中央歴1640年 2月7日 日本国 首相官邸
「パーパルディアから同盟の提案だと!?」
日本国のほとんどの人によってパーパルディアは悪の帝国であり閣僚の中には
いずれ戦う相手と読んでいた。その国が同盟を求めてきたのだその内容も対等な関係でこの案だけを見れば
結びたくなるような案を
「パーパルディアと同盟を結ぶのは現在の外交情勢を考えればよい案かと」
オペレーションモモタロウの失敗後第二、第一文明圏駐日大使が続々と母国に帰還する事態が起こっており
それに拍車をかけるようにミリシアルの第三文明圏の保護宣言は第三文明圏の国々までもが国交を断絶するありさまとなっていた。
「現在の状況が続けば経済においても日本製品の輸出の大きな障害となりひいては
経済の悪化を招くことになります。ですから私としてはこの世界での列強であるパーパルディアと手を結び
外交的立場を再確立する必要性を感じています」
外務大臣が言わないであろう理由には日本との外交を取りやめる国々が続出した結果
外務省の力が失われてしまうのでは?という外務官僚の疑念を大臣が受け取ったという理由もある
「私は反対です、パーパルディアはクソです!あのような非人道的な侵略国家と手を結ぶというのは
将来の外交で汚点となります。むしろ!我が国はフィルアデス連合軍を支援しかの大陸に親日本政権を樹立すべきでしょう」
ある担当大臣は逆の提案をする。当然外務大臣と口論になる。この二人は外務大臣の座を巡って政治的にライバル関係に外交問題では対立する意見を言うのが日常茶飯事だった。
それをいつもいつもなだめよい提案や取り入れていた総理だったが今回の決断は前回の政治的失敗の原因である性急に物事を決め過ぎた反省からひどく慎重な姿勢となっていた
「ところで防衛大臣はどう思う?」
「防衛省として懸念事項としてフィルアデス大陸は魔王領と隣接しています。ですからかの大陸が
混乱状態に落ちった際には魔王軍の進出が行われる可能性があります」
魔王その名前を聞いた途端首相は胃の痛みを感じた。目下のところ異世界最大の脅威であるダーレク
大国に匹敵する異常な推定戦力を相手に戦う方法はまだないのだ。
「混乱はしないのはフィルアデス連合軍かパーパルディアかどちらだ?」
「パーパルディアでしょう、あの国が圧政によって大陸を支配したとしても『支配』はできています
すなわち安定した秩序があるのです」
首相の判断は同盟の方に傾いていたが国民受けの悪い判断なだけに国会マスコミ対策の時間が欲しかった
そのため同盟の是非はもっと話し合ってからという決断で今回の会議は閉会した。
中央歴1640年 2月8日 日本国 ある雑居ビルの一室
「・・・パーパルディアと同盟に関してどう思います?」
パーパルディアの外交官は日本で有名な食べ物だという寿司を食べながらワイドショーを見ていた
番組を見ているとパーパルディアの抑圧的な属領支配最近のアルタルス王国の侵攻が否定的に語られていた」
我が国に対しての否定的な話ばかり聞くと陛下の恐怖による支配は間違っているとつくづく思わせる
結局のところ力による支配は力を維持していかなければすぐに崩壊してしまう、現にダーレクに敗北をした結果がこの惨状だ。
外交官は祖国の現在の政策に否定的な感情を抑えてカイオスに現在の日本の情勢を伝えた。
中央歴1640年 2月10日 パーパルディア皇国 エストシラント
「さて、全員レミールが手に入れたものを見たようだな」
ルディアスは参加者に意見を言うように促す。
「我が国としてダーレクが光翼人に神と崇められた存在であることを各国に周知することが出来れば
トーパの敗戦による国威の低下を覆すことができます。しかし諸外国は信じないでしょう」
「私も諸外国は信じないと思います。私自身も信じておりません。神々がこの世界に介入し続けることは
出来ないのはエルフの緑の神のように歴史や神話が証明し続けています。」
アルデのあと賛成する閣僚の発言が相次いだ。
閣僚たちが否定するのはルディアスも知っていた。しかしレミールが持ってきたものはパーパルディアの権威ある鑑定士によってラヴァーナル帝国が実在していた時に作られたものと結論を下していた
だからこそ聞かなくてはならないのだ。もしも本物の神だったらと?
