ホログラム・パラドクス   作:モガミのコッコ

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最初の試練

〜???〜

 

どこかの世界における「和」という概念を取り込んで構成された、「カバー」と他の世界を繋ぐ小さな世界、どこかの世界に属する人々とっては、どこでもない場所。

 

小さな町のような世界の大通りを、一人の狼少女は駆ける。

 

「あらあらミオ様、おはようございます」

 

「あっ、ミオ様だー!おはよー!」

 

「みおしゃま〜!」

 

「あっ、みんな、おはみぉーん!今日はちよっと急いでるから、もう行くねー!」

 

狼少女の大神ミオは、人々に手を振りながら、前へ前へと足を進めた。

 

「フブキ、いるー?」

 

そして、神社の境内を模したゲーマーズの拠点へと向かったミオは、慌ててフブキの元へと駆け寄る。

 

「いるよー。どうしたの?」

 

「さっき、ねねちから無言の通話がかかってきたんだけど……何かあったってことなのかな?」

 

自らの水晶をフブキの前に置き、ミオは頭を抱えて座り込んでしまった。

 

「それは確かにちょっと心配だねぇ」

 

「どうにかして、水晶でねねちの様子を見ようとも思ったんだけどね、どうにも上手く映らなくて」

 

「誰か、ねねちの様子を見に行ってくれる人がいればいいんですけどねぇ〜……。いかんせん、わたしたちは人員が足りないのが弱点だし……」

 

「「うーん……」」

 

二人は何とかして、ねねの様子を見ることはできないものかと考えてはみたものの、それらしき案が思い浮かぶことは無く……。

 

そんな二人の背後に、いつの間にか耳を澄ませて話を聞く犬と猫の姿があった。

 

「ねぇ」

 

猫改め、おかゆがミオの肩を軽く叩く。

 

「うわっびっくりした」

 

後ろを一切警戒していなかったミオは、座ったまま、ほんの少しだけ飛び上がる。

 

「人員なら、ここにいるよ?」

 

「こーねたちに任せて〜」

 

そんなミオを横目に、おかゆところねは、異世界へと飛ぶためのゲートを指差した。

 

「うーん……でも、大丈夫ですか?二人とも、『カバー』に直接行ったことは……」

 

「「無いよねぇ」」

 

「うん、やっぱりフブキかうちが行くしかないね」

 

おかゆところねの転移を諦め、転移陣を起動して新たな協力者を呼び出すべく、準備に取り掛かるフブキとミオ。

 

それを見たころねは、おかゆに一つの提案をする。

 

「ねぇねぇおかゆ?……あの魔法陣って……こーね達でも描けるかな?」

 

「うーん……あんな魔法陣、見た事ないな〜。ミオちゃんは魔術の専門家だから、ぼく達じゃ描けないようなものを描いてるんだと思うよ」

 

「そっかぁ〜」

 

ミオの扱う魔術は、長年占い師兼魔術師として磨き上げてきた、言わば職人技である。

 

それを、魔術に関してはほぼ素人であるおかゆところねに、コピーなどできるはずも無く……その提案は、あえなく却下ということになってしまった。

 

「でも、簡単な転移陣なら、ぼくでも描けるよ?」

 

「ほんとぉ!?」

 

「うん。ぼく達、『カバー』に行ったことは無いけど、監視はよくやってるでしょ?だから、どんな陣を描けば転移できるかくらいは覚えたよ」

 

「さすがおかゆ〜!」

 

ころねは、おかゆを強く抱きしめた。

 

「えへへ……ありがとう、ころさん。じゃあ、描くよ。……それそれそれそれっ!」

 

「おおー!」

 

素早く手を動かして陣を描くおかゆと、側で見守りつつ、おかゆに妖力を送るころね。さながら夫婦の共同作業であった。

 

「できたよ〜。さ、乗って乗って〜」

 

「あいよー!」

 

ころねは胸を高鳴らせながら、おかゆが描いた陣に乗る。

 

