ガンダムビルドファイターズ AMBITIOUS/スピンオフ・ワンダフルジャーニー 作:マフ30
自由気ままにやっていきますので、どうかご容赦ください。
メインキャラ達は作者の別作品のパラレルキャラとなっているのでそちらの方もご了承ください。
私たちが暮らすこの世界はきっと平和で悲しいこともあるかもだけど、楽しくて幸福なことが多い世界なんだと思う。
だけど世界の国も、身分もすっかり几帳面に整理されてしまっていて馬鹿げた夢を見るには少し息苦しいと思うかな。なりたい職業:王様とかはとてもじゃないけど無理そうだしね。
だけどね。
あの箱庭に広がる世界は平原も海洋も大都市も星の宙の遥か彼方までだって、誰の物でもないんだよ。みんなの夢が見果てぬ旅を続ける理想郷さ。
だから、そう――私たちとキミの三人の天下だって頑張れば手に入るんだ。
どうだい。すっごく面白そうに思えてきただろう?
まずはキミの相棒を探そうか。
そうだよ。私たちとは別の絆で結ばれていく、もう一人の大切な相棒だよ。
よく考えて、よく迷うと良いよ。
キミが作る、キミだけの、キミの夢を拓く力。
キミや私たちの分身であり、半身と言っても過言じゃない小さな巨人なんだからね。
いつかの昔、一人の少年と一組の双子の姉弟が馬鹿げた夢を見た。
笑っちゃうくらいに馬鹿げていて、素晴らしい夢の旅路を歩き始めた。
この先に続く誰かにも同じような見果てぬ夢を見せるために――。
※
『ガンプラバトル』
十年前に発見されたプラフスキー粒子と呼ばれる粒子によって生まれた新時代の娯楽。
プラフスキー粒子とはガンプラにも使われているプラスチックにのみ反応する粒子で、外部から粒子を流体的に操作することで普段は動かないガンプラに命を吹き込む。
ガンダムビルドファイターズシリーズのアニメ作中の世界に負けず劣らず、ガンプラバトルは世界中に愛好者がおり、世界大会も毎年開催されている。
その優勝者は、愛用したガンプラとともに名前を全世界へ轟かせる。これは、そんな世界で繰り広げられるガンプラバトルに熱き魂を燃え上がらせる人々の物語。
今回の物語の舞台は日本の中部地方。
深く豊かな森林と澄んだ清流に恵まれたここ岐阜においても、ガンプラバトルの熱狂は中央や他の地方に負けることなく賑やかに盛り上がっている。
「いらっしゃいませー♪ お好きな席へどうぞ」
とある町にあるガンプラカフェ・メリッサという一軒の喫茶店がある。
店内は昔懐かしいモダンな部屋作りと天井から架けられた大きな液晶モニターやガンプラバトル用の筐体や各種グッズや雑誌が破綻することなく配置されていて、憩いの空間となっていた。
休日のお昼時を過ぎたと言うのに少なくないお客たちが店主自慢のコーヒーや軽食をお供にガンプラについて語らったり、自慢の愛機を見せあって楽しげな一時を過ごしていた。
「ご注文はお決まりでしょうか? 当店自慢のナドレ風イタリアンなんておススメですよ!」
新たに店に入って来たバイカー風の三人組の若い男性客に褐色肌の見目麗しい外国人と思わしき店員がオーダーを窺う。黙っていれば神秘的な顔立ちだが、女性店員は人懐っこい猫のような陽気で騒がしい物腰で初対面ではギャップに驚かざるを得ない。
「あーそれなんですけど、ガンプラチャレンジって頼めますか? SNSの書き込みでこのお店知って、わざわざ来てみたんですよ!」
「店員さんにガンプラバトルで勝ったら、食べ放題なんですよね? 思い切ったサービスしてるんですねー!」
「俺ら、これでも地元で負け無しなんですよ? お店の売上赤字にしてオネーさんに嫌われないか心配っスよ」
三人組の一人がどこか不敵な様子で答えた。仲間の二人のニヤつきながら、軽口を叩いている。どうやら彼らもガンプラファイター。それも腕に覚えのある者たちのようだ。
「もちろんでございます! いまなら注文の波も落ち着きましたのですぐにご用意できますとも! お三方ー! 挑戦者のお出ましですよ!!」
黒いベストと揃いのパンツスタイルのウェイトレス――胸元のネームプレートには『クー』と書かれている彼女は男たちの軟派な態度をサラリと流すと弾むような大声で他のお客たちにも知らせるようにチャレンジャーの来襲を同僚たちに知らせる。
