魔法先生ネギま! 同室のお兄さんズ 作:ひろやん(すぴ出身)
第1話
side ユウ
「よし、準備完了」
焼きあがったケーキを箱に詰めると俺は1人そう呟いた。ここは麻帆良学園のクラブの1つ菓子総合研究会(通称菓総研)の部室だ。このクラブに所属している俺は今朝学園長から連絡を受けてゲーキを用意していたのだ。
「なに、なにユウくん、ケーキを持って何処行くの?」
俺がケーキを持って部室を出ようとするとクラブの娘が声をかけてきた。このクラブはお菓子を作るのがメインの活動なので女子が多い。その為男子の俺が変わった事をすると目だってしまうのだ。
「学園長から連絡が有って大切な客が来るからケーキを用意してくれって」
「ああ、ユウくんのケーキは美味しいからね」
自慢ではないが俺のケーキは美味しいと評判で人気が高い。菓総研で作られるお菓子は先生達のお茶請けや茶道部などのお菓子を必要としている所に届けられる。その為俺を始め何人かの部員にはリピータがついたり人気が有ったりする。
「え、大切なお客さん?もしかして学園長の義息子が来るの?」
俺達の話を聞いて他の娘達が話しに加わってきた。
「とうとうお義父さんに紹介される日が来たんだ」
「え、ユウくんが彼女のお父さんとご対面!?」
学園長に来客という話が女子達の手によって変な方に曲げられてしまった。俺は学園長のお孫さんと付き合っているので恋愛方面でも話題にされやすいのだ。
女子達がわいわい騒いでいるせいで部室から出られずに困っていると、不意にバン!と大きな音がした。音のした方を見ると初等部の『妹』が焼きたてのケーキを台の上に落としていた所だった。(誤解の無いように言っておくが、ケーキを焼いたとき台の上に落とすのは製法の1つとして実際にある)
麻帆良学園は小学校から大学までのエスカレータ式なので菓総研を始めいくつかのクラブ、部活は小学生から大学生まで一緒に活動している。だから中等部の俺と初等部の妹は同じクラブで一緒に活動している。もっとも最近は反抗期に入ってしまったのか俺の事を名前で呼んできたり、世話を焼こうとすると嫌がったりして同接すればいいのか悩んでいるのだが……
とにかく、皆の注意が『妹』に行った隙に俺は学園長室へ向かった。学園長室は何故か女子中等部の校舎の中にあって男子には敷居が高いが、俺はよく学園長にお菓子を届けているのでいつものように後者の中に入っていった。
「学園長、ユウです。ケーキを届けに来ました」
「うん、入りたまえ」
学園長の許可が出たので部屋に入ると、そこには学園長だけではなく学園寮で同室のであるパルジファル(愛称はパルジ、名前のとおり外国人で金髪碧眼の美形)がいた。
「よく来てくれた。ユウくんケーキはそこに置いておいてくれ。実はな2人にお願いしたい事があるのじゃ」
学園長は俺が部屋に入るとそう言った。どうやら目的はケーキだけでは無く他にも有るようだ。そして俺とパルジの2人を呼んだとすると用件は……
「そう、魔法生徒である2人を呼んだからには用件は魔法絡みじゃ」
魔法生徒……。この学園の生徒で見習い魔法使いの事をそう呼ぶ。この麻帆良学園は表向きは学園都市なのだが裏の顔として関東魔法協会という魔法使いの組織の拠点という顔を持っているのだ。
「とはいえもうすぐ木乃香達が戻ってくる。分かっておると思うが木乃香の前では魔法の話は禁止じゃぞ」
木乃香というのは学園長のお孫さんで俺とお付き合いしている子だ。れっきとした魔法使いの家の子なのだが父親の教育方針で魔法の事は秘密にしている。しかし祖父である学園長はその事を勿体無く思っているらしい。魔法生徒である俺とのお付き合いを黙認しているのはその為なのだろう。
学園長の言うとおりそんな話をしてすぐ木乃香さんが部屋に入ってきた寮で同室のアスナちゃんと一緒にもう1人…10歳くらいの男の子を連れている。
「学園長、ガキンチョ…もといネギ先生の案内をしてきました」
アスナちゃんは学園長にそう報告をした。それにしてもネギ…先生?
