろう。魔法帝国ラヴァーナル帝国、この世界を支配した強大な帝国をダーレクが資源としてみることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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