タツマキの弟子は頂点に行きたい   作:さよならフレンズ

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師匠とアマイマスク

「S級2位のタツマキが僕に会談を申し込んでくるなんてね。どういう用事なのかな?」

「アンタがヒーロー昇級に関わっているのを知らないと思ってるのかしら?」

 

 アタシ、タツマキはA級1位のアマイマスクと画面越しに話をしていたわ。

女をたらし込むどこか胡散臭い奴だけれど、今はこの男に直接聞くのが手っ取り早い。

アマイマスクがもし、あのハゲについての情報を知らないんだったら正体がC級以下もしくは独自でヒーロー活動をしている者というふうに絞られるからよ。

C級以下ならある程度有名になっているでしょうから、独自でヒーロー活動をしているという見方を強めていこうと感じているわ。その場合でもヒーロー協会においてある程度の権力を持っているアマイマスクはなんらかの役にはたつでしょう。

 

 だけどアマイマスクは、アタシの話を聞いて溜息をつき、どこか残念そうな表情を浮かべていたわ。それから生意気にも子供に話しかけるように窘めてきたの!

 

「戦慄のタツマキ、キミがギアスパーという弟子のエスパーを気にいっていることはよく知っている。彼をB級に昇格させて欲しいんだろう?」

「……は!?」

 

 顔に血が上っていくのが自分でハッキリ分かったわ。正直なにを勘違いしているの、としか思わなかったわね。でもアマイマスクはアタシが反論する間もなく呆れたように、さらにアタシの怒りを煽ってきたわ。

 

「僕からはっきりいわせてもらうが満足に力を使えないヒーローをB級にするつもりはない」

「あの超能力の強力さは一部分ではS級ヒーローを凌いでいるが、ヒーローはいつでも怪人を倒せるようにしておく必要が……」

 

 勘違いで呆れられていてアタシはもう我慢の限界だったわ。怒りで超能力が暴発した時みたいに頭から血が噴き出しそうだった。

アタシは机を大きく叩いて苛立ちを隠そうともしなかったわ。

机は軽くへこんでいたけれど、この弁償代もアマイマスクに払ってもらうとしましょう!

 

 流石にアマイマスクもアタシの怒りに気付いて黙ったみたいね。すこしは気分が晴れたわ。

 

「アタシがいつそんな雑魚のことを昇級してくれってアンタに頼んだかしら?」

「……これはとんでもない誤解をしてしまったかな、悪かったね」

「分かって頂いて、とても嬉しいわ。もう少しその甘い顔に脳みそを詰め込んでおきなさい」

「なんだと?」

 

 いつの間にかアタシとアマイマスクはピリピリした剣呑な雰囲気になっていたけれど、いつものことね。今回は明確に相手のほうが悪いことだし。

アタシは気にせずに本題に入ることにしたわ。

 

「アタシがこの前退治したことになっている怪人のことだけれど」

「A市を壊滅させた怪人名ワクチンマンの件だったのか。それで?」

「あの怪人は相対した時、今までの災害レベル竜の怪人の中で一番強力だと感じたわ」

「竜の中でも脅威はトップクラス中のトップクラス。もちろんアンタじゃ倒せないレベルね」

 

「……」

 

 アマイマスクが災害レベル竜を単独討伐したことがないということは調べてあるのよ。

黙り込むアマイマスクを小バカにしたアタシはいい気味だと思ったわ。

 

「そのワクチンマンを倒したのはアタシじゃないわ。世間一般ではあたしってことになっているけれどそれは勘違い。白いマントに黄色いヒーロースーツのようなものを着ているハゲの男よ」

「なるほど、そのヒーローを探してほしいという依頼という訳だ」

「アンタに覚えがないのなら独自にヒーロー活動をしているのかもしれないわね。アタシの見立てでは、その男の実力は最低でもS級上位レベルはあるはずよ。なんせ拳の一撃で倒したのだから」

 

 アマイマスクはようやくアタシが会談を望んだ理由が理解できたのか、軽く得心したように頷いていたわ。興味を示してくれたみたい。この男とアタシの考え方は、ある程度近いものがあるのよね。

 

