~福音の廃城・大広間~
「ねねは、世界を守らなきゃいけない。亡者の王を倒せれば、世界は……少しずつ戻っていくはず。そうじゃなきゃ、ねねがここにいる意味が分からない。それに」
「【雑音】、だって……この世界を……正しく……するための」
「あなたに、どんな事情があるかは分からない。でも……。世界を何とかするのは勿論だけど、それ以上に……友達の仇は取らせてもらう」
「……必要な犠牲」
「世界のシステムが、そんなことを……!!!」
「オールグリーン……。魂を反駁する抑止力……【ソウル・レフィテイション】」
ウルハの杖から、反重力のようなものが放出される。
「【不干渉領域】」
しかし、ねねの握るホログラムの木刀が、それが与える影響の一切を跳ねのけた。
「まだ、世界は……正常に……」
「討つ……!」
ねねは強く踏み込み、瞬く間にウルハへと接近した。
腰を落とし、木刀を低くに構え、それを瞬く間にダイヤモンドやピクセルの塊とし、瞬時に脈略の無い素材のものへ切り替わるそれは、ウルハによる影響を受けない。
刃は首を正確に捉え、一刀両断。
「……あ」
世界の均衡を保つ抑止力であり、亡者の王であるウルハ。
彼女の神経が違和感を感じるよりも先に首が落ちたことを、その瞳が映した。
「ハァ、ハァ……や、やった……」
そしてウルハは杖だけを残し、それ以外は灰さえ残さず消えてしまった。
ねねは杖を拾い、すっかりグリッジの塊と化したピクセルの塊を大気中へ還し、ぼたん、ポルカ、おかゆ、そしてラミィの亡骸が待つ城の入り口へ戻る。
戦いを終えて煤だらけになったねねを見て、ポルカとぼたん、そしておかゆの口角が上がる。
「ねね……!」
「良かった、これでころさんも……!」
ウルハの消滅に合わせて亡者達が一斉に灰と化したことで、安全になった廃城までの道を辿り、預けていたころねの抜け殻が座員達によって運ばれてきた。
数少なくなってしまった座員だが、彼らは座長を忘れていなかったのだ。
ウルハが持っていた杖から、ころねの肉体へ魔力とともに魂が送り返される。
「……んぁ……?お、おがゆ……?」
「ころさん……!!!」
おかゆは、座員から渡されたころねの身柄をおかゆに委ねる。
互いに抱きしめ合う二人を、ポルカと、ねねはそっと見守る。
一方のぼたんは、ラミィの亡骸を一人抱きしめた。
「……ラミちゃん」
「……ん?ししろん、ラミィから離れて!」
ぼたんの腕の中で眠っているはずであったラミィの亡骸は、腕に刻まれた紋章を中心に、魔力の爆発を起こした。
「え……がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!?」
「ししろぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!!!」
城は崩壊し、ラミィの亡骸は消えている。
しかしウルハは、すでに死んでいるのだ。
そこに残されていたのは、亡者の王を殺した勇者達。
それは貸したものを取り戻した少女と、しかしかつての親友を失った少女達であった。
不干渉領域
真理に触れることができる者、「カミ」及びその遣いにのみ許された権限
己が望むものによる干渉を断つ、「世界の裏技」とすべきだろうか
世界に抗うは、世界のみである