するとまずはホールで女性客の話し相手をしていた赤毛の男性店員が三人組のテーブルへと近付いてきた。
「いらっしゃいませ、お客様。この度はガンプラチャレンジへの挑戦、誠にありがとうございます。バトルの前にこちらの注意事項をご確認ください。お相手を務めさせていただきますアマカゼ・ハルカと申します」
そう名乗った少年は右目が前髪で隠れがちなクールな雰囲気の美男子といっても遜色のない顔立ちをしていた。更に堂々と落ち着いた態度で挨拶をするとB4サイズのルールブックを差し出した。
「ど、どうも。あはは、お兄さんイケメンだねー、歳いくつ?」
「高二です。アルバイトでして」
「え……嘘でしょ」
「恐れながらマジでございます。いえ、失敬」
ハルカの大人びた物腰に三人組の一人が驚くが当の本人は軽くおどけながら涼しい顔を崩さない余裕に満ちている。
「お待たせしました、強そうなお兄さん方。今日は素敵なバトルが出来るようにお互い頑張りましょうね」
「遠路はるばるありがとうございます。清く正しく
そして、残るメリッサ側のファイターの二人もバックヤードから姿を現すと挑戦者である三人組はこれから自分たちが戦うメリッサの従業員たちの放つプレッシャーに思わず気圧されてしまった。
現れたのはオレンジの髪をサイドポニーに纏めた快活な雰囲気の美少女と灰色の髪に色の薄いサングラスをした荒っぽい佇まいの少年だった。
少女の名前はアマカゼ・カナタ。ハルカの双子の姉で、もう一人の少年はアリスガワ・ムゲン。後から男たちが聞いた話だが三人とも中学以来の親友たちなのだと言う。
「では、お客様ご自慢の愛機のご用意をお願いします。我々チームメリッサが正々堂々とお相手を務めさせていただきます」
「私のこと本気で倒しにきてくださいね! いっぱいサービスしてあげますので♪」
「カナタ、意味深な言葉やめなさいってば。健全大事!」
冷静沈着に淡々としているハルカ。
爽やかだがどこか黒いオーラを放つカナタ。
見た目とは裏腹に穏やかで善良そうな物腰のムゲン。
個性豊かなチームメリッサのメンバーに面食らいながら彼らと挑戦者の三人組は戦いの準備に入った。
「はは……お手柔らかに頼むよ、店員さん」
「クス。では、戦場で会いましょう」
負ければ店の売上大赤字だというのに余裕の態度なチームメリッサ一同に男たちはたまらず舌を巻いた。
そんな彼らにカナタは飛行機乗りよろしくゴーグルを装着して気合を入れると涼しげな笑みを見せて、仲間たちと共に筐体へと移った。
『Please set your GP BASE』
電子音声に従いGPベースをガンプラバトルの筐体、バトルシステムに接続する。
GPベースにガンプラの状態やこれまでの戦績が記録されている。
青い粒子がガンプラバトルのフィールドを形成していく。
戦いの舞台となるのは雨が降る市街地だ。
さながらケンプファー・アメイジングとジムスナイパーK9の名勝負が繰り広げられたガンダムビルドファイターズ第18話を思わせるバトルフィールドだ。
「風格はあるが相手は学生だ。技術も経験も俺たちの方が勝ってるに決まってる!」
「油断せずにいくぞ」
「おうよ! こいつに勝って、店のメニューを食べ尽くすんだ!」
挑戦者たちは気を引き締めながら既に準備完了しているチームメリッサに続いて、GPベース上に愛機のガンプラをセットしていく。
夢が詰まった叡智の箱庭に立った六体の小さき巨人たちに命が吹き込まれていく。
「アリスガワ・ムゲン! グレイズ・アッシュ! Lets Play!!」
「アマカゼ・カナタ! エアマスター・シャドー! Take Off!」
「アマカゼ・ハルカ。エアマスター・フラッシュ。出撃する」
三つの声が木霊して、颯爽とムゲンたちチームメリッサの愛機たちが起動する。
カタパルトから黒と白のファイターモード形態のガンダムエアマスター・バーストの改造機と灰色のグレイズ・アインが発進していった。
吹きすさぶ雨風を裂いて二機が悠然と空を飛行して、地上では無骨な機兵が力強く街路を駆ける。
こうして、今日もまたチームメリッサの夢への旅路の歩が進む。
さあ! 戦いだ!!
