ホログラム・パラドクス   作:モガミのコッコ

115 / 123
世界を越えて

どこかで見た美術室。

 

腐敗が進んでいる世界樹が今もなおそびえ立つ中、絵画を前に呆然と立ち尽くす「まり」を前に、姿を現す稲荷博士。

 

「……おまえ、は」

 

「稲荷。さっきぶりですねぇ、まりさん」

 

「何が目的で、私を……あの世界は、どうなったんですかぁ……!?」

 

「ああ、まりさんが船長やってた世界ですか。普通に残ってますよ。世界樹というクラウドの中で、ですけどね。よっ、と」

 

稲荷は窓から見える世界樹を指差し、右手の平に呼び出した刀を握る。

 

「それは……!」

 

「『カバー』の法則を適用すれば、こっちの世界でもこんなことができちゃうんですよ」

 

「……そっか。この世界は、もう」

 

「うん、まりちゃんの言う通り。……私の目的は、電子世界の『カバー』を概念として世界樹に植え付けて、この世界を無理にでも続けること。幻想とか電子とか、そういうものが混じってでも……私は、この世界を続けたい。なんてね、ハハ……何で私、自分から計画バラしちゃったんだろ」

 

「へぇー。……そのために、あくたんとノインさんを殺したんですか」

 

「いいじゃないですか。『こっち側』のあくあちゃんは死んでませんし、ノインちゃんは、元々ルーナちゃんの一部だから、殺したところで『本体』のところへ帰っていくだけでしたし」

 

「……今のあたしは、確かに『赤鐘まり』ですよ。でも……ついさっきまでは、本当に『宝鐘マリン』だった……。あの時の『マリン船長』にとって、あの世界を生きていたあくたんは……本当に、大切な人だった。それが、この世界では生きていると聞いて安心しましたよ。でも……『マリン船長のあくたん』は、確かに合の時死にました!貴方の、この世界に対するちっぽけな意地が、あくたんを殺したんですよ!ルーナたんも赤たんに戻っちゃうし、まつりは貴方を見るなり苦しみ初めて……!しまいには、あたしをこっちの世界に無理矢理引っ張り出してきて……!!もう、何なんですか、あんたはぁ!!!これ以上、あたし達の船旅を邪魔しないで下さぁい!!!」

 

マリンは怒りに任せ、筆を振り回す。

 

「いやぁ、貴方がこっちの世界に戻って来れたのは、あのよく分からない夢みたいなのが、こちらの世界とあちらの世界を行き来できるくらい、私達の存在を曖昧にしてくれたからですよ。そうじゃなきゃ、あんな土壇場でこっちの世界に貴方だけ連れてくるような、時間のかかる細工は出来ませんから」

 

稲荷は数歩だけ身を引き、飛んでくる絵具のような何かを全て刀で弾き返した。

 

「ハァ、ハァ……。この世界がどうとか、滅びるとか続けるとか、そんなんどうでもいいですよぉ。ただ、あたしは……『宝鐘マリン』として、あくたんの仇を討つために戦います。……この世界が『カバー』と混じっているなら……前と同じ調子で戦える筈ですから」

 

「意気や良し、ですねぇ、まりさん。どの道、敵は排除しなきゃいけなかったので……まりさんが私の敵になるのでしたら、消えてもらうしかありません。……この世界を、存続させるために」

 

まりは制服のまま、血に染まった絵画に突っ込んだ手に握った拳銃とナイフを。

フブキも瞬く間に制服を着て、刀を構える。

 

刹那。

 

鉄と鉄がぶつかり合う音が、教室に響いた。




狐の悪魔


何処かの世界にて、悪魔によって悪魔を殺す者達が用いた術の一つ

指で狐を使い、「コン」と口に出すことで狐の頭部を呼び出す
稲荷は自身の器でそれを行うことで、急速な方向転換を可能としている
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。