〜姫森城・王室〜
とある日の黄昏時。
「……ルーナ姫。ちょっといいかな」
「無垢」の騎士であるノインは、ルーナが幽閉されている部屋へ忍び込む。
「どうしたのら?ノインちゃ?」
現在、姫の部屋には一部の部下と異世界人のまつり以外、立ち入りが禁止されていた。例えそれが、近衛兵の立ち位置を確立している円卓である四人さえもである。
「ノインが王室に来るなんて珍しいね」
まつりが、この城に召喚されてから、はや数週間。城内をある程度散策することが許されているまつりは、いつの間にか、現在生存している四人の近衛や、その円卓を主に担当している召使いとも仲を深めていたのだ。
「……姫森ルーナ姫。夏色まつり様。お二人を、誘拐させて頂きます」
ノインは、いつに無く丁寧な口調でルーナの部屋へと侵入し、ルーナとまつりを両脇に抱える。
「ちょ、ちょ、なんなのら!?」
「もしかして……まつり達、拐われるの?」
ノインは、ルーナイト達の中でも圧倒的な筋力を持つ者として知られている。
そんなノインにとって、少女二人を持つことなど造作もないことであった。
「大丈夫。悪いようにはしないから。ただ……ルーナイトが、良くないことを企んでるみたいだから、二人の身を一回遠くに離すだけ」
「……裏切り者でもいたのら?」
「わからない。もしかしたら、団長達の方が裏切り者なのかもしれない。でも……そうだとしても、とにかく今は一刻も早く離れた方がいい」
「……まつり達の知らないところで、いろいろ起こってるみたいだね」
「ルーナ姫。すぐにフレイとアクアが合流するから、今はとにかく、団長に身を任せて。後で、アラネとリュウコも合流するはずだから」
「円卓みんなで来るのら?」
「うん。……さあ、お城を出るよ。壁を突き破るから、埃とか砂とかが入らないように、目を閉じといてねッ!」
「わかったー!」
「りょーかいなのらー!」
ノインは走りながら大剣を構え、大ジャンプの後に一回転。
「……【
ノインの右肩から右肘、右手から剣先へと、まるで重力そのものかのようなエネルギーが、電撃のように伝う。
その大剣は、周囲の花壇や訓練場の門を吹き飛ばし、城の内壁を貫き、そこから離れた外壁にも大穴を開けた。
〜姫森城・庭園〜
「んなぁぁぁぁぁぁい!久々の外なのらー!」
王室に軟禁されている身であるルーナにとって、外へ出る機会は貴重なものであった。
現在、ルーナに外を歩かせる際は、有事の際に備えて、円卓の騎士を最低二名は護衛として同行させなければならないという決まりがある。
円卓の騎士の数が多かった頃は、二人がルーナの護衛についたところで、残りの騎士達が他の任務にあたることができていた。
しかし、今やその円卓も四人。
その四人の中から二人を割くことができる機会は少なく、ましてや普段の巡回や討伐任務もあるため、いつの間にか、ルーナが外に出ることができる機会は無くなってしまっていたのだ。
〜おかしの国・城下町〜
「ノイン!お待たせ!」
「フレイ!」
「赤目」で知られるフレイが、屋根の上から刀を携えて合流する。
「フレイちゃ、弓はねぇのら?」
「ごめん、なんか今日は弓の調子が悪くてさ。結構時間かけて整備してもガタガタだったから、刀で出てきちゃった」
「フレイが刀なんて、珍しいね」
「うん。でも、弓にも負けないくらい自信はあるから大丈夫!背中は任せといてよ」
「ごめんね、まつりが戦えないせいで、ルーナの護衛に集中できないでしょ?」
「ぜーんぜん。一人守るのも二人守るのも変わらないよ。邪魔者は全員倒して、味方は全員守ればいい。……ただ、それだけでしょ?」
「か、かっけぇのら〜……」
「フレイ、結構脳筋なところあるよね……」
「そう言うノインも、脳筋そのものみたいな戦い方してるじゃん」
「あれ、円卓ってもしかしなくても脳筋の集まり……?」
「多分そうなのらね」
町の人々が騒ぎ立てる中、邪魔する兵士達を蹴散らしながら、城下町とブッシュ平原とを繋ぐ門へと到着した。
しかし、門を突き破らんと大剣を構えた、その時。
「突撃ィー!!」
ノインやフレイと同じ、残された円卓の騎士であるリュウコとアラネが、同時に奇襲を仕掛けてきたのだった。
響く力
異世界より紛れ込んだ幻想
とある少年は殺人鬼と相対する際、この能力に目覚めた
敵との相性があまり良くなかったため、あえなく敗北を喫したが、その能力は、確かに彼の成長に繋がった
この能力は、特定の対象一つに、並大抵の人間では動くことさえ難しいほどの強い重力をかける
ノインは、その幻想を己が物として用いた
ただ、それだけのことだろう