タツマキの弟子は頂点に行きたい   作:さよならフレンズ

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僕とジェノスと決意

 進化の家が生み出した忍者に匹敵する速さとクロビカリの防御を打ち破る力を両立している怪人、超阿修羅カブト。カブトムシの姿を模したこの怪人はムカデ長老やマルゴリのような巨体じゃないけれど、僕にとっては脅威そのものでしかなかった。

理由は明白だ。超阿修羅カブトが殴るたびに、僕が張ったバリア―に僅かだけれどヒビが入ってきている!

 

「これはマズいですよ……!」

 

 今まで僕が張ったバリア―の防御壁は誰にも破られることはなかったし、これからもそうだろうと無意識に安心していた。だけど超阿修羅カブトは元々力がある怪人だったみたいで、それに加えて忍天党の忍者に匹敵する速さを手に入れた結果スピードが乗ったまま剛腕を繰り出せる。得た速度がそのままこの怪人の力になっているんだ……!

 

「おらおら、守ってばっかりか!?」

「……ッ!」

 

 超阿修羅カブトが拳を繰り出すごとに鼓膜が破れるような轟音が響き、僕のバリア―のヒビは大きくなる。もちろんぼくの頭痛も酷くなっていった。

防御に徹さなければ守り切れないため、下手に反撃することもできない。

人間ほどに小さい怪人だし、大規模な超能力を使おうとすることすらできない。

そもそも忍者軍団にやったのと同じ方法の土石波を起こしたところでこの怪人に効くかはかなり怪しい。

そしてバリア―を破られた時点で僕は死ぬ。もはや絶対絶命……!

 

 どうにもしようがなく、顔色が真っ青で歯を食いしばっている僕とにやけ面の余裕の表情で、拳をバリア―に叩きつけ続ける超阿修羅カブト。

けれどここには僕と超阿修羅カブトだけでなく、ジェノスもいた。

 

「俺を忘れるとは余裕のようだな……エアーマシンガンブロー!」

 

 超阿修羅カブトの体に、ジェノスの無数の拳が突き刺さっていく。

僕にはその速度が早すぎて、うっすらとした残像しか確認できなかった。

間違いない、ジェノスも忍者の高速戦闘を会得している!

たまらず吹き飛んでいく超阿修羅カブトに向けて、ジェノスはてのひらを向ける。

 

「フラッシュとの度重なる模擬戦で、俺は速度をそのまま力に変換できることに気付いた。

お前も忍者の技術を受け入れ進化しているようだが、強くなっているのはお前だけではない。圧倒的な破壊力と速度の両立。それが俺の答えだ。神速焼却砲!」

 

 ジェノスのてのひらから放たれた焼却砲が、吹き飛んだ超阿修羅カブトの体を包み込んでいく。しかも神速焼却砲のエネルギーは止まらない……!

 

「は!?」

 

 僕は前方500メートルほどが消し飛んだのを唖然としながら見ていた。

協力者のジェノスがこんなに強いとは思わなかった。間違いなく今のジェノスは災害レベル竜以上の立派な戦力だ。

 

「今の俺は速度に特化しているが、僅かに全身のパーツを少なくすることで焼却砲に火力を回すことができている。これで怪人の排除が迅速に行える」

 

 淡々と呟くジェノスに僕はおぞ気すら感じた。忍者並みの速度でこんなレーザーをぶっぱなしてくるんだから、今の僕では勝てない可能性がある。流石に超阿修羅カブトも消し飛んだか……そう思っていた僕の考えはとてつもなく甘かったとすぐに思い知ることになった。

 

「なめてんじゃねー!」

 

 神速焼却砲のオレンジの爆炎を掻き消すように、怒り狂った超阿修羅カブトが姿を現す。

その姿は胴体の筋肉が隆起して、茶色から光輝く金色に様変わりしていた。

 

「超阿修羅モードだ!こうなっちまった俺は誰にも止められねえ!目にみえるものを殺し尽くすまではなあ!」

「ホワット!?なんの冗談ですか!?」

 

 僕は流石に悲鳴をあげることしかできなかった。どうやら超阿修羅カブトはまだあれで本気ではなかったらしいんだから、当然だろう。

僕たちに突進してきた阿修羅カブトだったけれど、そこでジェノスがぶつぶつなにやら呟いていた。

 

