~サーバ海・果て~
「何者なんですかぁ、貴方は!」
「私ハ……『白雪稲荷』。簡単ニ言エバ神様デスヨ」
「稲荷ちゃは……本当に、この世界をずっと見てるのらね。つくづく何者なのら?昔から本当に五人いるみたいなのらよ」
「……ウーン。マア、間違ッテ無インデスケドネ」
「ますます、稲荷ちゃの存在が分からなくなってくるのら……」
「トリアエズ、続キハ戦イナガラ話シマショウカ!皆マトメテカカッテ来ナサイ!」
自ら「稲荷」と名乗った白い獣は、爪を地面に食い込ませ、巨体に似合わぬスピードで走り出す。
「そうなのらね!!!【実像投影・ミラクル船長キャノン】!発射なのらー!!!」
それと同時に、ルーナはマリンの船を造る際に用意した大砲の設計を再利用し、能力を使って疑似的な「ミラクル船長キャノン」とする。
「ルーナ姫!前線は私に任せて!【深き衝撃】!
「ちょ、ちょちょちょちょ、どうしよ……これ、あてぃし達も戦った方がいい感じだよね!?」
「勿論ですよ。あくたん!船長も、新技試しちゃいましょうかねぇ!」
そしてルーナに続いて、頭痛に倒れてしまったまつり以外の三人、ノイン、あくあ、マリンは、次々に戦闘態勢へ。
前衛に乏しい新生宝鐘海賊団は、ルーナの分け身ともいえる騎士ノインを前衛として配置し、それ以外の皆が後衛として戦うこととなっていた。
しかし、その白い獣は通常の狐を、そのまま十倍程の大きさにしたような図体であり、目にも止まらぬスピードで動き回るそれは、いとも容易く前衛後衛の概念を覆す。
「あくたん!」
後衛のあくあを狙った攻撃にいち早く気付いたマリンは、後ろへ振り向いて声を上げる。
「【アクアベール】!」
その声に反応したあくあは、一瞬のうちに己の周りに水のベールを張り、自分に泡を纏わせるように防御を固めた。
「【コン】」
しかし、白い獣は。
「あ、あ……!?へっ」
「グ、ブ……ゥ……」
「ぁ」
あくあが海の女王と化す前に、その全身を一瞬にして粉微塵と化してしまった。
「あくたぁぁぁぁぁぁんッッッ!!!」
「ング……ンガ……ァァ。ヒトォツ……!」
「そんな……あくあちゃが一瞬で……!」
「でも、今ので隙が出来たよ!【響く……」
それでも怯むことなく、背後から首を折ろうとノインは飛び掛かる。
しかし、獣の身体がグリッジのようにブレたかと思われた、次の瞬間。
「【コン】」
「あぁッ!?」
首の向きが一瞬で変わった獣は、つい数秒前まで何事も無かったかのようにノインを飲み込んだ。
「……は?」
あんぐりと口を開けたまま、硬直するマリン。
一方、
「な、そんな、ノインちゃが死んだら……!?あ、あ……」
己の分け身が全て失われたルーナは、その性質を完全に取り戻し。
「ル、ルーナたん……?」
「ん、んな……んな」
立つことも話すこともままならない、赤子へと戻ってしまった。
ヤルダバオト
異端なる者達によって語り継がれた、偽りの神
その全知全能は、しかし混沌に属すが故に、秩序立った世界のそれとは大きくズレている
全てを持つ者であれ、それが必ずしも喜ばれるものではないという証明
完全へ傾倒した偽りより見出された神は、その身を以て己の不完全性を証明してしまった