タツマキの弟子は頂点に行きたい   作:さよならフレンズ

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僕と高速戦闘と決着

 覚悟を決めて戦場のまっただ中に歩き出した僕の姿は他のヒーローからは亀のように鈍く見えただろう。自分の目で追いきれない戦いに参加するんだから無謀にもほどがある。だけどまだ決着がついていないということは、超阿修羅カブトに通る攻撃の決め手がないということ。ジェノスの攻撃が通用していない時点でどのみち僕がどうにかするしかない。

超阿修羅カブトの攻撃に対応するためには殺気に反応するだけじゃ足りない。カンと反射神経、摩擦の僅かな音も重要になってくる。

 

 五感を超えて超能力も含めた六感で対応してみせる!

 

 音がひときわ激しくなった地点で立ち止まって唾を飲み込んで棒立ちになっている僕が、最初の一撃を超能力で防御できたのは死神の鎌を幻視したからだった。無挙動で張った10センチほどの四角形のバリア―が、超阿修羅カブトの攻撃からしっかり僕を守ってくれている。

僕は内心ガッツポーズをした。一番厳しい最初の1撃をしのいだ。バリア―の面積を狭くする変わりに、そも強度は増している。普通のバリア―なら砕かれていたであろう超阿修羅モードの剛腕を受け止めることができた。

 

 金色に輝く超阿修羅カブトの姿は拳を突き出した姿勢で一瞬止まったけれど、舌打ちと共にまたブレて見えなくなる。僕が速度を見切れていないだろうから手数で圧倒する作戦みたいだ、だけど僕にとっては好都合。

 

 2撃目、3撃目と同じく小さなバリア―で防いでいくにつれて、僕は次第に高速戦闘から身を守る術を学習していった。全く見えなかった超阿修羅カブトやフラッシュたちの姿がコマ送りのようにぶつ切りではあるけれど、少しずつ見えるようになってくる。

ぷりぷりプリズナーみたいに、戦いの窮地の中で適応できているんだ。

 

「これならなんとかなりますね……!」

 

 1つ分かったことがある。超阿修羅カブトは忍者に匹敵するスピードは持っているしそれはかなりの脅威だけれど、搦め手を使ってはこない。さっきのソニックの煙幕みたいになにをしてくるか分からない忍者よりは怖くない。あくまでも速さだけを得ていて技術をトレースする方法を知らないあたりが人工的に作られた怪人の限界なのかもしれない。

 

 コマ送りになった戦闘の様子を見てみると、やっぱりフラッシュもジェノスもソニックも数の優位は取っているものの、超阿修羅カブトの剛腕を刀で受け流すのが精一杯みたいだ。

この中で一番火力があるジェノスの攻撃でさえ、超阿修羅カブトは余裕の表情で装甲で跳ね返している。だけど、僕が注目したのはその装甲の硬さそのものだった。もし本当にカブトムシを模した怪人なら、背中内部の防御力はプリンのように脆いはず!

 

 今の僕の必殺技は敵の動きを止める頂点動力死、バリア―の防御を鋭い刃に転ずる頂点念防刃。土砂の攻撃はきかないだろうからこの中の2つに限られてくるけれど、敵の攻撃が見えるようになった今なら似たような技で超阿修羅カブトを倒すことができる。

 

「しぶとい忍者どもは後だ!てめえは俺の攻撃を防御しているようだが、まぐれだろ!」

 

 しびれを切らしたのか超阿修羅カブトのまぶしい金色が、再度フラッシュたちから離れて僕の方に向かう。僕はヘッドギア越しに目をカッと大きく見開いた。コマ送りになっている超阿修羅カブトの動きが、一瞬だけ滑らかなものに戻る。

 

「げぶっ……!?」

 

 高速で動いているからこそ、回避できない攻撃がある。僕が空中に力を込めると超阿修羅カブトの背中が『内側』から破壊された。振り上げた拳を振り下ろすこともできず、超阿修羅カブトの体は高速で地面に叩きつけられて、すりおろされた林檎のように赤い血を地面に残す。

