タツマキの弟子は頂点に行きたい   作:さよならフレンズ

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僕とサイタマ

「いたた、メンタルがダメージです」

 

 タツマキ師匠との特訓を終えた僕は足に力が入らないままZ市を散策中だ。

僕の住んでいる場所はB市の近くなんだけど、たまには遠くを歩くのも悪くない。

空を飛んでショートカットができる僕ならではの考えだろうけれど。

 

 マルゴリ、フケガオの兄弟との一件が終わってから師匠の特訓時間が大幅に増えた。

東京タワーより遥かに大きい質量の巨人を弾き返したのだから、万が一にも僕の超能力が暴走したら困るとヒーロー協会が懸念したのかもしれない。とにかく僕は疲労を隠しきれなかったんだ。

 

「すー、はー」

 

 深呼吸して息を整えながら周辺を見渡したら、とある人物が目に飛び込んできた。

その青年は黄色いヒーロースーツに白いマント。そしてハゲた頭をしていた。

いでたちを少し遠くから見た僕は、ピンとひらめくものを感じた。

既にヒーロー協会から捜索依頼が出ている、師匠が探していた人物かもしれない。

これは確かめなければ!確認しなければならないので、僕は青年に大声で呼び掛けることにした。

 

「そこのお方、ストップです!」

「なんだ?俺になんか用か?」

 

 僕の呼びかけに反応した青年は体をぐるりと回して僕に向き直った。

どことなくコイツめんどくせえな、と思われてるように思える。

近くで青年と顔を合わせているとなんというか、威圧感というものが欠片もない表情だ。S級ヒーローとは正反対の印象を受ける。本当に師匠が認めるような強さを持ち合わせている人物なのだろうか。

 

 とにかく僕は先に確認することにした。人違いの可能性は十分にあるだろう。

オーラの違いを考えるとむしろそうにしか思えない。

 

「あなたは個人で怪人退治をしていますか?」

「ああ、俺は趣味でヒーローをしているサイタマという者だ」

 

 サイタマと名乗った青年はどこか誇らしげだった。どうやら師匠が探していた人物に間違いがないらしい。それなら実力は災害レベル竜に匹敵するということになる。

僕はゴクリと喉を鳴らして慎重に接触することにした。

周辺の人々が僕たちを見てひそひそと話をしている。僕はヘッドギアをつけているしサイタマは恰好が変だから不審者同士だと思われても不思議じじゃない。涙が出そうだ。

 

 僕は気を取り直してサイタマに質問をぶつけることにした。

 

「どうしてヒーローを名乗るならヒーロー名簿に登録しないんですか?」

「ヒーロー名簿?なんだそりゃ」

 

 僕は思わずずっこけそうになった。どうやらサイタマはヒーロー名簿の存在もヒーロー協会の存在も知らないらしい。世間に関心がないのだろう。どれだけ無知なんだろうか。

でも地位に執着していなさそうな所はS級に似ているかもしれない。

とにかく僕が説明をする必要がありそうだ。

 

「ヒーロー名簿を管理しているのはヒーロー協会なんですが、そこに登録しないとヒーローと国から認められません。モンスターを倒しても評価されませんよ」

「別に趣味でやってるからいーけど、国から認められねーのか。ちょっとやだな」

 

 サイタマはあまり気乗りしなさそうだけど、一応興味を示してくれたみたいだ。

僕の言動しだいでサイタマがヒーロー協会に入るかどうか決まるかもしれない。

ここでサイタマを逃がしたら、師匠にも怒られるかもしれない!

 

「サイタマさんの強さなら、好待遇で迎え入れられるはずです」

「めんどくさそうだな」

 

 地位や名誉には興味がなさそうであり、サイタマは難色を示している。これはまずいかもしれない。僕はどうしようかと途方にくれた挙句……泣きつくことにした。

 

「お願いします、今サイタマさんを他のヒーローが探しているんです。悪いことにはなりませんので僕を助けると思ってついてきて下さい。ヒーロー協会まで案内しますので」

「お前かなり困ってるらしいし、しょうがねえな」

 

 僕の必死な説得にサイタマはなんとか折れてくれた。僕がほっと一安心したのは言うまでもないだろう。

本当に寿命が縮むかと思った……。

 

 僕は話がまとまったので、道案内しながらサイタマと会話することにした。

師匠やアマイマスクさんが強く関心を持つ人物だ。僕も興味がある。

もしかしたらその強さの秘訣を聞けるようになるかもしれない。

 

「サイタマさんは光の球を放つ怪人を倒しましたよね」

「ああ、一撃で強さは分かんなかった。ちょっと期待していたんだけどな」

 

 どうやらサイタマは、好敵手を求めているようだった。これだけの強さを持ち合わせているんだから不思議はないかもしれない。強敵がいない苦しみは、僕には分からない。むしろ今僕は最強を目指す立場だからだ。

 

 少しだけ気まずい沈黙が流れる。

 

「サイタマさんは、その力を持ってどう思いました?」

「つまんねーって感じた。世界の全てがつまらねえって」

 

 僕は軽く苛立ちを感じたけれど、ここで怒っても単なる八つ当たりにしかならないだろう。

だから僕は聞く方向性を少しだけ変えてみることにした。

 

「じゃあサイタマさんは、今の強くなった自分からまた弱くなりたいと思っていますか?弱くなれば戦闘がつまらなく感じることはない筈です」

「……弱くなれねーから、考えたことはなかった」

「もし弱くなれたとしたら、でもかまいませんよ。ドリームです」

「……」

 

 サイタマは神妙な顔をしだした。どうやら真剣に考えているようだった。

やや間があって、サイタマは僕に返答をしてくれた。

 

「なんか、やだな。俺も必死にトレーニングしたし」

「そうでしょうね」

 

 僕は立ち止まって、サイタマに振り向いた。そして高らかに目標を告げる。

この人には嘘をつきたくないとそう感じたから。

 

「僕、ギアスパーは最強を目指しています。その先に退屈があったとしても僕は目指したい。

どんな怪人も倒せて、危険から皆を救えるヒーローになりたいんです」

 

 少しの沈黙が流れたが、サイタマはボーっとした表情を崩さない。

一体なにを考えているのやら、僕には全く読み取れなかった。

 

「そっか、がんばれよ」

 

 軽い感じで返事を返してきたものの、僕の信念をサイタマは笑わなかった。

それどころか僕がそうなるのを待ち望んでいるようににかっと笑みを零した。

 

「それはそうと案内はしっかり続けろよ?」

「はい……!」

 

 僕は慌てて再び前を向き、小走りに道案内を続けた。

サイタマも小走りに欠伸をしながらついてくる。

僕とサイタマの考えは違うし実力は遠いけれど、それでも。

 

 僕は頂点を目指し続けることをふたたび心から決意したんだ。

 

 僕の案内でヒーロー協会に辿り着いたサイタマは、すぐにアマイマスクさんが見守る中試験を受けA級2位になる。そして名前は広まってサイタマはZ市から住居を移動。ヒーロー協会本部のA市に住むこととなった。

その結果様々なことが起こったのだけれど、それは後のお話。

 




・キングがS級にいない
・サイタマすぐにヒーローになり、知名度そこそこ
・サイタマA級2位
・サイタマA市に住む

原作との違いを箇条書きにするとこうなります。
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