~???~
某日、日本某所。
突如として、世界樹が現れた日。
世界の常識は変わり、再び天動説と地動説は争い、世界樹を中心とした世界が構成され、はや数十年。
世界樹の利権を賭けて、ある国は日本と組もうとし、ある国は日本を打倒して世界樹を奪おうとした。
それが、世界樹戦争。
またの名を、「第三次世界大戦」。
多くの犠牲者を出した世界樹戦争であったが、結局のところ、戦争が終結した後も、大して世界情勢が変わることは無く、新たな世界が続いていった。
それからはや数十年。
ある日、禁忌とされている世界樹近辺の森へ、「肝試し」として侵入した女子高校生達六人の内、一人が行方不明、五人が意識不明の重体となり、そのまま数十年間昏睡状態になってしまう、という事件が発生した。
それ以降。
世界樹に最も近いその町では、「外から来る者は迎え入れなければならない」という「ルール」が生まれた。
自身の領域へ侵入された世界樹の怒りなのだろうか。
人もまた、外なる者を拒まないことを強いられたのである。
そして、さらに数十年後。
何故か姿が変わらず、若いままの姿で昏睡している五人の後輩にあたる少女達は、あまりにも浮かばない人生を歩むことになってしまった。
一部の人々と行政が、あろうことか世界樹付近の森を一部開発する計画を、強引に押し通してしまったのだ。
世界樹の領域を侵せば、呪いは「近い者に、より多く」降り注ぐ。
町は世界樹の恩寵により、肥沃かつ過ごしやすい場所であった。
しかし、恩寵を受けやすい地は、呪いも受けやすいものである。
そして、それは他の少女達も例外では無い。
町には黒い雪が振り、それはコンクリートも鉄も溶かし、人を焼いた。
彼女達は運よく身を隠し、間一髪のところで死は免れたが、この厄災によって、多くの者が死亡した。
それから数年後。
世界樹による局地的な呪いは何とか息をひそめたものの、世界中へ広がり始めたそれは、だんだんと人々を蝕んでいった。
そして、それはやがて起こる最終戦争。
第四次世界大戦にあたる終末の、引き金となるのであった。
人々は怒り狂い、神経は等しく苛立ち、争うためだけに生まれてきた悪魔のように、人々は殺し合う。
もはや社会は成り立たず、それを前々から危惧していた「稲荷博士」は、「オリー」、「レイネ」と名の付く二人の超能力をもつ人造人間を「触媒」として、「クリス」、或いは「アーニャ」と名の付く最終兵器を用いる。
そして「人々から全ての気力を奪い、精神を消し飛ばす」という方法を用いて、世界を「偽りの終末」へと導いた。
しかし、かつて世界樹のもとで死を免れた少女達、後に稲荷博士によって「輝ける者」とされた彼女らは、その神性から精神を奪われずに生き残っていたのである。
「稲荷博士」は、天才的な発想力と莫大な知識により、彼女らと同い年でありながら博士号を得た者であった。
故に、少女達を射程に入れないよう、最終兵器をそう設計したのか。
はたまた、彼女らがどこかから得た神性が兵器の射程から彼女らを外す要因になっていたのか。
しかし、その報せを聞いた稲荷博士は、生き残った「輝ける少女達」が、その神性を以て新たなる世界に概念を植え付けてしまうことを恐れ、彼女らの精神を「イデア」に近しい精神体として「別世界」へ保存することで、滅びた世界の延命を始めたのである。
腐り落ちた世界樹、血に染まった空。
「輝ける者」以外が消えた世界。
こうして「白雪 稲荷」が世界の消失を恐れるがあまり、変化を拒んだが故に、世界が腐り落ちようとも、維持者として君臨した、実質的に「誰もいない世界」が形成された。
しかしそれには例外が存在した。
行方不明の少女と、死の淵にて終末、そして新たな世界の創造主として覚醒した少女。
そして、それはどちらも「輝ける者」。
彼女らは稲荷が変化を拒んだように、永遠の腐敗を拒むのである。
そして「内側から気付いた二人」もまた、果てを越え、世界へ舞い戻った。
「夏乃 花火」と「姫川 美月」。
この二人は、いち早く、稲荷の世界から意識を戻した「輝ける者達」であった。
永遠の腐敗
寿命を終えた世界は、徐々に腐り落ちてゆく
終わりなき世界は、始まりの否定
矛盾に満ちた存在は、ただ存在それだけで自らを傷つけるのだ