~???~
「KIARAは……やられちゃいましたか……。いやぁ、困りましたねぇ」
キーボードで何かを打ち込みながらモニターと向き合う稲荷博士。
スーパーコンピューターに繋いでいたKIARAシステムは、すっかり機能を停止していた。
「ああ、プログラムが粉々ですなぁ……。やっぱり、本体の身体を探した方が良いんですかねぇ」
稲荷博士は端子に差し込まれていたプラグを引き抜いて、KIARAだったものが入っていたデータカートリッジを部屋の床に投げ捨てた。
「……でも、この広い世界のどこにいるか、手がかりも掴めてませんからねぇ」
そして新たなカートリッジをスーパーコンピューターに繋げて、新たなシステムの起動を試みる。
「INA’NISシステム……こっちはKIARAと違って素直じゃないですけど、きっと活躍してくれますよね」
「INA’NISシステム、スタンバイ」
物々しい起動音と共に、一つのシステムが起動する。
「……よしっと。今のうちに、私も動かないとですねぇ」
そして稲荷博士もヘッドギアを装着し、カプセル内へ潜り込んだ。
「そろそろ、化けの皮を剥がす時ですかぁ……自分で自分を騙すのは、ちょっと複雑でしたね」
少し渋りながらも、稲荷博士は意識を手放した。
~名も無き町~
この町には見覚えがある。
少女は、かつて通っていた高校の屋上から、ゴーストタウンと化した町を眺めていた。
廃墟と化した建造物の一つ一つには植物のツタが絡まり、しかしそこには確かに文明の残滓が感じられる。
「まだいるんだ……この世界を続けようとする誰かが」
昔ながらのセーラー服に身を包み、人並外れたジャンプ力で校舎から塀へ、建造物から建造物へ飛び移る少女。
一際輝く星の髪飾りも、もはや誰も見ることは無い。
祈りを捨てた少女は一人、己が見出した少女達の身を親友に任せ、未だ理に反する者の行方を掴むべく動いていた。
「世界は、もう……これ以上、この世界が腐っていくのを見るのは耐えられないよ」
電波は飛んでいないものの、少女は辛うじて電池だけが生きているスマートフォンを握りしめる。
「新たなる契約……」
そう呟いて、彼女は町から森の奥へと消えていった。
何物にも、寿命というものは存在する。
形あるものは壊れ、そして再生する。
生物・非生物、有機物・無機物を問わず、刻限は容赦なく迫ってくるものだ。
そして世界というシステムもまた、その例外ではない。
酷使したバッテリーは蓄電できるエネルギーが少なくなっていくように、寿命が差し迫った世界もまた、狂気と異常に塗れていくのだ。
少女は嘆いた。
「皆と、ずっと友達でありたかった。ただ、そうして生きていたかった。……それだけなのに」
理不尽に打ちひしがれた少女の瞳は光に満ちながらも、どんな愚者のそれよりも淀み切っていた。
INA'NISシステム
とある異世界
研究者は宙を舞う機人、その極を求めるべく叡智に狂い果てた
その果てに生み出された一つの完成形となるはずだったものを稲荷博士が転用し手を加えた、緻密なプログラムにして情報の塊
鋼鉄の巨人を操る者の脳に殺人的な反応速度で戦闘シミュレーションデータを送り込み、戦闘に活かす
その演算技術は、幻想を取り込んだ未来を描く足掛かりとなった
深みより出でし魔、それは大いなる海の気まぐれだろうか