これは、私の知らなかった話。
否、思い出せなかった、ただそれだけ。
でも、私にはきっと……。
やるべきことが、あったような、無かったような。
~サーバ海・果て~
「ルーナたんまで……!折角、『果て』から帰ってきたのに……!」
瞬く間にあくあを飲み込み、ノインを粉砕することでルーナを完全なる赤子の状態に戻してしまった白い獣。
「アトハ……貴方ト『花火』ダケ……デスネ……。ソチラノ赤子ハ……モウ、タダノ情報ノ塊トシテ考エテイイデスカネ」
「何者なんですか……貴方は……!」
「私ハ……何デショウネ。デモ、コノ世界ヲ終ワラセタク無イッテ想イハ有リマスヨ?」
「どういう意味ですか……!船長の仲間をこんなにしといて、『果て』から帰ってきて、この世界の全てを知ってる筈のルーナたんもこんなんにして……!この世界を終わらせたくない?あくたんを噛み潰しておいて、それを言いますかぁ……!?」
「人ヲ殺シテデモ、守ルベキ秘密ハアルンデスヨ。サア、オ喋リハココマデデス。始メマショウカ」
「ルーナたんは成長してから話を聞けば良いとして、今取るべきはあくたんの仇……!絶対、逃がしてはおきませんよッ!!」
獣は大きく吠え、マリンへと飛びかかる。
「【ミラクル船長キャノン】、撃てェェェェェェッー!!!」
「【重力拡散】」
それに合わせて主砲の向きを調整し、迎撃するマリンであったが、獣はさらにその一枚上手を行く。
全身から船に大きな重力がかかり、小さくなってしまったルーナは苦しみ始め、俯いたまま息を切らしているまつりはとうとう血を吐き始めた。
「うおおおおおおおおッ!こんな、こんな真似をオオオオオオオッ!バケモノめ、船長は……また、船員を失って……!あくたんも、ノインさんも……お前に殺されて……!これ以上、船員を失うのは御免ですッ!!!今こそ、船長……いや、マリンの切り札……!!!見せてやりましょうッッッ!!!」
「グオオオ……何ヲサレヨウトモ、私ヲ阻ムコトハデキマセンヨ……!!!」
マリンは被っていた帽子を脱ぎ、赤ん坊になってもなお手を伸ばし続けていたルーナに預ける。
そして、
「これは、あたしにしか出来ない事……世界を包む、幻想の世界……」
手を宙に向けて大きく広げ、辺りを光で包み込む。
「ナ、何デスカ、コレハ……!?」
混乱する白い狐。
その間に、空間は形を成し、結界となって辺り一面へ。
「啓け、聞け、満たせ!たとえ、形と成らずとも!!!これがあたしの切り札、かつて、生み出した幻想にして、己の視た景色の影!!!【
そして次から次へと人影が現れ、一瞬にして白い獣から影を奪う。
そして、無理矢理にその身体を霊体と化し、束の間ではあるが、獣の意識を強制的に分断したのであった。
彼方に見ゆる夢の海
宝鐘マリンが描いた、夢の話
遥かの日に描いた幻想の夢、きっと訪れる世界の噺
その一説を語るもの
幻想に別の幻想をぶつけることで混沌を生み出し、夢のように混じり合うそれは、いつしか宝鐘マリンの切り札となった