「それでどう攻める、カナねえ?」
「ふむ。ハルくんのフラッシュはBタイプ装備にしているよね」
「ああ。このフィールドはお世辞にも視界が良いとはいえない。視覚を攻めるにはもってこいだ」
「だよねー……それじゃあ、暫くは
「任せとけ!」
敵チームと遭遇する間にアマカゼ姉弟は短い会話で作戦プランを組み立てる。
更に通信で二人の僅かなやり取りを聞くだけで彼女たちが何を企てているのか把握するムゲンと、三人は本格的な戦闘が始まる前から抜群のチームワークを見せていく。
「今日も元気に大暴れといこうじゃねえか!!」
「当然♪ いくよ、二人とも! チームメリッサ! GO AHEAD!!」
「ハハッ……アイコピー!」
カナタによる勝利を掴むための気合の号令が告げられて、三機は進撃の速度を上げていった。
※
一方で挑戦者たちが操る三機のガンプラもまたよく訓練された動きで連携を取りながら雨模様の空を飛行していた。リーダー機は紫のカラーリングとネコ目が特徴的なザンスカール帝国のMSザンスパイン。
SDガンダムGジェネレーションシリーズ出典のオリジナルMSのリアル等身仕様だ。その背後を赤い粒子を放ちながら格闘特化と射撃特化に改造された二機のGN-Xがついて進行していくとやがて彼らは雨空を飛ぶ白い機体を発見した。
「いたぞ! 白いエアマスター……それも単機とはな」
「見かけに寄らず猪突猛進だな。悪いが落とさせてもらうぜ」
ザンスパインのレーダーにも反応しているのは一機のみ。
リーダーである男の指示で三機はビームライフルとGNビームライフル、GNランスによる先制射撃を開始した。やや低空を飛行していたエアマスター・フラッシュは浴びせられる弾幕を鮮やかに回避しながら敵機へと接近する。
「野郎突っ込んでくるぞ?」
「正気かよ! エアマスターでか!?」
未だにMS形態にもならずにガンガン自分たちとの距離を詰めていくエアマスター・フラッシュに男たちが戸惑いを感じているとついにチームメリッサが動いた。
「さて、オレたちの戦いをお見せしましょう」
エアマスター・フラッシュのブースタービームキャノン部分を改造した換装型の特殊砲マルチタクティクスキャノンから一発の閃光弾が発射されて、四機の周囲を強烈な光が包んだ。
「うお……眩しッ!?」
「搦め手を……クソ。攻撃に備えろ! あいつは何処だ?」
「いたぞ、上空だ!」
機体ではなくファイターである人間の目を攻めてくるというまさかの攻撃に驚きながらも男たちはお互いを庇い合いながら体勢を立て直した。
「へへ……下手打ったな、白いの。逃げずに撃ってれば相打ちで一機ぐらいは落とせたかもしれ――」
臙脂色の射撃型GN-Xが逃げるように上昇するエアマスター・フラッシュにビームライフルの照準を定めた時だった。
