~福音の廃城~
仕切り直し。
杖を構えたウルハは、迷わずおかゆを狙って悪霊を解き放つ。
「はあっ!うおおおおおおおおおッ!やぁっ!返せ、ころさんの魂……!」
空中へ飛び上がっての回転斬りによって、実体のない悪霊を瞬時に薙ぎ払い、ウルハの懐へ。
抵抗しようと杖に魔力を送るウルハよりも早く、その刃は首へ届かんとする。
「……【雑音】」
しかしそれよりも早く、ウルハの死霊術師らしき服装に似合わぬ膝蹴りで、その攻撃は受け流されてしまった。
「ぐっ……!」
「【グレネード】!」
そこへ、おかゆの攻撃の直後に合わせて爆発するよう、タイミングを見計らってぼたんの投げたグレネードがウルハの眼前へ。
「【亡者召喚】」
爆発する瞬間、ウルハは自身の身体と同じ座標にスケルトンの兵士を呼び出し、グリッジのように自身の身体を重ねて吹き飛ばして回避。
「なっ、上に……!?」
「……」
咄嗟に拳銃を構えるぼたんの頭上へ飛んだウルハは、そのままぼたんの頭部を殴りつけて意識を奪う。
「ぐ、ぁ……」
「ししろん……!ぁぁっ!」
続けて、レーザー砲により不意を突かれたポルカも、壁に頭部を打ち付けられて気絶。
「ねっ子……!!!出てきて!」
残ったねねは、地面から生やした人参のような精霊に、おかゆ、ぼたん、ポルカの身体を安全な場所へ移動させ、大広間を自身とウルハだけの空間を「演出」する。
「……」
「ふぅー……。正直、あなたに勝てる気がしない。でも、勝たなきゃ皆死ぬ、世界も終わる。……ねねはカミ様の遣いとして、この世界に来たんだ、勝たなきゃ」
「……【雑音】、は」
「……!」
とうとうウルハが、口を開く。
その言葉には自信を名乗る言葉があったようだが、ねねはそれを聞き取り、認識することが出来なかった。
「この世界を、続けることが使命……。もう無い命に課せられた軛、傀儡としての命令……。でも、不安定な台座の上に乗った天秤を操ることなんて、できない」
「い、いきなり何を」
「自分でも分からない。でも、今の【雑音】にできるのは……台座が激しく揺れても、錆びて朽ちて行っても、内側から蛆が湧いて出てきても……この世界という天秤を崩さないこと」
「……降参は……してくれないってことだね」
「うん。だから、【雑音】は戦う。戦って、この世界を残さなきゃいけない。『守らない』ことにはなっても、残さなきゃいけない。全てを亡者にしようとしたのも、この世界から『死』を無くすため。この身体では、それしか思い浮かばない」
「何も考えられない、亡者になってまで死ななくても、それじゃ死んでるのと一緒だよ。……ねねだって、カミ様達の遣いだから。この世界を……あるべき姿に戻す」
「無駄」
「無駄なんかじゃない、きっと……!」
「……なら、ワタシを殺して、見てみるといい……の、です。この世界を、その真実を……!」
ウルハはもう一度、杖を構え直す。
一方のねねは、相変わらずグリッジめいた攻撃が使えなくなっている。
「なら……ねねも、殺す気でいくから」
ウルハの杖から禍々しいオーラが放たれた、その瞬間。
「記憶……これなら」
ねねは空間の裂け目から木刀を取り出し、放たれたオーラを斬り払った。
グレネード
古来より、様々な地方で親しまれてきた武器
高度な文明をもっていた、銀獅子族の生き残りである獅白ぼたんが持っていたもの
爆発によって鉄の破片を飛ばすもの、爆発そのものの衝撃を与えるもの、煙を撒くもの、光を放つもの
用途によって、バリエーションは様々である