白銀のヒーローソウル【WEB版】   作:鴨山兄助

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Page58:波を合わせて

「おらァ!」

 

 レイは侵入時に破壊した箇所と同じポイントに向けて魔力弾を撃った。

 再生を終えていた幽霊船の天井が、轟音と共に爆散する。

 風穴の空いた天井から闇夜が見えてきた。レイはコンパスブラスターを棒術形態《ロッドモード》に変えてマジックワイヤーを射出、巻き戻し、一気に幽霊船の外へと脱出した。

 

「よっと」

 

 強い潮風が魔装にぶつかる。

 辺りを軽く見渡せば、鎧装獣化したゴーレムとローレライが幽霊船と戦闘をしている真っ最中だ。その衝撃で足元が大きく揺れる。

 だが揺れは戦闘によるものだけではない。

 

「ォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

 幽霊船の頭部からガミジンの叫び声が聞こえる。

 だがそれは今までのものとは異なり、苦痛に満ち溢れたものであった。

 恐らく、バハムートが抵抗してくれているのであろう。

 

『レイ!』

 

 ふと、下からアリスの声が聞こえてくる。

 レイが下を覗き込むと、巨大な耳を羽ばたかせたロキが待機していた。

 

『乗って』

「サンキュー、アリス!」

 

 幽霊船から離れる手段がなかったレイは、これ幸いとロキに飛び乗った。

 レイが背中に乗った事を確認したロキは、すぐさま幽霊船から距離を取った。

 

 距離を取った事で、全体像が見えてくる。

 幽霊船対ゴーレム(オリーブ)ローレライ(マリー)

 兵器としての破壊力が強いせいか、バハムートが抵抗してなお苦戦しているのはマリー達だ。

 すぐにでも応援に行きたい、しかし鎧装獣になれない自分では碌な戦力になれない。その事実がレイの心に重く圧し掛かる。

 

『レイ、メアリーの魂は?』

「あぁ、それならちゃんと回収できたぜ」

『じゃああの幽霊船、制御を失ってアレなんだ。厄介』

「そう……だな……」

『どうしたの?』

 

 ロキの背中で蹲るレイに、アリスが心配の声をかける。

 

「大丈夫……大丈夫なはずだ」

 

 レイは左胸を強く握る。

 幽霊船で出会った黄金の少女。彼女から教えられた【指輪】なる力。

 その力でメアリーを救出できたは良いが、魂の牢獄を抜けてからずっと、レイの魂は疼きを上げっぱなしであった。

 未だ得体の知れない力の濁流に、レイは若干の恐怖を覚える。

 だが今はそれを抑えねばならない。

 必要な事はメアリーの魂を再び奪われないようにする事。そして幽霊船を撃破する事だ。

 

「……待てよ」

 

 魂の疼きを抑え込もうとした矢先、レイの中にある一つの閃きがあった。

 脳裏に浮かぶのは何時かメアリーに言われた「波が合っていない」という言葉。

 そもそも何故自分とスレイプニルは「波が合っていない」と言われたのか。

 何故波が合わなかったのか。

 この極限の状態で妙に頭が冴えていたレイは、一つの答えが浮かび上がっていた。

 

「アリス、メアリーの魂を預かっててくれ」

『いいけど、何かするの?』

「あの蛇野郎をブッ飛ばす」

 

 そう言うとレイは手に持っていたメアリーの魂を、ロキの口に放り込んだ。

 

「スレイプニル」

『なんだ』

「俺、目に見える範囲は全部救いたいんだ。父さんがやってたように、誰も悲しませない為に」

『だが全てがお前の考えているようにいく訳ではないぞ。あの牢獄に囚われている者達の魂には帰るべき肉体がない』

「わかってる。大事な事はさっきスレイプニルに教えてもらった」

『……』

「命を救う事が重要なんじゃない。本当に必要なのは魂を……心を救う事だって」

『……そうだ』

「スレイプニル、俺はバハムートを、牢獄の中にいる人達の魂だけでも救いたい。だから……半分力貸してくれ」

『我に合わせられるか?』

「合わせにいく。だからスレイプニルも俺に合わせてくれ。お互い目的は一緒だろ」

『そうだな』

 