「クック!?」
「なんだと!? う、後ろからだって?」
GN-Xのバックパックを斜め下の方角からバスターライフルのビームが撃ち抜いた。
何が起きたのか分からないまま飛行機能を損傷して地上に落下していくGN-Xを横切って黒い機体が戦場に躍り出た。
「私のサービス、お気に召していただけました?」
ゴーグルの奥の瞳が冴えた光を放ち、口元は薄っすらと闘志に満ちた半月を作る。
GN-Xに手傷を負わせた射撃はカナタが操る変幻自在の俊影、エアマスター・シャドーのものだった。
「そんな……あり得ない!? なんでレーダーに二機分の反応がある!? 遅れて接近してきたのなら補足するのに……魔法みたいに何もない所から現れたって言うのかよ!」
「まさかワープ? いや、ガンダムシリーズにそんなデタラメな技術はないはずだろ!」
「「特別に種明かしをお見せしましょう」」
男たちは味方が地上へと落とされたことよりも唐突に出現したもう一機のエアマスターの存在に動揺した。しかし、アマカゼ姉弟によるマジックの種明かしを魅せられて、動揺は直ぐに驚嘆へと変わる。
「ザンスパインのティンクル・ビットは厄介だ。使われる前にこっちから仕掛けるぞ、カナねえ」
「心得た。撃ちまくるよ」
白と黒のエアマスターは華麗な曲芸飛行を行いながら相手チームと一度距離を取るとフラッシュの機体下部にシャドーが重なるような背面飛行で突っ込んできた。これが魔法のように忽然と出現したシャドーのトリックだ。
フラッシュとシャドーはその状態でグルグルと回転しながらビームを乱射して反撃を開始する。
「最初から……敵は二機で飛んでいた!?」
「ふざけんな!? 一歩間違えば接触事故で共倒れみたいな飛び方でずっと動かしていたのかよ!!」
彼らの驚きも無理もない。
悪天候による視界不良を活かした戦法ではあるが何よりもこれはカナタとハルカの弛まぬ訓練で培われた卓越した操縦技術と阿吽の呼吸を揃えても尚、危険なギャンブルに変わりはなかった。
「あんたも地上へご招待だ」
「ぬおぁ!?」
ザンスパインと緑色のGN-Xも決死で踏み止まり応援するが機動力を活かしてドックファイトを徹底するアマカゼ姉弟の猛攻を防ぎきれずにフラッシュに背後に回られてしまう。
初めて可変してMS形態になったエアマスター・フラッシュは牽制のバスターライフルでGNビームライフルを撃ち抜くと敢えてスラスターを切って自由落下を行う。
宇宙空間とは違う重力のある空中だからこそ出来る移動方法で好位置を制すると真下からのノーズビームキャノンで同じようにバックパックを破壊した。
「ぅぉおおおお……ベネットの兄貴! 下のグレイズを俺とクックで倒して援護に回るまで持ちこたえてくれ!!
