~ムラサキ村・桜神社~
「赤」との交戦を終え、ちょこはメルをムラサキ村へと連れていく。
真っ暗だった空も、少しずつ明るくなっていく。
吸血鬼のメルを手っ取り早く屋内へ連れていくため、ちょこは桜神社の境内へと移動し、相も変わらず放心状態のみこが座らされているイスが置いてある小屋へと、メルの身体を運んだ。
これなら、メルが日光に当てられて力を失う事も無い。
ちょこは境内と村を繋ぐ階段に座し、夜明けを待っていた。
「ふぁ~ぁ。おはようぺこ、ちょこ先生」
「おはよう、ぺこら様。……そろそろ朝日が昇ってきますね……ふぁぁ」
「そうぺこねぇ……ちょこ先生、ずっと見回りしてたから……眠いんじゃないぺこか?」
「そんなこと……すぅ」
「やっぱりあんた無理してるぺこだよ!連れてきた黄色のねーちゃんと一緒に寝てきなぁ!」
「そうしようかな……ふぁぁ」
境内から村を見下ろすぺこらを横目に、ちょこは小屋へと向かう。
「……この村も、いつまで保つぺこかな」
つい昨日、丘の上に住む村人から聞いた話。
海辺の霧に包まれた王国の廃墟が、一瞬にして塵と化したのだそうな。
昇る朝日。
しかし、ぺこらにはそれが斜陽にしか見えなかった。
「流石に不安ぺこだけど……こんだけ人数がいれば、ポンコツが追い払ったヤツが襲ってきても……何とかなるかもしれないぺこだね」
そんな中でも唯一見出すことが出来た希望。
それは、輝きを宿す少女達の存在だった。
「皆……頼りにできるのはあんた達だけぺこだよ。それと、『エリート』……早く起きろぺこ」
ぺこらは小屋へ戻り、みこの寝顔を撫でた後、眠っているちょこに代わって朝食を作り始めた。
にんじんを中心とした野菜と豚肉をトマトソースで煮たスープと、ライ麦のパン。
そしてライムを一欠片、皿の隅に添えておく。
「……よしっ、割とよくできてるぺこ。皆を起こさなきゃ……」
最後に味見を済ませたぺこらは釜戸の火を消し、シオン、メル、二度寝を始めてからしばらく経つちょこ、そして、起きたとて正気を取り戻す見込みは薄いであろうみこを起こしに寝室へ向かう。
「あんた達ー!!もう朝ぺこだよー!!日の出からめちゃめちゃ時間経ったぺこだよ!いい加減起きろぺこー!」
「ふぁぁ……もう朝~?」
「起こすのが早いわよぺこら様~」
「おはよう……えっと、ここは……?」
「………………」
その声に、それぞれの反応を示す少女達。
そして、やはりみこは返事どころか目を開くこともしなかった。
兎のスープ
兎獣人の長、兎田ぺこらの得意料理
兎と人間の特徴を併せ持つ兎獣人の長であったぺこらは、しかし村の壊滅により盗賊へとなり下がった
そんなぺこらが、女王であった頃から村人達に振る舞っていた煮込み料理風のスープ
それはかつて村を訪れた、玉葱に似た甲冑を身に纏った騎士から教わったレシピを元に作ったものらしい
食材に宿っていた生命力の温かみを感じる味わいで、飲めば元気が湯水のように湧き出ることだろう