 レイはグリモリーダーを手に取る。

 

「(指輪の力が、魂を繋げる力だってんなら……俺とスレイプニルの魂も繋げてくれよ)」

 

 左胸に意識を集中させる。

 すると牢獄内部の時と同じように、波紋が広がるのをレイは実感した。

 波紋は急速に体内に広がり反響する。

 レイは自分の魂とスレイプニルの魂が繋がる瞬間を感じ取った。

 

『レイ、この力は……』

「黄金の曰く、魂を繋ぐ力だってさ。俺達の波を合わせる補助には丁度良いだろ」

 

 波紋の反響が繰り返される。

 次第にレイの呼吸とスレイプニルの呼吸が合わさっていく。

 

 目的は同じ、その為に成功させたい事も同じ。 

 お互いの魂を、お互いの心を一つにする。

 波紋の反響は徐々に激しさを増し、それに比例するようにレイはスレイプニルと波が合わさっていくのを感じた。

 ならば後は、行動に移すのみ。

 

 レイはロキの背中から勢いよく飛び降りた。

 潮風を切る音が騒がしい中、レイはグリモリーダーの十字架を操作した。

 

「融合召喚! スレイプニル!」

 

 グリモリーダーから白銀の魔力《インク》が放たれ、巨大な魔法陣を描き出す。

 体内で魔力が急激に加速し、レイとスレイプニルの肉体急激に混ぜ合わさっていく。

 混ざれば混ざる程に、魔法陣から巨大な銀馬の像が紡ぎ出され、レイの肉体が金属化した魔獣のものへと変化し始めた。

 

『「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!』」

 

 魔法陣が消え、白銀の光が辺りに弾け飛ぶ。

 

 そこには、二振りの大槍を携えた獣がいた。

 そこには、勇ましきスラスターを備えた戦騎がいた。

 そこには、雄々しき一本角を輝かせる鎧装獣がいた。

 

 ゴーレムやローレライの視線は一瞬にしてその存在に集まる。

 それは闇夜の中で光り輝く勇姿、鎧装獣スレイプニル降臨の瞬間であった。

 

『これ……できたのか?』

「あぁ。我々は確かに融合を果たし、鎧装獣へと進化出来たようだ」

 

 融合している状態というのは、実に不思議な感覚であった。

 身体は浮遊感に包まれており、四肢の感覚もあやふや。

 視界はスレイプニルの見た物を頭に伝達されるような形で入ってくる。

 だが不思議と不快感はない。むしろ暖かくて心地よいものを感じていた。

 

「ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

 余韻に浸る余裕など与えない。

 そう言わんばかりに、幽霊船頭部のガミジンは咆哮を上げる。

 

「さぁ……くるぞ!」

 

 スレイプニルがそう言った矢先、幽霊船は砲門とバリスタの照準をこちらに合わせて、一斉掃射してきた。

――弾弾弾弾弾ッ!!!――

 凄まじい音と共に大量の砲弾と矢が飛来してくる。

 だがスレイプニルは一向に避けるそぶりを見せない。

 

『おいスレイプニル! 弾! 弾来てる!』

「この程度の攻撃に回避の必要はない」

 

 空中に鎮座したまま、スレイプニルは全ての攻撃をその身に受け止めた。

 着弾した砲弾が轟音と共に爆破を連鎖させていく。

 姿が見えなくなるほどの煙に、マリーとオリーブは一瞬の絶望を覚える。

 

 しかしそれは杞憂だった。

 立ちこめる煙の向こうから一振りの風が巻き起こる。

 

『レイ君!』『レイさん!』

 

 払われた煙の奥からは、金属化した身体にかすり傷一つついていないスレイプニルの姿が現れた。

 

「鎧装獣と化した今の我に、この程度の攻撃で傷を負わせようなど笑止千万」

『それ先に言ってくれ……俺の心臓に悪い』

「今度は此方から仕掛けるぞ」

 

 スレイプニルは後ろ半身に備わったスラスターを起動させる。

 スラスターの推進力に後押しされて、スレイプニルは一気に幽霊船との距離を縮めた。

 

「グァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

 飛んで火にいる夏の虫とでも思ったのか、ガミジンは咆哮を上げてスレイプニルをを砲撃する。

 しかし鎧装獣化した装甲の前には無力。スレイプニルは構わず距離を縮める。

 

「まずはその五月蠅い武装から狩らせてもらおうか」

 

 至近距離まで近づいたスレイプニルは、その雄々しき一本角に魔力を集める。

 構築術式は魔力刃生成と、念動操作。

 

「スラッシュ・ホーン!」

 

 スレイプニルが頭を大きく振るうと、角から白銀に輝く魔力刃が放たれた。

 魔力刃は止まる事も勢いを弱める事もなく、次々に大砲やバリスタを破壊していく。

 ものの数秒で、幽霊船はその身体に備えていた武装の大半を失ってしまった。

 

「オ、オノレェェェェェェェェェェェェェ!!!」

 

 ガミジンが怒号を上げると、幽霊船の胴体から巨大な肉の塊が生えて来た。

 ソレは細長く伸びると同時に瞬時に形を成していく。

 

『あれ、蛇の頭……アナンタか!?』

「恐らくは、水鱗王殿の肉を使って錬成したのだろう。不敬な」

 

 肉の塊は巨大なアナンタの頭部を形成するや、すぐさま大口を開けてスレイプニルに襲い掛かってきた。

 流石にこれは不味いと、スレイプニルは回避しようとする。

 だが……

 

『障壁展開!』

 

 スレイプニルの意思に反して、その身体から大規模な魔力障壁が展開された。

 アナンタの牙は目標に届く事無く、魔力障壁に突き刺さる。

 

『俺も一緒なの忘れるなよ』

「フッ、恩に着る」

 

 アナンタが魔力障壁に四苦八苦している隙に、スレイプニルは前半身に備えられた二振りの大槍『ショルダーグングニル』に魔力を溜め込む。

 そして魔力障壁を解除。

 アナンタの牙が再びスレイプニルに襲い掛かろうとする。

 

「ハァァァ!」

 

 スラスターの推進力を使って、アナンタに突撃するスレイプニル。

 そしてすれ違いざまに、その喉をショルダーグングニルで穿った。

 

「――――ジャアッッ!?」

 

 喉を半円形に抉られて悲鳴を上げるアナンタ。

 だがそれだけでは済ませない。

 

「一撃で終わると思うな!」

 

 スレイプニルは空中を縦横無尽に駆け巡りながら、すれ違う度にアナンタの身体を穿ち続けた。

 喉だけでなく顔さえも抉られて、アナンタの身体は一瞬にしてズタボロにされる。

 幽霊船との繋がりを根元から断たれて、アナンタの頭部は海に落ちてしまった。

 

『これが彼の戦騎王の力ですか』

『すごい……』

 

 その凄まじい戦闘力に、マリーとオリーブは思わず息を漏らす。

 強く、気高く、美しく、白銀の王はこの戦場に君臨していた。

 

「戦騎王、コノ程度デ、アナンタガ滅ビルト思ウナァァ!」

 

 再び幽霊船から肉の塊の蛇が生え始める。

 どうやらアナンタの本体はガミジンと融合済みらしい。

 ガミジンがいる限り何度でもアナンタはその再生能力を行使できるようだ。

 しかも今度は三体のアナンタが生え始めていた。

 

『おいおい、三体もかよ』

「狼狽えるな。冷静に対処すれば勝機はある」

 

 三体のアナンタは一斉に襲い掛かってくる。

 レイは急いで魔力障壁の展開をするが、正面への展開で精一杯であった。

 残り二体のアナンタが左右から噛みつこうとする。

 

『させませんわ!』

 

――弾ッッッ!!!――

 右のアナンタの頭部が魔力弾で吹き飛ばされた。

 ローレライの砲撃が直撃したのだ。

 

『パワーなら負けません!』

 

 左のアナンタは、その首をゴーレムの巨椀に掴まれていた。

 ゴーレムの凄まじい腕力を前に身動きが取れなくなっている。

 

『サンキュー、二人とも! スレイプニル』

「あぁ、承知しているさ」

 

