〜カバー南部〜
気がつくと、ルーナはまつりに膝枕をされた状態で眠っていた。
お菓子の国が崩壊を始めてから、突然に目をくわっと開いた後に倒れてしまったルーナを必死に抱えて「外側」へと飛び出したまつりは、[[rb:魘 > うな]]されていたルーナを自身の膝に寝かせていたのだ。
「ルーナ?……おはよう、ルーナ。まずは状況を……」
目を啓いたルーナは、まつりの膝から立ち上がる。
そして、崩壊しつつあるお菓子の国を外側から一目見て、まつりの方へ向き直った。
「大丈夫なのら。……全部わかってるのら……っていうか、本当は最初からルーナがわかってるはずのことだったのらよ」
「ルーナ?」
ルーナの正体を知らないまつりだが、ルーナの様子が以前と違うことは気配から感じ取っていた。
「……まつりちゃ。ルーナの役目、やっと思い出したのら」
「役目?それよりもルーナ、国が」
ルーナは、まつりが喋り切る前に首を横に振った。
「いいのら。ルーナが思い出したから、全部観測したから……あの国は国なんかじゃなかったし、騎士達は騎士でも何でも無かったのら」
「え……?ってことは、ノインちゃん達も……」
「円卓からは三人、ルーナのとこに『戻ってきた』のら。ノインちゃは……もう少ししたら、来ると思うのらけど」
「戻ってきたって……?今、ここにはまつりとルーナ以外、誰もいないけど」
「赤ちゃんじゃない『だけ』になってるっていうことが、三人が戻ってきたことの証明なのらよ」
「どういうこと?」
「円卓も国も、全部ルーナから抜け落ちた何かだったってことなのらよ。ノインちゃが抜け落ちたルーナは、赤ちゃんじゃなくて女の子になった。フレイちゃが抜け落ちたルーナは、現実を見れなくなって……リュウコちゃがいなくなったルーナは、人と愛を忘れて、アラネちゃがいなくなったルーナは、身体が肉体じゃなくなっちゃってたのら」
ルーナは自身に起こったことを全て話す。
そして、それを黙って聞くまつり。
「……」
「まつりちゃ、わかった風な顔してるのらけど、本当にわかってるのら?」
「わかんない!」
「えぇ〜」
何一つ理解できていなかったまつりに、思わず顔をしかめてしまうルーナ。
しかし、まつりはルーナとの距離をさらに詰め、肩を掴んだ。
「でも、大丈夫。ルーナの顔、前と違ってかっこよくなってるから、それで何となくわかった。なんかね、大人になったって感じ」
ルーナが「無垢」以外の全てを思い出し、来たるべき何かに向けて覚悟を決めた、それだけはまつりにも伝わっていたようだ。
「本当は大人になっちゃダメなのらけどね」
注:ルーナは赤ちゃんなのら。
そうこうしているうちに、お菓子の国は完全に崩壊し、そこには荒地だけが広がっている、本来の地形が姿を現した。
「ルーナ……まつり達、これからどうしようかな?」
「……どうもこうも、ノインちゃと合流して、ラスボスをやっつけるのら。そして……まつりちゃを元の世界に召喚し直すのらよ。それで、ルーナの役目は終わりなのら。それからは、ただの赤ちゃんに逆戻りなのらよ」
「……どゆこと」
「うーん、うまく言いにくいのらけど……」
「うん」
ルーナは咳払いをして、戸惑うまつりに、はっきりと言い放つ。
目の前の王国が消えた理由、違和感の正体、まつりがこの世界に召喚された理由、喋る赤子、ルーナの正体。
それらを全て。
「【雑音】」
しかし、ここで意識にノイズが走った。
こんな肝心なところで、どうして。
私は、なんで。
なんで、こんなところから俯瞰していたのだろうか。
違和感
「【雑音】も変なこと言うね。
……でも、そうなのかも。
夢だって、物語だって、誰かどこかの現実かもしれない。
……それが本当だったら、この世界は。
ああ。
この世界は、きっといつも通りだったのに」
知るべきではないこと、思い浮かべるべきではない夢
しかし、それでも人は夢を見てしまうのだろう
夢に果てはなく、幻想は現実を形作る
夢が叶うことの、いかに恐ろしきことか