ホログラム・パラドクス   作:モガミのコッコ

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雷・鳥、捕食者なるもの

~天界・カイン港~

 

三人の眼前に現れたる怪鳥、サンダーバード。

 

妙な鳴き声だが、それは確かに「KIARA」と聞こえる。

 

どこか不安定ながらも強力な雷と炎と纏ったその鳥は、確かに天界で生きる人々を蹂躙せんと暴走を始めた。

 

「鳥……!?」

 

「【喰式(グラビティ・イーター)】」

 

「展開、【匣剣(Iモノリス)】!」

 

かなたは拳を構え、全身の筋肉に力を込めた。

 

トワは右手に重力の塊を宿して放ち、すいせいは咄嗟に4つのブロックで構成された剣を生成する。

 

三人を相手に、全く引かず全身から雷と炎を撒き散らす怪鳥。

 

滑空によって的を薄くしてトワの右手から放たれた重力の塊を華麗に回避した直後、トワ目掛けて雷の槍をミサイルの要領で飛ばした。

 

「避けられ……!?」

 

「任せてッ!!」

 

トワの頭上に迫る雷、しかし、それはすいせいの匣剣(Iモノリス)に弾き返される。

 

「すいちゃん!」

 

「トワぴ!もう一回、さっきの撃って!」

 

「了解ッ!!【喰式(グラビティ・イーター)】!」

 

トワはもう一発、重力の塊を放つ。

 

その一発は、またも滑空した怪鳥に回避されてしまった。

 

しかし。

 

「やあああああっ!!」

 

「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

怪鳥が回避した先に、キューブを繋げて生成したハンマーを構えたすいせいと、拳を構えたかなたが待っていた。

 

「【匣槌(Tモノリス)】、【槌撃(トールハンマー)】!!」

 

「でぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

すいせいが持っていたキューブのハンマーは怪鳥の背面を叩き潰す。

 

そしてかなたの拳は頭部を打ち砕いた。

 

「ヴォヴァ、ヴァ、キケ、ケケケケケケ、キケ、キ、ザザザ」

 

それでも尚、怪鳥が意識を失うことは無かったが、声帯が捻じ切れる程の悲痛な鳴き声をあげた。

 

ヨロヨロと、今にも落ちそうになりながらも何とか飛び続ける怪鳥からまたしても発された声。

 

しかしそれは、それは掠れ切った何かの雑音にしか聞こえないものであった。

 

「ありゃー!?思ったより効かないなー!すいちゃん渾身の一撃だったのに」

 

「もう一度、隙を作らないと……!【喰……」

 

「いくよ!かなたん、トワぴ……?」

 

「【片光翼砲(ユニウィング)】」

 

さらに重力の弾丸を放とうとするトワと、ハンマーを振りかざそうと構えるすいせい。

 

しかしそこに降り注ぐは、炎を纏った光の柱。

 

右翼を広げ、電撃と炎を集めた「燃える雷」を放ったのだ。

 

燃え盛り、光り続ける雨。

 

「【匣銃(Lモノリス)】!二人とも、動かないで!」

 

すいせいはブロックを並べ替えて銃の似姿とする。

 

そして、流星の力を込めた光弾を降り注ぐ雷を狙って連続で撃つ。

 

トワとかなた、そして自身の頭上付近に落ちる雷を狙って放たれた星の力は、雷と衝突し合って爆発を起こし、しかしそれは拡散することなく、束の間の傘となった。

 

「「綺麗……」」

 

「見とれてる場合じゃないぞー!すいちゃんの早撃ち、受けてみやがれーーっ!【流星群】!」

 

星の如き光の弾幕。

 

流石の怪鳥も全弾回避は不可能であったのか、元より所々が砕けている全身を星に抉られた。

 

「キ、キキ、キケ、ケケ……ザザザ」

 

「今だよ!かなたん、トワぴ!」

 

「「【天使の拳、悪魔の魔術(闇夜を照らし朝日を覆い境界無く微睡みへ)】!!」」

 

刹那。

 

かなたの拳と、トワの清き闇を纏った左(てのひら)

 

丘から突き出た崖の果て、トワの闇に包まれた怪鳥は精神力或いは気力を奪われて硬直し、そのままかなたの殴打によって肉体を奪われる。

 

ピクリとも動かず、ただ雲を破って落ちていく「KIARA」。

 

その様は、とある世界、有り得ない筈だった最初の―。

 

「……一件落着、かな」

 

かなたは額の汗を拭い、大きく溜息をついた。

 

しかし勝利ムードに浸る間もなく、丘から街を全て見回したトワは、いち早く惨状に気付いた。

 

「でも、街が……」

 

先の片光翼砲(ユニウィング)によって広域へ撒き散らされた火を纏った雷は漏れなく天界の街や港へと降り注ぎ、地はおろか海さえも燃え上がっていた。

 

「そんな」

 

かなたは膝を突き、その場に崩れ落ちる。

 

「かなた……」

 

一方のトワは少し俯くが、崖際に座り込んでしまったかなたの手を取ってなんとか立ち上がらせ、生存者を探し始めんと立ち上がらせた。

 

「ねえ、トワ。あの鳥、戻ってきてないよね」

 

すいせいは放心状態のかなたではなくトワの肩を叩き、崖下を人差し指で差した。

 

「見てみる?」

 

「うん。お願い」

 

そう言って、崖下を覗くトワ。

 

しかし、そこに怪鳥の姿は無かった。

 

「大丈夫だよ、すいちゃん。あの鳥は戻ってきてな……」

 

「それっ」

 

蹴。

 

「えっ」

 

落。

 

かなたの目線、その先には、すいせいの伸びた脚。

 

そして、さらに先には崖から飛び出したような態勢で落下していくトワの姿。

 

かなたはトワを落とすまいと、崖際に伏せて手を伸ばす。

 

しかし、無情にもその手を伸ばした時には既にトワの身体は雲海を突き破り、被っていた帽子さえも視界に入っていなかった。

 

「ト、ワ」

 

「あっはっはっはっはっは!!これでいい、これでいいのよ。これで、私の望んだ……あの人の、彼女の望んだ未来を、贖罪を……」

 

「……すいちゃん?」

 

「私を知らない貴方が悪いのよ。だからノーカウントよ、ノーカウント」

 

「お前を……殺す」

 

恍惚とした表情で笑い続ける【雑音】。

 

一方でかなたは静かに拳を握りしめ、羽に纏っていた纏っていた橙色のオーラを燃え上がらせた。




注がれる香油

どこかの世界、どこかの地には、王たる者に香油を注ぐ文化があるという

それは紛うこと無き祝福の証であり、それは神に属すものであろう

人と神には仕えられぬ
ただ、神とは追いかける程に偶像であり、人とは追いかける程に咎であろうか
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