「クッ……エンリケスまで! や、野郎ぶっ潰してやるぅううう!!」
墜落しながらもチームリーダーにエールを送る仲間の声に気合をもらったザンスパインのファイターは獣のような唸り声を上げて果敢に反撃を試みた。
「おっと! あのザンスパイン、特異な改造はしてないけど完成度は高いな」
「ホント、予想以上の高性能。でもお兄さんたち一つだけ勘違いしているんだよね」
エアマスター・シャドー/フラッシュの波状攻撃を光の翼で無理やり突破するとティンクルビットとビームライフルによる一斉射撃で怯ませる。
他県から挑戦しに来ただけあって、彼らのビルダーとしての実力の高さは本物だとカナタたちも認めるところだった。
だが――。
「地上は2VS1で有利だと思っているらしいがそれは誤算だ」
「お兄さんの仲間たち……すっごく恐い目に遭ってると思うよ?」
「な、なんだって?」
※
その頃、地上に不時着した二機のGN-Xはもう一機の相手であるグレイズ・アッシュを探して臨戦態勢で市街地を探索していた。
「あのデカい図体だ。探せばすぐに見つかるはずだ」
「一気に袋叩きにしてリーダーの支援に戻らねえとな!」
空の戦闘で射撃武装を殆ど潰されてそれぞれGNビームサーベルとGNランスを構えたGN-Xたちが十字路の中心に差し掛かった時だった。遠くから機関銃の激しい銃声が聞こえた。
「ッ!? 近づいてるぞ!」
「背後を守り合うんだ」
建物が破壊され崩れ落ちる音がだんだんと近くなっていく。
先程までやかましかった雨音が破砕音にかき消されていく。
相手とのエンカウントが迫る事実にGN-Xのファイターたちに緊張が走り、奇襲に備えようとした時だった。
「いらっしゃいませええええ! お客様ぁああああああ!!」
目の前のビルが崩落したかと思うと粉塵の中から灰色の狂戦士が弾丸のように肉薄してきたのだ。
グレイズ・アッシュは野獣を彷彿とさせる驚くべき前傾姿勢で猛突進すると巨体と堅牢な装甲を武器とした体当たりで一体のGN-Xを吹き飛ばした。
「カナタとハルカの相手は骨が折れただろう? 俺は単純明快なやり方だからよ、安心してくれよ!!」
「ま、まさか何の考えもなしに乗り込んでくるなんて!?」
「殴って蹴って斬り合って! 最後まで立ってた奴の勝ち! 分かりやすくて最高じゃねえか!! シンプルにいこうぜ!!」
戦士の咆哮が湿っぽい街の空気さえも吹き飛ばすようだった。
青くアレンジを施したモノアイを爛々と輝かせてムゲンが操るグレイズ・アッシュは雄々しく専用の大型アックスを二挺構えるとGNランスを振るうGN-Xと火花を散らしてぶつかり合う。
「なんだよ、この滑らかな動き……いくら元ネタが阿頼耶識積んだMSだからって、ヒイィイイッ!?」
「いくぞ! いくぞ! いくぞ! いくぜええええ!!」
光球の操縦桿を掴むムゲンの指に力が入る。
瞬きすらも忘れる集中力で愛機を全霊で操り、神経を研ぎ澄ませて戦いに没頭する。
阿頼耶識システムを再現したかのような生々しい動きで大型アックスを振り回すグレイズ・アッシュの怒涛の斬撃の前にGNランスはチョーク棒のようにあっという間に砕け散り、片腕も斬り落とされてしまった。
「く、来るなぁああ! 来るな! うおぁあああああ!!」
「なら! お望み通りにしてやるよ!!」
「ふぉあっ――!?」
グレイズ・アッシュの鬼気迫る戦いに錯乱状態になったGN-Xのファイターは無我夢中でGNバルカンを撃つが無駄な足掻きだ。
対して、戦意が天井知らずとばかりに上がり続けるムゲンは軽やかな動作でグレイズ・アッシュをジャンプさせると相手に正面から肩車するような格好で飛び乗った。
「そらよぉおおおお!!」
なんとグレイズ・アッシュは
GN-Xは放物線を描きながらグルグルと回転しながら飛んでいくと高層ビルに激突して壁にめり込んでしまう。