 魔力障壁を解除。

 襲い掛かるアナンタをショルダーグングニルで貫き、葬る。

 そして続けざまに、左右にいたアナンタの首も切断した。

 

「ソノ程度デ止メラレルモノカァァァ!」

 

 更にアナンタの頭部を生やして追撃をしてくるガミジン。

 穿っても穿っても生えてくる頭部に、レイはキリの無さを覚えてしまう。

 

『クソッ、これじゃあキリが無い』

「どうやら本体を叩かねばどこまでも生えてくるらしいな」

『けどこの猛攻じゃあ、その本体に近づけないぞ!』

 

 無数に生えてくるアナンタの頭部を相手にして、マリーとオリーブも余裕がない。

 だが何かガミジンの隙を作る策を考えねば。

 

――さーかーえーよー♪ なーがーくによー♪――

 

 美しい歌声が海域に広がり始めた。

 

――ひーろーがーれー♪ なーがーうみよー♪――

 

 心が落ち着くような透明感のある歌声。

 レイはこの歌声に聞き覚えがあった。

 

「ナンダ、コノ歌ハ!? 身体ガ動カン!?」

 

 歌が聞こえ始めると同時に、幽霊船から生えていたアナンタはその動きを停止。

 船頭にいたガミジンも突然の事に混乱する。

 

――さーざーなーみー♪ なーをーいわいー♪――

 

 レイとスレイプニルはまさかと思い、後方で待機していたロキの方へと負向く。

 そこには口を開けたロキと、そこから聞こえるメアリーの歌声の姿があった。

 

「どういう事だ、何故ロキ殿からメアリー嬢の歌声が」

『そう言えばさっき、メアリーの魂をロキの口に入れたんだった。多分、ロキとアリスの身体を借りて歌っているんだと思う』

 

 レイはふとした思いつきで、魂から波紋を外に広げる。

 メアリーの魂に繋げるのは容易であった。

 そして反響し、戻って来た波紋にはメアリーの心の声が乗せられていた。

 

『わたしも……王さまや、みんなのために出来ることをしたい』

 

『できる事を、か……』

「メアリー嬢の言葉か?」

『あぁ、一緒に戦ってくれるってさ』

「メアリー・ライス、勇気のある少女だな」

『そうだな……だから』

「うむ、一気に終わらせるぞ!」

 

 メアリーの手はなるべくかけさせたくない。

 レイとスレイプニルの心がさらに重なり合う。

 救うべきは囚われた魂たち。

 討つべきはゲーティアの悪魔ガミジン。

 

 スレイプニルは幽霊船に向けて再び駆け出した。

 

「レイ、補助は任せる」

『言われなくても!』

 

 レイはスレイプニルの中で魔法術式を構築し、ショルダーグングニルに付与する。

 白銀の魔力を帯びた大槍が、次々と幽霊船の身体を斬り裂いていく。

 だがガミジンは抵抗の素振りを見せない、否、抵抗が出来ないのだ。

 メアリーがバハムートの制御呪言である歌を歌っていることで、バハムートと同化しているガミジンの身体も拘束されているのだ。

 

『オリーブ、マリー! 幽霊船の足を破壊してくれ!』

『はい!』

『了解ですわ!』

 

 レイの指示に従って、ゴーレムとローレライは幽霊船から生えている八本の鉄の足を攻撃し始める。

 

『インクドライブ! いっけぇぇぇ!』

『インクドライブ! 狙い撃ちますわ!』

 

 体内で魔力を急加速させた二人は、必殺の攻撃を幽霊船に浴びせる。

 ゴーレムは大量の魔力を帯びた拳を。

 ローレライは凄まじい威力の魔力砲撃を鉄の足に叩きつけた。

 

「グォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

 脚部を破壊されたガミジンが悲鳴を上げる。

 だが同情の気持ちは微塵も湧かない。

 それだけの事を、この男はしてきたのだ。

 

『まだまだァァァ!!!』

 

 駆け出すスレイプニル。

 拘束されてなおぐつぐつと生えようとしている肉の塊を、大槍で切り裂く。

 それも一つでは無い、全身で蠢いていた肉の塊を縦横無尽に駆け、切除した。

 

「ウォォォ!!!」

 

