タツマキの弟子は頂点に行きたい   作:さよならフレンズ

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僕とアマイマスクと新たな任務

 あの死闘から数日。新聞に目を通して僕はZ市の情報を探していた。

 

「悲惨な事件でしたね」

 

 Z市の危機が過ぎ去ったけれど、それはあくまで人々の命の大半が無事だっただけだ。

災害レべル鬼4体、竜1体が同時に襲撃してきたんだから当然被害は大きい。

特に、暴れまわるムカデ長老の姿は人々に大きなトラウマを植え付け、結果的にZ市に住民は全くいなくなってしまった。

結局あの事件の全貌は地底王が地震を強めていった結果地面に住んでいたムカデ長老が暴れ出したというもので、蚊の大軍のほうは自然発生した怪人らしい。

地底王の方は駆動騎士が、蚊の怪人の方はフラッシュが相手をして圧勝したと聞いてる。

ニュースを見て駆けつけたのは僕たちだけじゃなかったってことだろう。

 

「今日はアマイマスクさんに呼び出しがあった日でしたっけ。行きましょう」

 

 直接呼び出されたことは今までなかったから、アマイマスクは僕を見極めようとしているんだと思う。ブラストさえ倒せなかったムカデ長老を撃破したのだからいよいよ無視できなくなったのかもしれない。少なくとも普通のヒーロー活動はしているからC級の今より悪くなることはないと考えれば安心できる。僕は身だしなみを確認し、心を落ち着かせてヒーロー協会本部に足を進めた。

 

 数分後僕はヒーロー協会本部内で、特徴的な青い髪と有名な美形の整った顔を見つけることができた。

 

「キミがタツマキの弟子のギアスパーか」

「よろしくお願いします」

「悪い案件で呼び出してはいないから、ある程度は気を楽にしていい。きみのその真面目さをタツマキも少しは見習うといいんだが」

 

 僕は画面越しということもなく、直接アマイマスク本人がくるとは思わなかったから少し緊張して声が上ずってしまった。アマイマスクが気にしていないようで安心したけれど。

アマイマスクの表情は硬くて、よく僕を観察しているみたいだった。

 

「話は単純だ、僕はキミのランクを上げて、B級ヒーロー以上に昇格させようと思っている」

「光栄です」

「希望の順位を言って貰ってもいいかな?それともA級以上に上がりたいかい?」

 

 

 アマイマスクの表情が僅かに鋭くなった気がした。

どうやらアマイマスクは僕を試している。僕がどのくらい向上心があるかも含めて僕という人物を見極めようとしているみたいだ。なら話は早いだろう。僕はここで志を曲げるつもりはなかった。

あれから超能力の調子もいい。今の僕ならあの地位が相応しいはずだ。

 

 

「では、僕はS級を希望します」

「随分と贅沢な奴だ、遠慮というものを知らないと見える」

「僕の超能力は安定してきています。客観視しても僕はS級に相応しいはずです。

 アマイマスクさんが僕をB級に置いたとしても、僕は必ずS級に上がりますが」

「前言撤回しようやっぱりキミはタツマキの弟子に相応しいようだ。とはいえ今の自分が相応しい位置を分かっているのなら……いいだろう」

 

 

 僕はかなりずけずけと言ってしまったけれど、僕の強い意志を聞いたアマイマスクは表情を緩めて少し安心したみたいだ。どうやら僕の遠慮のなさがいい方向に働いたらしい。

 

「マルゴリの撃退、ムカデ長老の撃破等の実績を加味してギアスパー、キミをS級最下位に昇格させるよう進言しよう」

「ありがとうございます!」

 

 僕は心の中で大きくガッツポーズをした。目標の1つであるS級に昇格することがやっとできた。思わず表情が緩みそうになった僕をアマイマスクは強くたしなめた。

ヘッドギアをつけていても、僕の気のゆるみはアマイマスクに筒抜けだったらしい。

分かりやすかったのは気をつけないと……。

 