「トドメいくぞ! トマホォォォォクブゥ―――メランッ!!」
コクピット内のタッチパネルと幾つか操作しながらムゲンは相手に容赦のない追撃を決める。グレイズ・アッシュが大きく両腕を振り上げて投げ放った二挺の大型アックスはキレのある弧を描いてGN-Xに直撃して爆散させた。
「まずは一機か……で、だ!」
「いい気になるなよ! MF気取りが!!」
赤い粒子をぎこちなく振りまきながら臙脂色の機影がGNビームサーベルを突き立てて肉薄してきた。無手になった両腕でギリギリ受け止めたグレイズ・アッシュだったがあと一歩まで迫ったビームの切っ先が灰色の装甲を僅かに溶け焦がす。
「腰のビームトマホークは抜かせねえ! このまま串刺しだぜ!」
「すげえ馬力だな。それによく気付いたなあ、お兄さん。ハハッ、にしても良いガンプラだ……俺のグレイズ・アッシュなんかよりもずっと出来が良いんだろうな」
「当然だ! ベネットリーダーもクックも、俺だって青春の全部をガンプラに捧げてきたんだ!!」
生きている各スラスターを全開に吹かして食い下がるGN-Xとそのファイターの気迫にグレイズ・アッシュはジリジリと後退していき、ついには片膝を付いてしまう。
「だろうな。認めるよ、モデラーとしちゃあ、俺はあんたらに負けるかもだ。けど――!!」
「ぬ……おおおっ!?」
「『戦い』に関しちゃ並の相手には負けてねえさ!!」
万事休すと思われた状況からグレイズ・アッシュは反撃の狼煙を上げる。
脚部のドリルキックの機構を片足立ちの状態で使用して、地面を抉り砕きながら相手を巻き込んで機体を独楽のように高速回転させ始めたのだ。
「こんなの……機体がバラバラになっちまう! 正気かよ!?」
「イカれてるかもな! けど、これで形勢は逆転だ。オラァアアア!!」
予想もしない方法で窮地を脱したグレイズ・アッシュはGN-Xに今度は振り回した勢いを利用してプロレス技のスタナーを決めて追い込むと間合いを調整。
そして、勝利を掴み取るために右腕を高々と天へと突きあげた。
「とっておきをぶっ食らわせてやるぜ!!」
「何をするつもりだ? シャイニングフィンガーか? いや、あれは……まさか、そんな!?」
パイルバンカーを排しているグレイズ・アッシュの右腕に桃色のビームが光輪状に発現する。操縦者であるムゲンの魂が乗り移ったかのように勇ましく雄叫びを上げて、灰色の狂戦士は輝く右腕を振り上げて猛烈に駆け出した。
これが雌雄を決するぶつかり合いだと悟ったGN-XもGNビームサーベルを構え直して迎え撃つ。
「ふざけんなよ、プロレス野郎……ッ! 俺は地元の大会でも優勝したことだってある、お前なんかが敵いっこねえ! 敵うわけね――」
「オオオオリャア!! ビームラリアットだッ!!」
勝負は一瞬だった。
GNビームサーベル諸共に激しいビームの奔流を豪腕に纏ったグレイズ・アッシュの横薙ぎがGN-Xを豪快に粉砕した。
チームメリッサの撃破数はこれで二機。
敵機だった残骸から噴き上がる火柱に照らされた灰色の巨兵は静かに勝利の残心を取りながら親友たちの勝利を待ちながら曇天の空を見つめていた。
※
上空での戦いも最終局面へと突入していた。
ビットにライフル、ストリングスと持ちうる武装を乱れ撃ってがむしゃらな攻勢を続けるザンスパインの砲火をエアマスター・シャドーとフラッシュはアクロバット飛行を交えた連携攻撃で着実にダメージを与えていく。
「クッ……卑怯だとは思わないのかお前ら! これはガンプラバトルだぞ! それをチョロチョロ蚊みたいに飛び回ってばかり! パイロットごっこがしたいならラジコンでも遊んでろよ!」
来店時の余裕はどこへやら。
ザンスパインのファイターである男は一向にMS形態になって戦わない二人に悪態をつくぐらいに精神的にも追い詰められていた。
