~天界の果て~
AZKiとロボ子さんは、かなたに案内され、彼女が暮らしていた天界の、更にその果てへとやってきた。
「二人とも。ここの先に、世界の果てがあるんだ。僕がかつて目指したけど……辿り着けなかった、世界の限界。見るからに古代兵器なのに会話がロボ子さんと、人のような形をしているけど、何か別の気配を感じるAZKiちゃん……二人と一緒なら、この限界を越えられるような気がして、連れて来たんだ」
「世界の限界を越えるために私達を……?確かに、私は生き物……というよりは、『歌姫』だけど」
「ボクは高性能ロボットだからね!任せといて!ふんっ」
AZKiは首を傾げ、ロボ子さん自信満々で胸を叩く。
「ありがとう。一応、分かってる情報を言っておくと……この空を更に飛んだ先には強い壁みたいなのがあって……僕一人では、情報の波に押されて勝てなかった」
「そこでボクの出番ってことかぁ!この高性能なOS……『Glitch Unchain Noels Destroy - Alice Minder』があれば、世界の真理だって分かっちゃうんだから」
「そうそう!そして、AZKiちゃんは歌の力で……世界をかき乱して欲しいんだ!……このままじゃ、この世界から……皆の様子がおかしくなっていくだけの、腐った世界を変えることはできない!」
「……分かった。歌を歌って、世界中を回るのは楽しかったけど……もう、それどころじゃ無いってことだよね」
AZKiは、かつて動物達を相手に歌を披露していた過去を思い出したのか、少し俯く。
「うん。……既に、友達が二人いなくなってる。片方は、狂ったから僕が消した」
「……そんな、友達が」
しかし世界の腐敗より生まれた悲劇は、より重く、強く、AZKiの「歌姫」たるその精神を押し潰した。
「ボクはロボットだけど……昔、ボクを作ってくれた人とか、メンテナンスをしてくれた人とか……そういう人が皆死んじゃったって知った時は、ショックだった。……辛かったでしょ?」
「辛かったよ。本当に、辛かった。もっと話したいって思ったし、もっと一緒に生きたいって思った。……だから、僕はこの世界に引導を渡さなきゃいけない」
「ねぇ、この世界は……やっぱり、消さなきゃいけないの?私、まだ……歌を歌いたいよ」
「大丈夫。きっとまた、どこかで会えるよ。僕、知ってるんだ。この世界は、正しい世界じゃないって」
「えっ?」
「だって、天使と神様がセットじゃないんだよ?誰が天使を遣わしているのか分からないのに、『天使』なんて名前がつくわけないじゃん」
「確かに……ボクの『高性能ロボット』っていうのも、いつの誰から見て高性能なのかも分かんないかも」
「でしょ?だから、この世界は、『普通の世界』という概念を持っている何者かによって作られた。って、僕は思ってる」
概念が無ければ、名前は生まれない。
言葉というものは、人によって恣意的に生まれるが故にこそ、「基準なく生まれた概念」が存在する世界は人工物であると、かなたは結論づけたのである。
「……じゃあ、暴かなきゃね。私達が生まれ、育って、楽しんで、苦しんだ世界を」
「うん。ボクの方は準備できてるよ。腕から撃ったビームに対する反応を分析して、情報を解析するから……タイミングを合わせて、あずちゃんは歌で世界の形をかき乱して、かなたんは解析が終わったタイミングで、世界の壁を壊すように思いっきり殴って!」
「分かった。じゃあ……歌うね。最後になるかもしれないから、せめて……後悔しないように」
「うん。ボクの方は、準備体操をしたら力を溜めておくよ。……今のうちに、お別れの挨拶……しちゃうね。……また、どこかで」
「うん、きっと……!」
「ボクも会いたいなぁ〜!今度は、ご飯でも食べながら!……じゃあ、始めるよ!【擬似解析・インフェクション】!」
ロボ子の右腕からアンテナのようなものが露出し、そこから無数に発射されたレーザーの一つ一つが世界の果てに衝突して生まれる衝撃、物資、その他ありとあらゆる情報を分析し、彼女は一つの結論に辿り着く。
それは、理性を持つ者を外に出したく無い創造主の意思が、この壁を作っているということだ。
そして今、AZKiの歌声によって、世界の幻想の境目が曖昧なものとなっている。
今なら、この世界を「世界」ではなく、「幻想」とした上で、本物の世界を見に行くことができる。
「よーーーっし!僕の出番!一度は塞がれたけど、僕の腕力で……今度こそ、世界の正体を暴いてみせる!必殺!【
かなたは腕に炎を纏い、世界の果てへと一撃を叩き込むのであった。
Glitch Unchain Noels Destroy - Alice Minder
何処かの世界にて、少女の名を冠した絡繰が存在したという
これは、その絡繰を元に騎士団の長たる者の力と、当時の叡智を全て取り込んだOSの一つであり、非常に高性能なものとして期待された
しかし容量に限界があったのか、それを搭載された唯一のロボットは、代償として少し抜けた性格になってしまったらしい