 

 超阿修羅カブトは必死に踏ん張って四肢に力を入れて立ち上がろうとするけれど、金色の体は茶色に戻っていて、もうそれもできないみたいだった。

 

「なにが起こったんだよ……!?」

「背中の柔らかい装甲内部に、超能力の力の塊を置いただけです。高速で動いている分内部からバラバラになりましたね」

「たかが超能力者が俺のスピードを完全に見切ったのか……!」

 

 超能力による内部破壊は普通のアニメやバトル漫画ではありえない。強すぎるし戦いが一瞬で終わってつまらないからだ。

だけどこれは現実だし僕が求めているのは最強であり、誰にも負けない圧倒的な力だ。むしろ一瞬で敵を倒せるのならこれほど強い力はないだろう。

強力な怪人であっても内臓が脆いことには変わりない。

 

「僕を舐めていたようですが、僕はヒーローの頂点を目指しています。僕が覚悟を決める前に僕を倒すことに集中すべきでした」

 

 超阿修羅カブトの脳が、超能力の塊に包まれる。僕が脳をいじるとジタバタしていた体は弛緩して、動作を停止した。

 

「なんとかなりましたね……!」

 

 僕は汗をぬぐう。紙一重の戦いだった。僕が覚悟を決めてバリア―に頼るのをやめなければ打つ手がなく全員負けていただろう。

超阿修羅カブトの心音が完全になくなったのを確認して、フラッシュ達も殺気を解く。

 

「ふん、あの高速の戦いについてこれるとは思わなかった。防御をといて歩き始めた時は、わざわざ死ににきたのかと思ったぞ」

「あそこで適応できないようなら、死んでもいいと思っていましたから」

「無謀だがこの俺でさえ倒せなかった相手だ、悪くない判断だった」

「ありがとうございます!」

 

 ぷりぷりプリズナーの時もそうだったけれど、S級ヒーローに認められるというのは自分が成長できている実感があって悪い気分じゃない。

 

「周囲に生体反応はないようだ。フラッシュ、捕えられた後どうなった」

「解放されてから、状況を把握してなにやら俺とソニックのデータをとっていた首謀者のジーナスにはしっかりとどめをさした。治療されていた忍天党とやらの首領は万全ではなく逃げたようだな」

「そういえば、ソニックが消えましたね」

「お前がとどめをさした瞬間大きく表情を歪ませて、離れていった」

 

 賞金首ではあるから、決着がついたら逃げるのはおかしくない。一応一時的には共闘した間柄だし改めて戦うのも抵抗があったから、よかったと思うべきだろう。

もちろん次に会った時には捕えるけれど、恨まれてないことを祈る。

それよりもここから忍天党の首領との連戦にならなかったことに僕は安堵していた。

ブラストの道筋は辿れなかったけれど、ここからさらに戦うのは辛すぎる。

 

「とにかく決着はついた。俺の救助にきてくれたことには礼を言わなければならんな」

「世話になったから、借りを返しただけだ」

「ヒーローは同士です、気にする必要はありませんよ!」

 

 戦闘態勢をといた僕たちの表情は少し緩んだ。僕はヒーローの頂点を目指しているけれど、ヒーローそのものは味方だし敵対するつもりはない。

 

「もう進化の家に用事はないですし、下山しましょう」

 

 あたりはいまだに僕の土石波で荒廃しているし、凸凹の激しい地面を無理して登山する必要はない。

同じ考えなのだろう、フラッシュとジェノスは軽く頷いた。

視界の端で筋肉の鎧を砕かれて震えているクロビカリは、見なかったことにしてあげた。僕に声をかけられても気まずいだろうし、立ち直ってくれることを祈ろう。

 

 こうしてアマイマスクの任務を無事こなした僕は、課題をこなしついに数日後S級ヒーローになる。新たについた名前は『恐怖のギアスパー』。フブキやタツマキ師匠にちなんでいるのかもしれない。

 

とにかくここからが僕にとっての新たなスタート地点。最強を目指す僕の戦いはまだ続く。

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