「S級ヒーローになるということは、それ相応の責任も伴う。A級以下のヒーローの模範になるような『圧倒的な力』を持ち続けることだ」

「分かりました、これからはそう心がけます」

「口だけならどうとでも言える。本当に理解をしているのかな……?今のキミには大きな課題が1つ残っているからね」

「……?」

 

 僕はなんのことだか分からず怪訝な表情を浮かべたれど、アマイマスクはあいまいな薄い笑みを浮かべるだけだった。何を企んでいるんだろうか、今の僕には分からなかった。僕が自分の課題に思い悩んでいると、アマイマスクは唐突に話題を変えてきた。

 

 

「話が変わるけれど、今現在閃光のフラッシュが行方不明になっていることは知っているかな?」

「ヒーロー協会内部で話題になっていましたので、噂だけは知っています」

 

 スキンヘッドの軍団が暴れまわっていたという話はあったけれど、それもいつの間にか収まっていたことだし、今のヒーロー協会の大きなニュースはそれだろう。

S級が行方不明になるという事態になることは今までなかったから、他のヒーロー達は皆衝撃を受けていたし動揺が広まっていた。

 

「それなら話が早いな。フラッシュの任務遂行の速さを加味すると、未だに連絡がない以上怪人に敗北した可能性が高い。

他の忍者が関わっているのかもしれない。S級を1人つけるからキミにこの案件を任せる」

「フラッシュの探索任務を了解しました」

「この事件をうまくキミが解決するかどうかで、本当にキミがS級になれるかどうか決まることだろう。無様な姿を僕に晒さないことだ」

 

 アマイマスクの口ぶりは重々しい。S級での戦闘力上位のフラッシュが敗北したのだから、犯人はかなりの実力がある人物に違いない。これも災害レベル竜以上の案件な気がする。

実質的な僕のS級昇格試験だ。失敗は許されない。

僕は気合を入れて強く気を引き締めた。

 

 それから1時間後、僕は集合地点で相方として送られたS級ヒーローを待っていた。

 

「合流地点はここかな」

 

 地図を確認する。待ち合わせ場所は間違っていないみたいだ。しばらく僕が待機していると、大きな人影が僕の前に姿をあらわした。黒くツヤツヤな筋肉を持つあのヒーローの特徴に当てはまるのは1人しかいない。僕は再び戦闘力上位のS級ヒーロー相手に緊張しながらもにこやかに呼び掛けることにした。

 

「待っていました、超合金クロビカリさん」

「お前がギアスパーか。フラッシュが敗北するとは余程の緊急事態のようだな。俺の筋肉の鎧が躍動する時がきたようだ」

「主犯と思われるのは、確か進化の家という宗教団体でしたっけ」

「どうやらフラッシュはソニックという人物の救出に向かったらしいが、詳細は不明だな。進家の家のアジトは忍者を雇ったらしく、警備が見抜かれてしまう。気を引き締めて向かうとしよう」

「進化の家と忍者が手を組んでいるんですね……?」

 

 僕はクロビカリと襲撃計画を進めながらも、背筋に冷たい汗が流れていく気がしていた。

アマイマスクが僕に言った課題という意味がようやく分かったからだ。

今までの敵はマルゴリ、ムカデ後輩、ムカデ先輩、ムカデ長老という大柄な敵が多かった。逆に言えば攻撃を見切るのが簡単だったということでもある。

けれども今回の敵はそれとは真逆の高速で移動し攻撃できる忍者たちだ。

僕の身体能力は他のS級ヒーローと違って並でしかない以上、超能力を発動する前に殺されればひとたまりもないんじゃないか……?

 

「これは今回の任務も、デンジャラスブリッジですね……!」

 

 それでも、やられっぱなしじゃヒーロー協会の面子が丸つぶれだ。なんの切っ掛けか手を組んでしまった進化の家と忍天党という2つの新しい脅威に僕達は立ち向かわなくちゃならない。

 

 これがソニック、フラッシュの救出作戦の始まりだった。大きな怪獣から小さな人間へと、僕の戦う相手は移り変わっていく。

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