~天界・カイン港~
今日は休日。
かなた、トワ、すいせい、の三人は朝から港の高台へ向かい、太陽の光を反射してキラキラと輝くカイン海を眺めていた。
「じゃじゃーん!ここが、僕の大好きな場所。二人にも、この景色を見て欲しかったんだ」
かなたは丘を登り、トワとすいせいに前方の海を指差して見せた。
「わぁーー……!」
「これは……星空……?」
「違う違う。水面が太陽の光を反射してるんだよ!」
二人とも、今まで海を見た経験が無いのだろうか。
トワは眺めている海のように目を輝かせ、すいせいは海を星空と見間違えていた。
かなたは斜面に座り、全身に込めていた力を抜く。
トワとすいせいには、つい数秒前まで幼い天使であったかなたの身体が気持ち膨張したように見えたが……二人は、きっと気のせいであろうと思い触れなかった。
「ねぇ、かなた。……何で天界って浮いてるのに海があるの?」
「え?そりゃあ、空には無限に水が湧いてくるから……?」
「「……もしかして知らない?」」
「そういえば、考えたこと無かったかも」
かなたの言っている通りであれば、地に落ちた水は無限に溜まり続け、いずれ世界は水没することとなってしまう。
しかし、世界はそうムチャクチャではない。
現に、地上は気候以外の要因で特に水が余ることも不足することも無く存在している。
かなたは生まれてからというもの、ココとの出逢いと別れを経験した日以外に地上を訪れたことも見たことも無い。
長い時を屋敷に籠って生きてきた箱入り娘が社会の実態を知らないように、ほぼ一生を天界で過ごしてきたかなたもまた、地上の世界を知らなかったのだ。
そしてトワも地上での生活を経験したことこそあるものの、長い魔界暮らし故か、海というものの存在に降れる機会が無く、それを知らなかった。
隕石から姿を現したすいせいは言わずもがなである。
しばらくの間、三人は「海とは何か」について考えながら丘で陽の光を浴びていた。
魔界に生きる悪魔であるはずのトワまで日光を浴びて癒されるというのは、些か仕組みがよく分からないものだが。
「……さて、そろそろご飯でも食べに行こっか」
かなたが立ち上がり、トワとすいせいも続こうとする。
しかし、その直後。
太陽から降り注ぐ光とは違う、眩い光を放つ雷が海に突き刺さった。
つい数秒前までの快晴は一転、一面の青空を暗雲が覆う。
目を丸くするかなたの目線、その先にある雷から姿を現すは怪鳥サンダーバード。
その姿はどこか不死鳥にも似た、それでいてどこかぎこちなく、キマイラのような要素を孕んだものであった。
「『KIARA』!ヴォッボァッボァッボァッボァッボァッボァッボァッ!」
海
生きとし生けるもの、その始まり
母なる海、その懐は深い
故に底は無く、訪れる全てを受け入れる
生も死も、そして永劫続く祝福或いは呪いさえも