「お客様相手に無礼かと思いますが……ガンプラは自由だ。こういう遊び方もあるって証明して何が悪いんだ?」
マルチタクティクスカノンからグレネード弾を撃ち出しながらフラッシュを駆るハルカが冷淡に男の文句をバッサリとはね退ける。
「確かにガンプラと言えばガンダム。二足歩行のMSと誰もが思うでしょう。だけど、MAを愛する人もいれば戦車やバクゥといった変わり種を好む人もいます。そうじゃないです?」
続けて、バスターライフルの速射四連と共にカナタの持論がザンスパインのビットの残機全てを撃ち落とす。
「きっと、俺たちみたいに可変機……それもMA形態をメインに世界に挑んだ人だって先駆者がいたはずだ。途中で夢破れただけでね」
「だから、私たちがそのいまは邪道かもしれない異端の道を最後まで切り拓くんですよ。どうせ長い夢の旅路なら誰も進んだことのない道を……いや、新しい道を作ってみた方が面白いとおもいますしね!」
シャドーとフラッシュが重ね合わせるように放った二条のノーズビームキャノンの一撃がザンスパインが鎧のように身に纏わせていた光の翼をついに貫く。
「野郎ぉおおお!! お前らなんか……お前らなんか怖かねえんだああああ!!」
「カナねえ、決めろ! 援護する」
「OK!」
自棄になったザンスパインはビームファンを抜いてせめて一機でも撃破しようと二機に向かって特攻を仕掛けた。
二機のエアマスターは散開してそれを回避するとフラッシュが何発もの閃光弾を撃ち出して相手の周囲を旋回。その間にシャドーは雲を突き抜けるほどに上昇すると照準をザンスパインにロックして一気に急降下を開始する。
「どこへ行きやがった! お前たちの翼なんて俺のザンスパインが斬り落としてやる!」
「面白いこと言いますね。では……勝負といきましょう」
鈍色の空を疾風のような黒影が駆ける。
流星のように、稲妻のように真っ逆さまに地上へ向けて一直線に飛んでいく。
「――チェスト!」
エアマスター・シャドーがザンスパインと交錯するようにすれ違う刹那、その両翼に隠されたビームサーベルが光の刃を伸ばして目にも止まらぬ早業で相手の機体を撫で斬りにして見せた。
【BATTLE ENDED】
最後に残ったザンスパインも撃破が確認されて店内にはバトル終了のアナウンスが鳴り響き、六人の戦いをモニターで観戦していたお客たちからは地鳴りのような歓声が木霊した。ガンプラカフェ・メリッサ名物のガンプラチャレンジ、本日の勝者はチームメリッサに決まった。。
「言い忘れていましたけど、私の翼は狂暴なんです♪」
一歩間違えば自滅必死な危険はスクランブルを難なく成し遂げて優美に愛機を飛ばしながらカナタはピースサインを添えて、涼しげな微笑みを挑戦者たちへと送った。
※
「いや~今日のバトルもお見事でしたねお三方!」
「ありがとうございます、クーさん。でも、まだまだオレたちも精進あるのみですよ」
「今回は上手く作戦がハマりましたが実際あのお兄さんたちのガンプラの完成度は目を見張るものがありましたからね」
「ファイターとしての実力も本物だろ? 空の戦い見直したけど、ビット操りながらよくもまあ、あんなに動けるぜ。俺にゃ無理だ」
「ムゲンはビット使うよりもGNファングとか手で持って振り回す方が得意だろうからね」
営業時間が終わり、静かになった店内で楽しく雑談しながらカフェ・メリッサの面々はほのぼのと後片付けを行っていた。
「でも、この感じならお三方のチーム本当に全国制覇も夢じゃないんですか?」
「いやいやいや……流石に世の中そんなに甘くはないさ」
「そうですかねえ? いまでもチームメリッサは公式大会の岐阜県代表ほぼ内定ですし、本物だと思うんですけどね」