「陛下、もしもの話ですがかの魔獣が本物の神でしたら我が国は滅ぼます。それは確実です
古のラヴァーナル帝国のような神々から逃げるすべをもっていません」
アルデはすがすがしく答えた、彼の想定とは異なるものだったうえに神と戦うのは軍略とは関係のない話だ
「真に憂慮すべきことは、かの魔獣がラヴァーナルによって製造された存在である場合です。
かつての魔王伝説のごとく。現在の魔王も大陸全土を焦土化するでしょう。ですから我が国はそうなる前に
情報と新兵器を開発して魔王に立ち向かわなくてはなりません」
アルデはそのために必要な措置について皇帝に進言しようとしたときに突如として扉が開き。
陛下!!アルーニの戦いにおいてわが軍は大勝!指揮官はアロイス閣下!
「閣僚会議中にそのような些事で我らの邪魔をするとはどういうつもりだ」
ある閣僚が将校をたしなめたも構わずに
アロイス閣下はフィルアデス連合軍の兵士を保護すると宣言し!負傷していないものを故郷に送り返しています!また、傷病兵の救護のために物資を流用しています!
「なんだと」と閣僚の一人がつぶやいたが一人を除いた会議の首席者全員が抱いた思いだった
なぜならば反乱軍は容赦なく殲滅するか奴隷化するそれが普段の行動であった。にもかかわらず皇族とはいえ一指揮官が勝手に保護を宣言し捕虜の解放と救護をするなど皇国が列強となって以来初めての出来事だった。その行動にはトーパの敗戦は相手が悪かったと思い始めていた面々も憤りを抑えられなかった。
もしもこの場にアロイスがいれば切れり捨ていたことが容易に想像できるほどに激高していたアルデに
再び叔父に屈辱を与えられ俯き震えているレミール。拳を握りしめ怒りを抑えるルディアス達の中で
一人カイオスは待ちに待った機会がやってきたことを悟ってた。
「陛下、アロイス将軍の独断は我が皇国の禍でありません。むしろ皇国を発展に向かわせる奇貨です」
カイオスの発言は一同の注目を集める、反乱軍を許すという愚行のどこに発展する要素があるのかと
知りたかった。
「わが、皇国は恐怖によって属領属国を統べています。恐怖の源は我が皇国軍の力によってです。
アルデ閣下、近い将来第三文明圏に干渉するミリシアル軍と戦いにおいてわが軍は無傷でいられますか?」
もちろん、そんなわけがないことはアルデ自身がよく知っている。技術、兵力に優れたミリシアル軍を対手にするには距離利点を最大限有効利用しゲリラ戦によって兵站に負担をかけ撤退させる方法しかないと軍の上層部の会議によって結論を下されている。だからこそミリシアルの侵攻を防ぐために強い皇国を見せつける必要があるのだ
「アルデ閣下、沈黙は我が皇国は無傷では済まないよろしいですね?」
カイオスの問いにアルデは沈黙で答えた。
「陛下、恐怖の源である皇国軍がミリシアル軍の手によって大損害を受けた時に属領は再び反乱を引き起こしミリシアルの先兵と化しわが方のゲリラ戦の効率は大きく下がります」
アルデが驚きの表情を浮かべていたのをカイオスは見逃さなかった。軍上層部のみが知りえているの情報を
カイオスが知っているのだから無理もない。皇国の改革派の第一人者となっていたカイオスに改革派将官が情報を流していたのだ。
「ですから、新しい道。恐怖ではなく尊敬される支配者としてのパーパルディア目指してゆかなくてなりません。そして現在アロイス将軍の独断ではありますが世界に我が国が変わろうとしているのだという姿を見せるのです。」
この話を聞いてルディアスがどう判断を下すのかはカイオスにもわからない。彼こそが恐怖による支配を推し進めている張本人でありその方針を変えるというのは精神的な苦痛を伴うはず。だが、少なくとも愚かではないことも確かだ。
ルディアスは長い沈黙の後
「カイオス。アロイスの行動を世界のニュースに流すのだ皇国が変わろうとしている証としてな」
パーパルディアは歩みだそうとしている