「ご苦労じゃったな。報酬はここにある」
学園長は報告を聞くと俺の持ってきたケーキを差し出した。
「やったー!木乃香、ユウさんのケーキよ!」
アスナちゃんは俺の作ったケーキを手にすると喜んで木乃香さんに声をかけた。
「アスナ、そのユウくんはここにおるで」
ケーキに目が言っていたアスナちゃんとは違い、木乃香さんは俺の事に気づいていたのでアスナちゃんにそう言った。
「え、やだ私ったら」
「気にしなくていいよ。ケーキの事をそこまで喜んでくれると俺も嬉しいし」
「そろそろいいかの、まだ話があるのじゃが」
恥ずかしそうにしているアスナちゃんにそう言うと、学園長が注目するように言った。学園長の方を向くと学園長はネギと呼ばれた少年を俺達に紹介した。
「木乃香達には説明したがこの子はネギ・スプリングフィールド。ワシの知り合いの紹介で中等部女子の先生をする事になったのじゃ」
「学園長!この子の歳は見た目どおりですよね?」
木乃香さんのクラスメイトには見た目と年齢が合わない娘が多いので念のために聞いてみた。
「そうじゃ、今10歳になる」
「10歳の先生を認めるのなら俺の大学部への飛び級を認めてください!」
俺がそう言うと俺が言った事が意外だったのか学園長を始め部屋にいた皆が拍子抜けした顔をした。
「普通、この歳で先生はおかしいとかツッコミをいれるじゃろ」
「…もう、諦めていますから」
学園長がそう言うと俺は学園長から視線をそらしてそう言った。
「そ、そうか(汗)まあいいじゃろ。じゃがお前さんの飛び級はご両親から学園生活を満喫させて欲しいという要望があるから駄目じゃ」
学力だけなら問題ないがのと続けながら学園長は俺の要望を却下した。
「話を戻すぞ。彼、ネギ・スプリングフィールドを先生として迎えいれたのじゃが10歳の少年を1人暮らしをさせるのは不安じゃ。じゃから3人部屋で2人暮らしをしておつ2人にネギくんの面倒を見て欲しいのじゃ」
「そういう事ですか。おれは構いませんけど、パルジは?」
そう言ってパルジを見ると、パルジは意外そうな顔をした。
「あの俺達が面倒を見るのですか。彼女達ではなくて」
「…最初はそのつもりじゃったのじゃが、ちと事情が変わってしまってな」
学園長は汗をかきながら半ば誤魔化すようにそう言った。このネギという少年には何か有るのだろうか。
「分かりました。面倒を見ることに問題はありません」
学園長の様子を不審に思いながらもパルジもネギくんの面倒を見ることに同意したのだった。
「では後は寮での生活についての話をするから木乃香とアスナくんは退室してかまわんぞ。ネギくんの案内ご苦労じゃった」
学園長の許可がでて木乃香さんとアスナちゃんは嬉しそうに部屋を出て行った。
「さて、それでは重要な話をしようかの。もう2人は気づいておると思うがネギくんは魔法使いじゃ。魔法学校を卒業して修行の為に日本にやって来た。ネギくんこの2人は魔法使いじゃ。まだ見習いじゃがネギくんの力になってくれるじゃろう」
「本当ですか。よろしくお願いします、お兄さん」
「ユウでいいよ」
「俺はパルジファル、パルジと読んでくれ」
「僕の事はネギと呼んでください」
俺達がそう言って自己紹介すると学園長が俺達の事をネギに説明した。
「この2人はネギくんに劣らない優秀な生徒じゃぞ。パルジくんは魔法世界で古くから続く名門の出で、優秀なエリートじゃ。対するユウくんは半年前に魔法の事を知りその僅か半年でパルジくんに並ぶほどの技量を身に付けた天才じゃ。この2人から学ぶ事も多いじゃろう。修行がんばるのじゃぞ」
「はい!頑張って一人前の、魔法使いになります」
それから今後の世活についていくつかの注意を受けた後俺達は生活の場である寮へと向かった。
「あの、お2人に連れて行って欲しい所があるのですが」
寮へ向かう途中ネギはそう言った。俺は携帯電話にメールが入ったので確認していたのでパルジがネギに返事をした。
「行きたい所?」
「はい、それはずばり聖地アキバです!」
「なんだって?」
「ですからアキバハラに行きたいんです。萌え系アニメ発祥の国日本。そこに住めるだけでも幸せなのにアキバに近いだなんて天国です。次の休みに連れて行ってください!」
尻尾があればブンブン振っていたであろうネギのはしゃっぎぷりにちょっと可哀想だと思いながら俺はネギにある事実を告げた。
「残念ながらそれは駄目だ。今学園長からメールが来て、ネギは仮採用期間中は学園都市から外に出てはいけないそうだ」
俺がそう言うとネギはこの世の終わりのような顔をした。
「そんな~。せっかく日本に来たのに!」
「ああ、このせいで俺達が面倒を見ることになったのか」
ネギの落ち込む顔とパルジの達観した顔が対照的だった。そしてこれから俺達はネギを中心とした騒動に巻き込まれる事になるのだが…。まあ、俺にとっては厄介ごとは日常茶飯事なので問題なかったりする。