〜バッカスシティ〜
数日後。バッカス平原を抜け、雪原前の街、「バッカスシティ」へとやってきたラミィとぼたん。
追っ手を撒いたり、雪原の狼に何度も襲われたり疲れ切った二人は、バッカス平原へと向かう前に、この街で一休みすることにした。
「柔らかいベッドで早く寝たい……」
「最後にお酒飲んだのいつだっけ……」
二人は、とても疲れていた。
「ちょっと、そこのお姉さん達!」
そんな二人の前に、見るからに怪しげな男が近寄ってくる。何かを売ろうとしているのか、それとも、いかがわしい店の勧誘だろうか。しかし、
「ア?」
「はぁ?」
今のラミィとぼたんにとって、その男が何者なのか、そんなことは重要では無い。
……二人は、とても疲れているのだ。
「ひいっ」
脊髄反射で睨んだラミィとぼたんの圧力に恐れをなしたのか、男は何事も無かったかのように逃げていった。
「ベッド〜」
「お酒〜!」
こうして、二人は寝床の酒を求めて、吸い込まれるように近くの宿屋へと入っていった。
〜宿屋・201号室〜
「はぁ〜……やっぱりふかふかのベッドは最高だ〜……」
ぼたんは、部屋に入るなりベッドに飛び込み、そのまま寝息をたててしまった。
ライオンはネコ科の動物。
猫に「寝子」という当て字があるように、彼女もまた、睡眠欲には抗えないのであった。
〜宿屋・1階酒場〜
「んっ……ふぅ〜っ!やっぱり、『竜血』は美味しいなぁ〜……!」
一方ラミィは1階の酒場で、ブッシュ平原の南東に位置する小さな集落、「ムラサキ村」の銘酒である「竜血」を嗜んでいた。
大の酒好きである彼女にとって、村を出た日の前日以来、実に1週間ぶりの酒は、濃醇辛口の醸造酒、「竜血」と決めていたのだ。
久しぶりに大好きや酒を飲み、大満足のラミィ。
そんな彼女の元に、一人の少女が近寄ってきた。
「ねえ、お姉さん」
藍色のドレスに緑色の髪が映える少女。
「んぇ〜?どうしたの〜?」
「……【
「……っ!?」
その少女の右手から、ラミィの身体に「黒い何か」が流し込まれた。
違和感を覚えたラミィは、右肩に紫色の痣ができていることに気づく。
「さようなら、お姉さん」
「ちょっ、君、何を……!うっ!」
再び、少女の右手が紫色の光を発する。
すると、彼女の身体は闇に侵され、その身を呪いに少し侵食されてしまった。
「はぁ、はぁ……。ラミィの身体、どう、なって……?」
ラミィは痣を隠し、部屋に戻る。
そして、先に眠っていたぼたんの隣にある、もう一つのベッドに横たわった。
彼女に呪いをかけた緑髪の少女は、一体誰だったのか。
しかし、かの少女が誰なのか、何が目的でこんなことをしたのか、どれだけ考えても答えは出ず。
ラミィもまた、深い眠りに落ちてしまった。
この晩は、故郷の人々に出ていった事を責められ、拷問を受ける夢を見た。
ラミィは、一生消えぬ十字架を、その身に押し付けられたのだ。
醸造酒 竜血
古くから醸造されている、ムラサキ村の銘酒
濃く、またとてつもなく辛いことから、その味は竜の血に喩えられた
かの剣聖、百鬼あやめも、この酒を愛したという
アクの強いものには、物好きが集まるのだ