ホログラム・パラドクス   作:モガミのコッコ

34 / 123
「仕えるもの」の話

〜ブッシュ平原・墓守の丘〜

 

「ねぇ、AZKiちゃん」

 

「どうしたの?ロボ子さん」

 

二人の出会いから、半日と数時間後。

 

ロボ子さんは、朝日が顔を出したブッシュ平原の丘で鼻歌を唄うAZKiの肩に触った。

 

その手は冷たく、とても硬かったが、AZKiに初めて触れる知性体の手は、とても温かく感じた。

 

「AZKiちゃんには、ボクみたいに……ご主人様とかいたの?」

 

振り向くAZKiの視界に、ロボ子さんの幼げな顔が大きく映る。

 

優しくて無垢な、これから明るい未来を背負う少女のような顔つき。

 

しかしAZKiはその顔に、憂いとはまた違う、無機質で、どこか冷めたようなものを感じた。

 

「ご主人様かあ。私にはいなかったかも」

 

「そっかあ」

 

「記憶がないから、いなかった気がするっていうだけだけどね。でも」

 

「でも?」

 

「私の……いや、AZKiの世界を、もっと観たり聴いたりしてくれる人達はいたかも。なんていう人達だったかは、思い出せないけど」

 

「へー!ファンがいっぱいいたんだね!」

 

「ファン?……うん、そうだね。ファンがいっぱいいた。……ような気がする」

 

「やっぱりAZKiちゃんには記憶が無いのかー」

 

「うん。そもそも昔から歌を歌っていたり、ファンがいたり……そういうのも、本当に『そんな気がする』だけで、実は化け物だった……なんてことだってあるかも」

 

「いやいやそれはないでしょ〜」

 

ロボ子さんの頬が少し緩む。

 

化け物に対して何か思い入れがあったということは無いだろうが、旧文明のことだ。

何か、化け物が登場する冒険譚のようなものがあったのだろうか。

 

AZKiは、丘の斜面に座り込むロボ子さんの隣に座り、ロボ子さんの肩を寄せた。

 

「ねえねえ。ロボ子さんには好きな歌とかある?」

 

「好きな歌かぁ……なんだっけ。よく覚えてないや。でも、人間の街で流れてた歌は、全部素敵だったなぁ。[[rb:量産機>ファミリアー]]達も、みんな楽しそうに聴いてたよ。……まあ、昨日の夜に連絡を取ろうとしたら、誰の声も聞こえなかったから……多分だけど一機も残らず、みんな壊れちゃってたみたい。丈夫な素材で造られてるし、残骸くらいはあると思うけど」

 

再び雲がかかったような表情を見せるロボ子さんを前に、AZKiは少し考え込むような仕草をする。

 

「そうなんだ……ねえ、ロボ子さん。そのファミリアーって、中に入ってる魂が身体を動かす……みたいなタイプの人形?」

 

「そうだよ?よくわかったね。ちなみにボクも、そのタイプだよ」

 

「……ロボ子さん。ファミリアー達の残骸がある場所に心当たりは?」

 

「あるよ〜。今の世界だと、アルマ村?ってところらへんかも」

 

その返答を聞いたAZKiの目つきは、一瞬で変わった。

 

額から冷や汗が垂れる冷や汗から、ただ事ではないということが見てとれる。

 

「ロボ子さん、二人で今すぐそこに向かおう。……ちょっと思い出したんだ」

 

「いいけど……思い出したって?」

 

「私がここにいる理由。……私がどうして生まれたのか、私がどうして『歌姫』として存在しているのか」

 

「へー!良かったじゃん!」

 

「良かった……けど、これは思ったよりマズいことになったみたい」

 

「マズいって?」

 

「……今、この世界は『ウルハ』に蹂躙されつつある。そのことは、知ってる?」

 

「あー。それなら、なんかそういう人達の仲間っぽい女の子には会ったよ」

 

「会ったの!?」

 

「うん。ボクと『オトモダチ』になりたかったみたいだけど……人を食べるって言うから、断っちゃった。そしたら戦いになったから、軽くビーム砲を撃ったら逃げちゃったよ」

 

AZKiは目を丸くして、次第に口角を上げていく。

 

「ロボ子さん、もしかしてすごく強い?」

 

「うん!最終兵器だからねっ!」

 

「いける……ロボ子さんと一緒なら、アルマ村を……未然に救えるかもしれない!行こう、ロボ子さん!アルマ村へ!」

 

「うん!」

 

こうして、二人はアルマ村へ向けて歩みを進め始めた。

 

ロボ子さんには飛行機能があるものの、燃料すなわち食料の消耗が激しくなるため、AZKiに合わせて歩くことにした。

 

 

 

軽い足音と重い金属音が、平原の風に消えていく。

 

 

 

激しい横風は、物言わぬ予兆であった。




機械人形

古代兵器の一つ
稲荷博士によって造られ、白銀騎士団長率いる第1師団に配属された、命ある兵器達

人工知能によって自動で動き、敵を殲滅する

また、身体を失った者の魂を投入し、仮の身体として扱わせることもできる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。