「災害レベル竜以上の怪人を単独で撃破できるようならば、ヒーロー協会にとっても大きな戦力となることは間違いないだろう。分かった、僕の方でそのヒーローとやらを捜索してみることにしよう。場合によっては即S級に昇格することも考えておく」

 

 どうやらアタシの要件は済んだみたいね。間抜け面のままワクチンマンを粉砕した謎の男の正体を暴かない限りアタシは納得できないわ。

あの捕らえようのない表情が抜け落ちた表情を思い出すとイライラしてくるのよね。

 

「相変わらず対人関係が排他的なキミが他人にそこまで興味を持つなんて、キミが捜索を頼んだヒーローは相当に強かったのだろうね。僕もそのヒーローに出会えるのが楽しみになってきたよ」

「強さは力よ。そして力がなければこの世界で生き延びることはできない。そうでしょう?」

 

 アタシが語気を強めると、ようやくアマイマスクはほんの少し表情を崩したわ。

もしかしてアタシのポリシーに共感でもしてくれたのかしら?

そんなものはいらないのだけれど。

 

「最後の最後だけ考えが合ったようだね。噂のヒーローに関しては発見次第キミにも詳細を伝えておくとするよ」

「しっかり頼んだわよ。じゃあね」

 

 あまりいけ好かないこの男と長く会談するつもりはなかったからアタシは足取り荒く会談室から退室しようとしたけれど、アマイマスクはその前にアタシの心をかき乱すかのように問いかけてきたわ。

 

「キミも忙しいだろうから、僕がかけあえばギアスパーへの指導も終わらせることができるだろう。後から師弟関係を持続したいか途中で放棄するか選んでくれ」

「……」

 

 アタシは返事を返すこともなく、バタンと乱暴に音を立ててドアを閉めた。

失礼なことをしたとは全く感じなかったわ。アタシの方がそもそもヒーロー協会での地位は上だしアマイマスクもアタシをS級ヒーローから下ろすなんてことはしないでしょうから。

 

 ワクチンマンを倒したヒーローにも興味深々だったみたいだし放っておいても大丈夫でしょう。無理やりS級2位から下ろそうとしてくるのならば、むしろアタシがあいつをA級1位から叩き落すぐらいのことをしてもいいかもしれないわね。

 

 それにしても……。

アタシはギアスパーのことをどうしたいのかしら。

グングン成長していくから鍛えがいがあるっていう訳でもないし、惰性で師弟関係を続けていてもいいことはない、とは感じていたの。

アマイマスクには痛い所をつかれた形になったかもしれないわね。

 

(このままでいいのかしら)

 

 ギアスパーのことはなぜか放っておけないとは感じているし、嫌いではないと言える。

けれどなんでアタシはそう思っているのか、アタシ自身がよく分かっていないわ。

だからどうしても、モヤモヤとしてしまう。

 

「一度、しっかりギアスパーの真意を確かめる必要があるかもしれないわね。彼がS級を目指していることは知っているけれど、正直それ以外のことはなにも分かってないわ」

 

 ワクチンマンを倒したヒーローのこと、弟子のギアスパーのこと。

普通の怪人退治のヒーロー活動とアタシのやるべきことは多いわ。

それに加えてB級で妙な派閥を作っている妹のフブキの動向も気になるトコロね。

あいつらはむしろ妹の成長を邪魔している気がしてならないわ。

一度怪人相手に痛い目を見た方がいい気さえしてしまう。もちろんフブキは無傷でなければいけないけれど。戦いはアタシ1人で十分。

 

 もしフブキとギアスパーが顔を合わせたらどうなるのかしら。ちょっと想像ができないわね。

ウマが合わずに喧嘩になるかもしれないし、ギアスパーが丁寧に敬語で対応して争いにはならないかもしれない。

アタシは様々な妄想を膨らませながら、アマイマスクと会談をしていた建物の窓から飛び去ったわ。

だってイメージ力ってエスパーには大事でしょう?

 

 あれこれ考えていて自分でも気が付いていない間に、アマイマスクから提案されていたギアスパーとの関係の解消の件については、無意識に頭から抜け落ちていたわ。

 

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