〜ブッシュ森林・アルマ村〜
バッカス雪原の南に位置するバッカスシティ、そのさらに南に広がるバッカス平原を抜けた先にある、「ブッシュ森林」。
その奥地で、ひっそりとエルフ達が生活する「アルマ村」では、二人のハーフエルフが、いつもと変わらず木の実を採っていた。
「アキ先輩、今日もヘイゼルベリーですか?」
「そうだね。まあ、栄養はあるし、生活には問題ないと思うけど」
「いくら外が危ないからって、毎日同じ味っていうのも」
「「ねぇ〜」」
二人は偶然にも、同じタイミングでため息混じりの愚痴を吐く。
アキ先輩こと「アキ・ローゼンタール」と、その後輩、「不知火フレア」。
アキ・ローゼンタールは、アルマ村で暮らす、ごく普通の少女であった。
〜207年前〜
しかし、10歳を迎えたとある日のこと。
「ローゼンタール家の
そして、アキはその日から五年もの間、村の長老達によって「大地の神殿」に軟禁され、「大地の巫女」としての修行を強いられていた。
ローゼンタール家の女子は代々、この森に伝わる「[[
そして、10歳の誕生日を迎えたアキもまた例外では無かったのだ。
神殿内での生活は、彼女にとって退屈なものだった。
本を読み漁り、舞と唄の練習をし、それで一日が終わる。
食事は、ブッシュ森林の中でもアルマ村周辺にのみ生える完全食、「ヘイゼルベリー」。毎日毎日、それと水だけが食卓に並べられていた。
「……私、何やってるんだろ」
自身が巫女であることの意味も分からないまま、彼女はただ、毎日与えられた課題をこなしていく。
勉強、唄、舞。この3つを、淡々とこなす毎日。嫌いでは無かったが、意味を見い出すことができないそれらに、アキは何の価値があるとも思えなかったのだ。
好きなことを学びたい。好きな歌を歌いたい。好きな踊りを踊りたい。
その想いは、彼女に少しばかりの狂気を植え付けた。
そして、5年後の誕生日。
神殿から草むらに降り立った彼女は、身も心も疲れ果てていた。しかし、一人前の巫女となった彼女は、
しかし、いくら特別な力を使えるようになったからといって、五年もそのような生活を強いられていては、さすがのアキも狂っていたか、そうでなくとも、何かしら精神に異常をきたしていただろう。
そんな中、外部との接触が禁じられているアキに、毎日欠かさず内緒で会いに行っていた少女がいた。
「不知火フレア」。かの少女の名である。
フレアは、幼馴染が一足先に役割を与えられ、大人に仲間入りすることを嬉しく思っていた。
しかし、アキが大地の神殿に軟禁されているという実情を知ってからというもの、フレアは何も理解できていなかったことを心底悔やんだ。
そして毎日、大地の神殿に足を運んでは、扉の前でアキと二人きりで秘密の会話をしていた。
アキにとっては、その時だけが唯一の救いであった。
当然ながら、それが5年間もバレなかったはずが無く、「巫女が修行に専念できなくなるから」という理由で、フレアは何度も神殿へ近づくことを禁じられた。
しかし、それでもフレアは抜け道や物陰などを巧く使い、毎日毎日、神殿へと足を運んだ。
そして、アキが巫女として成った日の一年後。
フレアも、晴れて警備隊の一員として、立派な大人の仲間入りを果たしたのであった。
フレアの方が歳は4歳上だが、アキを「アキ先輩」と呼んでいるのは、先に大人としての第一歩を踏み出したアキに、敬意と親しみを込めてのことらしい。
〜現在〜
そして、現在。
二人はヘイゼルベリーを黒パンで挟んだものを食べた後、アキは公務のため神殿へ、フレアは警備を任されている
「アキ先輩、行ってきます!」
「行ってらっしゃい、フレアちゃん!」
弓と矢筒を手に、持ち場へと向かうフレア。
今日も、彼女にとって何でもない24時間が過ぎるはずだった。
「出て行け、人間……!」
焔を抱く少女は、白銀の騎士と対峙する。
シャルイース
古より伝わる大地の唄
大地の唄は自然との調和
エルフの巫女は動植物とも心を通わせる
自然との調和は狂気とは無縁である
そして、遺体には時間と共に狂気が蔓延する
シャ・ル・イース
大地は私達と共にあり
呑み込まれぬよう、灯火を頼りに
私に、貴方に、祝福あれ