〜おかしの国・城下町〜
ノインとリュウコが衝突し合った果てに決着がつく、その直前。
フレイとアラネの戦いもまた、互いの消耗により佳境を迎えていた。
もたもたしていては、ルーナが世界を認識してしまう。
フレイは焦るアラネの拳に刀の角度を合わせ、衝撃を逃がす。
右手、左手、右手。
続けて拳を前に出すアラネだが、それらはことごとくフレイの刀に弾かれてしまう。
「刀もろとも砕け散れッ!【
「【
アラネの拳は、フレイの刀をついに中央から粉々に破砕する。
「やった……!」
しかし、フレイの両手は未だ刀から手を離さず、炎もまた、消えずに刀の形を保ったまま燃え続けていた。
「罪なる炎よ、全てを巻き込め」
「嘘……」
刀身が砕け散った刀を振り、アラネごと辺りを炎の海と化すフレイ。
当然、フレイ本人も一瞬で全身に火傷を負った。
「ふぅ。……終わった、かな」
もはや持ち手と鞘だけになってしまった刀を地に落とし、そのまま倒れ込むフレイ。
そして、身体を炎に包まれたアラネもまた、その場にぱたりと倒れた。
「ははは、終わりか。どうせ、僕達はもうすぐ死ぬ運命だったんだね。元々、生まれてさえいなかったんだし。……案外、あっけないものだなぁ……はははは、はは……」
アラネは熱風が出入りする気道に、目一杯空気を吸い込み、そして吐き出す。
これが、フレイとアラネの最期であった。
〜おかしの国・核〜
はじめに、赤子が在った。
内にも外にも己以外に一切を持たず、故に一切の穢れをも持たぬもの。
赤子は無垢故に、世界の欠陥たる「何か」を発見した。
理など無く、短い糸が繋がっているだけの世界、「現実」の奔流を認識してしまったのだ。
しかし、彼女がそれに名をつけることはできなかった。
赤子は無垢、無垢にして無知であったのだ。
〜姫森ルーナ〜
はじめに赤子は、無垢を捨てた。
赤子は赤子では無くなった。
そして、それは騎士の姿をとった。
雑音。
次に少女は、比翼を捨てた。
少女は愛を見失った。
それらは竜と人になり、名を変え、そして混ざりあった。
雑音。
さらに少女は、剛きを捨て去った。
それは少女の形をとり、彼女の籠る心の殻、それを護る者と化した。
雑音。
雑音。
雑音。
最後に、少女は瞳を捨て去った。
それは燃え上がり、人の形をした導きとなった。
思い出せない。
雑音が、騎士達の姿が。
少女は思い出せなかったが、きっと彼女らの犠牲には意味が
「違うのら!
……そうじゃ、ねえのら。
騎士なんて、いなかったのら。
全部、ルーナの感情なのら。
ノインちゃは、ルーナの『赤ちゃん』で、
リュウコちゃは、ルーナの『愛』で、
アラネちゃは、ルーナの『身体』で、
フレイちゃは、ルーナの『真実』で、
でも、それだけで。
他の騎士なんて、いなかったのら。
ルーナが無意識に失ったと感じてたもの、それが七個で、
……変な話なのらね」
油に塗れて、それでも少女を貫き通したもの。
そして、夏色まつりによって愛を取り戻し、強く育ち、真実を見る瞳を取り戻した、ただ無垢では無い故に赤子ではない、一人の少女。
姫森ルーナは今、全てを認識したのであった。
一ノ太刀・炎罪
生命力を源とした炎を纏わせた刀で斬り捨てる剣技
生命は擦れ、摩耗し、大火となる
それは復讐か、或いは使命を帯びたものか
いずれにせよ、業の深い光であった