~ブッシュ平原~
アルマ村跡地を出てから数日後。
ロボ子さんとAZKiの二人は、平原を歌って回っていた。
観客は動物達ばかり、そこに人間の姿は一つも無かった。
しかし、この日ばかりはそうではなかった。
「……ねえ、AZKiちゃん。人間のお客さんだよ~!珍しいね」
「人間……?あれ、人間じゃなくて天使じゃない?」
「あっ!確かに、羽生えてる!」
二人が見つめる先にいたのは、青と黒のドレスに身を包んだ天使の少女。
憂いを帯びた表情の内には何か煮詰まったものがあるようで、明らかに浮かないものである。
一通りの曲を歌い終え、二人は動物達が去ってからもその場に呆然と立ち続ける天使の元へ。
「初めまして、天使さん。私達の歌……聞いてくれてありがとう」
天使の側へ駆け寄り、その手を握るAZKi。
「……いい、歌だった。さようなら」
手の温もりが消えるよりも前に、何かを言いたげに少し何かを溜めたようにして、しかし天使はそれを飲み込んで立ち去ろうとする。
「待って!」
その曇った顔を、ロボ子さんは見逃さなかった。
「何……?僕、もう行かなきゃ……」
「ちょっと……お話しない?ボク達、人格を持ってる存在に会うのは久しぶりなんだ」
「……分かった。でも、何を話せば良いんだろう。今の僕に、話すようなことなんて」
「ある、んじゃないかな。……君と会うのは初めてなのに、そうでもない気がする」
AZKiが感じた、不思議な感覚。
しかしそれをそのまま伝えられた天使は初対面の人間にそんなことを言われたのだ、少し身を引いて立ち去ろうとしてしまうが、ロボ子さんがその手を再び握って引き留める。
「ええ~っと……」
「待ってってば!……ボクとAZKiちゃんはね、ちょっと変わった存在なんだ。AZKiちゃんは『歌姫』って事意外に記憶が無いし、ボクは昔、この世界で戦ってた機械人形だったんだよ。本当だよ?」
「……それって」
「ボクは『Radical-buster-crusade-Type3O』。……『ロボ子さん』っていう名前もあるんだけど、それはあだ名だよ」
「そんな、機械人形なんて……今の時代に、そんなものは……!図書館にもそんな本は無かったのに……!」
「でも……ここにいるよ?」
「……それが本当だったら、もしかして」
天使は頭を捻り、そして二人の側へ急接近する。
「わっ!」
「僕の名前は『天音かなた』。……深淵から帰ってきた、一人の天使だよ。……早速だけど、ちょっと協力してもらいたいことがあるんだ」
そして、「天音かなた」と名乗った少女はロボ子さんとAZKiの手を強く握った。
粒子
何処かの世界にて見出された粒子
現実と神秘の狭間を繋ぐそれは主に脳波との相性が良く、圧縮して質量をもつ光線とすることもある
ロボ子さんは、流れ着いた文明の利器を内蔵された白銀聖騎士団の命運をかけた機械人形、それの試作機であった
当時にしては初の試みであった、人格をもった機械人形
プログラムでしかなかった少女は粒子を操り、やがて脳波を放つのだ