 そしてスレイプニルはショルダーグングニルを幽霊船に突き刺し、力任せにはるか上空へと打ち上げた。

 巨大な幽霊船が塩水の雨を降らせながら雲の上を突き抜ける。

 

「レイ、インクドライブのやり方は分かるか?」

『体内の魔力を加速させるイメージ、だろ?』

「その通りだ、任せるぞ」

『任された!』

 

 スレイプニルは上空に打ち上げられた幽霊船に向かって駆けあがる。

 そしてレイは身体中の魔力の流れを急加速させるイメージを浮かべた。

 鎧装獣の状態では獣魂栞を抜き差しする事が出来ない。

 故に、大技を発動する際はこのインクドライブが必要なのだ。

 

『「はぁぁぁぁぁぁ!」』

 

 スレイプニルの体内で膨大な魔力がその攻撃性を高めていく。

 レイは完成した攻撃エネルギーを全て、ショルダーグングニルへと付与させた。

 

 雲を突き抜ける。

 そこには上空で落下を始めている幽霊船の姿があった。

 そして……こちらの準備も万全となっっていた。

 

「ガミジン! この一撃は、貴様に凌辱された水鱗王殿の!」

『そして、テメェに殺された人たちの!』

「『怒りの声だと思えェェェ!!!』」

 

 二人の魂の震えが、スレイプニルの魔力を極限にまで高めた。

 

『インクドライブ!』

 

 ショルダーグングニルに纏われていた魔力が巨大な螺旋を描いていく。

 そしてそのまま、落下してくる幽霊船へと突撃した。

 

「『螺旋槍撃! グングニル・ブレイク!』」

 

 強大な螺旋魔力が幽霊船の身体を抉る。

 その傷口から白銀の魔力が侵入し、幽霊船の、ガミジンの身体を内側から破壊していった。

 

「ヌォォォ! 私ガ、私ガコノヨウナ所デェェェ、滅ビテナルモノカァァァ!!!」

 

 必死に抵抗するガミジン。

 だがもう無意味だ。

 

『ぶち抜けェェェェェェェェェェェェェ!!!』

 

 最大出力のスラスターの推進力。

 そして最大出力の魔力による攻撃。

 本気を出した王獣の一撃を、幽霊船如きが受け止める事は不可能であった。

 

「ヌゥゥゥゥゥゥゥオォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

 ガミジンの悲鳴が耳をつんざくが、構わず駆け抜ける。

 螺旋魔力によって破壊された船体は、あっけなく貫かれてしまった。

 幽霊船は大穴を開けられ、火花を散らす。

 

「さらばだ水鱗王よ。そして永遠《とわ》に眠れ」

 

 レイが構築した破壊術式が、一瞬の間をおいて炸裂する。

 破壊エネルギーが内側から爆発。

 爆発が爆発の連鎖を呼び、スレイプニルの背後で幽霊船は轟音を立てて爆散していった。

 

 粉々になった破片が海に落下する音が聞こえる。

 レイとスレイプニルは降下し、ガミジンが復活しないか様子を見る。

 

『……倒したのか?』

「だろうな。あれだけの攻撃を受けたのだ、ゲーティアの悪魔と言えどただでは済むまい」

 

 それならば良いのだが、レイは心配で思わず海を眺めてしまう。

 すると、海の底からポツリポツリと光の玉が浮かび上がってきた。

 

『これって……』

『魂の光、ですわね』

 

 オリーブとマリーにもその光は見えていた。

 幽霊船の中で見たあの美しくも儚い光の玉。

 それらが海面を超えて天へと昇っていく様子であった。

 

『すごいな……』

 

 思わず感嘆の声を漏らすレイ。

 暗い夜の海を照らし出す程大量の魂が、次々に昇っていく。

 それは、今まで見た中でも最大の規模であった。

 

『レイ』

『アリス……』

『きっとこれで終わり。だから心配しないで』

『……だな。これだけの魂が解放されてんだ。ちゃんと終わらせられたよな』

 

 スレイプニルの言葉に、肩の荷が下りるのを感じ取ったレイ。

 

 一同はしばし、天に昇って行く魂達を眺めるのであった。

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