そして、おかゆも陣に乗り、追って陣に転移のための妖力を注ぎ始めた。

 

「おかゆんところね……やめる気は、無いみたいだね」

 

フブキとミオにバレない程度には、隠密に事を勧めていた二人。しかし、周囲を流れる妖力の流れを見逃すフブキでは無かった。

 

「うん!ねねちのことも心配だし、カバーにも行ってみたいし!」

 

「ちゃんと連れ帰ってくるから、任せて」

 

おかころ、開き直る。

 

「……わかった。ミオも、行かせていいかな?」

 

「もちろん。でも……気をつけてね。『カバー』は、多分だけど大ピンチ……まさに今際(いまわ)そのものって感じだから」

 

フブキは、二人の目に宿る輝きを、決して見逃さなかった。

 

この二人なら、必ずねねと共に今のカバーを変えてくれると、そう確信したのだ。

 

「じゃあ、行ってくる」

 

「またね〜」

 

二人は、そう言い残して転移を始めた。

 

おかゆところねは、空間と空間の狭間を抜けるトンネルを通じ、幻想世界「カバー」へと向かう。

 

「カバー」の地上や展開には魔力や妖力が溢れすぎているため、外の世界から影響を与えにくくなっている。

 

そのため、陣を通じて、「カバー」の下部、魔界に限り無く近い空間を通じて、地上へと向かうルートで転移しなければならず、転移完了までに時間がかかるのである。

 

「ねぇねぇ、おかゆ」

 

「どうしたの、ころさん」

 

「あっちの世界、パン屋あるかな」

 

「うーん……わかんない。そういえばぼく達、あんまり市街地は覗いたこと無いね」

 

「うん。おかゆがこーねのパン食べたくなった時に、パンが知られてない世界だったら不便だなと思って」

 

「確かに、変なもの作ってると思われたらめんどくさいかもね。……おにぎり屋もあるかなぁ」

 

「おにぎりって、パンよりマイーナじゃなかったっけ?」

 

「多分だけど、それは『マイーナ』じゃなくて『マイナー』だよ、ころさん」

 

「ありゃ」

 

「でも……ころさんの言う通り、ネチャネチャしたタイプのお米じゃないと、おにぎりはうまくにぎれないから……あったとしても、場所は限られるかもね」

 

「そんな〜。おかゆの能力って、おにぎりを食べるとパワーアップするやつなんでしょ?」

 

「うん。だから、戦う機会が無ければいいんだけど……もし、戦わなきゃいけない時があったとしたら、その時までにパワーアップの方法を見つけないと、戦いでは、ころさんに頼りきりになるかも」

 

「もしそうなったら、こーねに任せて!!おかゆの分まで頑張るから!」

 

「ありがとう、ころさん」

 

「行き先にパンとおにぎりがあるか」、片方は能力に関係する深刻な話ではあるが、側からみれば観光客のような会話をしながら、時間と空間を越え、様々な力が溢れる地上と天界を避け、魔界を通り、地の底を抜け、数少ない時空間の穴を通り抜け、流れるケガレとすれ違いながら「カバー」の地上へと向かった。

 

 

ねねが向かった穴の中か、或いはどこか知らぬ地か、二人はとある地に降り立つ。

 

そこは、

 

「「……えぇー?」」

 

かつてフブキとミオが覗いていた、死の王「ウルハ」と、その「オトモダチ」が巣食う、旧い城であった。




おにぎり


炊いた米を手などを用いて握った、異世界或いは異国の郷土料理のようなもの
インディカ米は粘り気が少ないため、おにぎりを作るには適さず、ジャポニカ米が推奨される

「おむすび」と「おにぎり」は同一ものとされるが、とある国では、三角のものに限って「おにぎり」と呼んだり、俵型のものを「おにぎり」と呼んだりするなど、その呼び方には諸説ある

猫又おかゆは共通して「おにぎり」の概念に当てはめているため、彼女の能力に、握り方や形は関係しないようだ
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