「新たな生体反応が2つ、高速で接近……!この反応はフラッシュ!」

 

 僕はジェノスの反応から、この2つの反応が味方であることを察した。

死んでいるかなと思っていたけれど、どうやら無事だったらしい。

 

「煙幕手裏剣!」

 

 聞いたことのない男の声と共に、超阿修羅カブトの全身が紫の煙に包まれていく。

僕とジェノスは超阿修羅カブトが咳き込んでいる隙に近づいてきた2つの反応の元に駆け寄った。

あの特徴的な金色の髪はフラッシュだし、ソニックも手配書の通りの風貌だ。

2人はなにやら言い争っているみたいだ。

 

「紫色の煙幕か、非力なお前らしい姑息な手段だ」

「あの強化形態ならば搦め手のほうが有効だと感じたまでだ。そもそも進化の家に敗北したのは貴様も同じだろう?」

「お前は獣王という雑魚に大苦戦してモグラに捕えられたと聞いた。超阿修羅カブトに敗北した俺と同じにするな」

 

 友人の軽口の叩きあいという感じだ。どうやらソニックとフラッシュの2人はかなり仲がいいらしい。ソニックは接近した僕とジェノスに向かって気だるげに吐き捨ててきた。

 

「意図したものかは知らんがお前の超能力で抜け出すことができた。気に食わないヒーローと共闘するのは本意ではないが借りは返す。この俺に土をつけた以上進化の家にも復讐しなければ気がすまん」

「分かりました、ここは賞金首である貴方のことは忘れます。超阿修羅カブトをどうにかしなければいけませんからね」

 

 勝手かもしれないけれど、超阿修羅カブト相手に少しでも戦力が欲しい僕はしぶしぶ許可した。

僕の起こした頂点土石波が進化の家を巻き込んで倒れ、結果的にフラッシュとソニックの拘束が外れたみたいだ。進化の家を作り出した科学者や忍者の首領はどうなったんだろう?

 

「……」

「……すみません」

 

 ソニックと違ってフラッシュは僕を鋭い眼光で睨み付けていた。土石がずれていた場合もう少しで死んでいたと言いたいのかもしれないからその件だろう。これに関しては巻き込みそうになった僕の不注意としか言いようがなく謝ることしかできなかった。

一方でジェノスは僕の右側からそんなフラッシュに駆け寄って、どこか嬉しそうに声をかけている。

 

「フラッシュ、無事でなによりだ」

「ジェノスか。わざわざ俺を助けにくるとは甘いやつだ」

「お前には蚊の怪人の件でも、模擬戦のデータ集めでも助けて貰ったからな」

「ずっと付きまとってきたくせに生意気な奴だ、少し速くなったな」

 

 とても人間らしいサイボーグのジェノスに、少し表情を緩めてジェノスの技量を褒めるフラッシュ。

2人の口調は粗暴だけれど、この両者の関係もどうやら悪くなさそうだ。

ジェノスが僕たちを尾行してでも、フラッシュ救出についてきそうだったのも頷ける。

 

「とにかく、このカブトムシを仕留めるぞ」

 

 フラッシュが刀を取り出し、もうもうと立ち上る紫色の煙を注視すると、金色の超阿修羅カブトが飛び出してきた!同時にフラッシュ、ソニック、ジェノスが攻撃を合わせて飛び掛かっていく。

 

「……!」

「……!」

 

 恐らく激闘が巻き起こっているんだろうけれど、身体能力も反射神経も常人レベルの僕の目にはなにも見えない。

今まで僕は超阿修羅カブト相手に無力でしかなかった。クロビカリが僕に失望した通りになってしまっている。最強になるどころかS級ヒーローとの格の違いを見せつけられているだけだし、民間人のジェノスに助けられる始末だ。とてもふがいない。

 

 このままでいいのか?いいわけがない!

この戦いが終わってから訓練する、なんて甘いことは言っていられない。ぷりぷりプリズナーのようにこの場で進化してでも今ここで超高速戦闘に対応してみせる!そうじゃないと、頂点を目指す資格がない。僕は無力な僕自身を許せなくなる!

 

「いきます……!」

 

 僕はあえてバリア―を張ることをやめて、自ら命を投げ捨てるように激闘の死地へと飛び込んでいった。

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