~福音の廃城~
扉を開けた瞬間、「ウルハ」が飛ばしたと思われる重力の塊に胸部を貫かれたラミィは、瞬く間に吐血し、そのまま言葉を発することなく崩れ落ちる。
「ラミィッッッ!!!」
ねねはその身体を受けてめて抱き上げるが、即死だったのか。
ラミィは既に、息をしていなかった。
「【グレネード】!!!」
一呼吸する間も無く、ぼたんは手榴弾を投擲。
怒りに任せたそれは、ウルハの髪を掠めて背後へ。
「【夢斬り爪拍子】!!!」
「【ホログラム・サーカス】!」
一歩遅れて、おかゆとポルカも攻撃を開始する。
ポルカのホログラムを用いたサーカスの幻が辺り一面に広がり、そこを叩こうとするおかゆだが、それを気配で察したウルハは杖で攻撃を防ぎ、さらに部屋中へバラ撒かれたホログラム発生装置を弾き飛ばす。
「剣……出てこい、剣……!バッタは……いいや」
しかし、ラミィの亡骸を運び出したねねは、どういう訳か武器を生成できない。
角ばった剣を呼び出す「ピクセルコフィン」は使えないと判断したねねは、急遽「バグ・パイプ」によってイナゴを呼び出そうとしたが、ラミィの亡骸が食い荒らされる可能性と、魔力が張り巡らされた部屋であるが故に、召喚が上手くいかず、有り体に行ってしまえばリソースの無駄遣いになることを恐れ、光を宿した両手の拳を握りしめて向かった。
四人の攻撃など意にも介さないといった様子で、ウルハは相も変わらず虚ろな目のまま玉座に腰かけている。
「あっ、ポルカのホログラム、置いてたやつ全部電源落とされちゃった……」
「攻撃も全然通らないね……いなされてるみたいな……。ぼたんちゃん、大丈夫?」
明らかに冷静さを欠いているぼたんを気にかけ、後退させようとしている二人。
「大丈夫……くぅ、ゥゥゥゥゥゥゥ……!!!ラミィちゃんを……あたしの、ラミィちゃんを、あいつは……!」
「落ち着けって、ししろん!」
「ねねちゃん、ししろんを……」
ぼたんを交代させるよう、ねねに頼もうとしていたおかゆだが……。
その真横。
右を通り抜けて、ウルハへの攻撃を防いでいる結界のようなものを、光を宿して握っていた拳でリンゴ飴のように削り取る少女が一人。
「……おおおおおりゃああああああああ!!!」
その瞬間、ウルハの杖が再びピクリと動き始める。
虚ろな目には光が宿り、失われていた命が幾分か取り戻されたような、そんな神秘でさえも覚える。
ラベンダーのような紫が混じった白髪は、元の色素であったのか、徐々に緑を取り戻していく。
「やった!?」
「いいや、まだみたいだよ」
「ぐぅぅぅ……ラミィちゃんが、まだラミィちゃんが……!ねねち、そこ、どいて……!」
「いいから下がってろ、ししろん!」
ポルカとおかゆは、ぼたんを半ば引っ張るように後方へ。
「ねねも一回距離置く!なんか……ヤバい気がする!!!」
そんな三人を、ねねがさらに後方へ誘導。
「……【雑音】、は……この世界を、続けなきゃ、いけないのです……善いことは悪いことで、悪いことは善いこと……。【雑音】は、まだ戦わなきゃいけないのです……」
ブツブツとうわ言のように、何かを呟くウルハ。
そして、髪色がすっかり宝石のように鮮やかな緑へ戻ったウルハは、立ち上がって杖を構えた。
抑止力
世界が異常性を持たないよう、世界には抑止力がかけられる
時には裁く者として、時には悪しき者として、人の歪みを力で捻じ曲げた
現在のそれが亡者の王、ウルハである