「そう言ってもらえると嬉しいですけど、星涼学園のシンヤ・レイカさんみたいに本物の傑物は俺たちがまだ知らないだけで全国に大勢いますよ」
「私たちみたいなダークホースや超新星はどこからでも現れるからね。この娘みたいにさ」
今日の勝利を喜びながらも、彼らは慢心することなくまだ見ぬ強敵たちに思いを馳せる。
そんな中でカナタが一冊のガンプラ専門誌をカウンターに置いて表紙を飾る一人の仮面をつけた少女を見つめた。
「名古屋に現れた風雲児。仮面の美少女ガンプラファイターねえ」
「仮面で容姿が分からないのに美少女っていう表現はナンセンスだと思うが……宣伝なんてそんなものか」
「レディ・テングー……お隣在住のようだし、一度会いに行ってみるのも面白いかもね」
カナタの言葉にムゲンとハルカもニヤリと飢えた肉食獣のような危険な笑みを浮かべた。
破天荒なアウトロースターな双子と灰髪の狂戦士の如き少年はこれからも我が道を往くだろう。それがいまは邪道となじられても、茨の道であったとしても。
その道が彼らにとって面白きに満ちた夢の旅路である限り。
チームメリッサ・ガンプラデータ。
『グレイズ・アッシュ』
パイロット:アリスガワ・ムゲン。
グレイズ・アインをベースにした灰色のカスタム機。
防御力と機動力の底上げを行い、より白兵戦特化に仕上げている。
最大の特徴は両腕のパイルバンカーを排して、ガンダムAEG-1タイタスのビームラリアットを使用できるように改造してある。
阿頼耶識システムによる生物的な挙動とパイロットの趣味を反映した荒々しい攻撃とMF顔負けな格闘技を駆使して戦う。またビーム系格闘武器対策に追加武装としてサザビーのビームトマホークを腰部に携行している。
反面、射撃戦に終始されると殆ど何も出来なくなってしまう脆い一面も存在する。
武装
専用大型アックス×2
ビームラリアット×2
肩部格納式40mm機関銃×2
ドリルキック
ビームトマホーク
専用サークルシールド
『エアマスター・シャドー』
パイロット:アマカゼ・カナタ
ガンダムエアマスター・バーストをベースにした黒いカスタム機。
ブースタービームキャノン部分をマルチタクティクスキャノンと呼ばれる二連装砲型の兵装と換装出来る改造が施されている。
実弾のガトリングガンになっているタイプA/閃光弾とグレネード弾を発射するタイプB/電磁ネットやダミー、コンテナ型マイクロミサイルなど作戦に対応した自作特殊弾頭を発射するタイプCがある。
また当機には両翼にビームサーベルが取り付けられており、ファイターモード時に敵機をすれ違いざまに切り裂くといった白兵戦が可能。
パイロットの意向により基本的にファイターモード(MA形態)で運用されることが多く、戦闘機さながらのドッグファイトをメインに試合を展開する。
武装
ヘッドバルカン
ノーズビームキャノン
ブースタービームキャノン×2
バスターライフル×2
ビームサーベル×2
マルチタクティクスキャノン×2
スモークディスチャージャー
『エアマスター・フラッシュ』
パイロット:アマカゼ・ハルカ。
エアマスター・バーストをベースにした白いカスタム機。
武装や改造部分などは殆ど姉のカナタが駆るシャドーと統一されている。
マルチタクティクスキャノンは主にフラッシュが搭載して運用される場合が多い。
シャドーが攻撃に重きを置いているのに対してこちらは防御を重点としており、装甲の強化及び小型のプラネイトディフェンサーを装備している。
シャドー同様にMA形態による空戦をメインとした運用をされるがハルカの技量によりMS形態も多用して臨機応変で柔軟な戦闘を繰り広げる。
武装
ヘッドバルカン
ノーズビームキャノン
ブースタービームキャノン×2
バスターライフル×2
マルチタクティクスキャノン×2
プラネイトディフェンサー×4
スモークディスチャージャー