ホログラム・パラドクス   作:モガミのコッコ

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深みの視線と紅の王

~ブッシュ森林・アルマ村付近~

 

例の古代兵器群暴走事件から二日後。

 

ノエル、フレア、アキの三人は、一連の騒動を経て、ハーフエルフへの忌み子的な扱いが露呈した長老達が投獄された跡のエルフ達は、年齢や伝統に囚われない、新たなる村の長を求めていた。

 

「ねぇ、アキ先輩」

 

「どうしたの?フレアちゃん」

 

フレアとアキは、いつものようにヘイゼルベリーを摘みながら、井戸端会議に花を咲かせていた。

 

「アキ先輩は……村長とか、ならないんですか?」

 

「うーん、私はいいかなー。あの事件以来、神殿が何のために建てられたのか、いよいよ分からなくなっちゃったけど……。それでも、私は新しい『大地の巫女』として、改めて頑張っていきたいから。それに私は、フレアちゃんこそ村長に相応しいと思ってるけど」

 

「私?うーん、他に人がいなければ考えてみようかな」

 

「きっと、フレアちゃんなら上手くやっていけるよ」

 

「そうかなぁ。でも、もしそうなったら……あの長老達が支配していた今までとは違う、もっと皆が平穏に暮らせる村を作るよ」

 

「うん。フレアちゃんが長になったら、私も全力で応援するね」

 

その後、村へと戻った二人は今までと同じように、それぞれ警備と祈祷を始める。

 

しかし、フレアは日暮れに合わせて持ち場を離れ、長老達が座っていた王座、その最も大きなものに腰を下ろした。

 

「これが、私に必要なもの……なのかな。私が、皆を守るために……」

 

~アルマ村・古代兵器群~

 

一方のノエルは暴走しなかった古代兵器「ラディス」の残骸を処分するため、大地の神殿付近をうろついていたていた。

 

「暴走しなかったラディスも結構いたんだね」

 

ノエルはラディスの残骸を片っ端からメイスで殴りつけて破壊しながら、足を前へと進めていく。

 

するとノエルは、綻んだラディスの残骸に紛れて動く、数体の動くものを見つけた。

 

山吹色の光を放ち、邪気は放っていないものの、確かに二本足で歩いているもの。

 

「……まさか、性懲りも無く動いているのがいたなんてね」

 

ノエルは力一杯に足を地へ踏み込み、メイスを構えて山吹色の光へと突撃。

 

「【冷たい重打】」

 

「なっ……!?」

 

ノエルはメイスで、それらを次々と叩き潰していった。

 

「ヤ、ヤメ……」

 

「【フォールオブゼロ】」

 

辺りには轟音が響き渡り、周囲のそれは言葉を発する間もなく血霧と化していく。

 

重力と冷気、それらは凍りついた肉体を一瞬にして砕き、無双と呼ばれた白銀ノエルの名を欲しいままにしていた。

 

「キャアアアアアアアア」

 

「【冷たい重打】」

 

【雑音】

 

それからノエルは動いているもの、動いていないもの問わず、ラディスと思われるもの全てを破壊し尽くした。

 

辺りに広がるは鉄塊と生体部品らしき僅かな肉片、そして清らかなる血。

 

まるで殺人現場のようだが、古代兵器は人間を模して造られたものが多いため、それも仕方が無いのだろう。

 

【雑音】

 

一仕事終えて疲れ切ったノエルは、虚ろな目をしたまま神殿を離れる。

 

「ふぅ。念のために見回りしておいて良かったぁ……。これで、もう本当に悲劇は起きないよね」

 

斜陽。

 

【雑音】

 

古代兵器の残骸を破壊したノエルと、変わらぬ日常に加えて少しの工作を過ごしてきたフレア。

 

【雑音】

 

彷徨う騎士と赤目の器、村へ戻ったノエルとフレアは、いつものように二人の家へ帰る。

 

「随分とお疲れだねぇ、ノエちゃん」

 

「うん……ちょっとね」

 

「ねえ、ノエちゃん。……明日はちょっと付き合ってくれない?」

 

「いいけど……どうしたの?」

 

「……警備隊長として村と皆を守っているうちに、やりたいことができちゃって」

 

生まれて初めて見出した夢に瞳を輝かせるフレアと、それに寄り添うノエル。

 

そして、そのままノエルとフレアは同じベッドで眠りについた。

 

かつて在るを許されなかった騎士と、それを許さなかった器。

 

その二つが交わる時に見出されるは混沌か平穏か。

 

しかし、木々の隙間から差し込む光が、その末を物語っていた。

 

紅き瞳よ、救世主たれと。




英雄


強き者、賢き者、或いは愚かなる者
そのどれもが英雄たり得る

だが英雄の末路は、碌なものではない
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