ホログラム・パラドクス   作:モガミのコッコ

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深みの残り香

~アルマ村跡~

 

「ウルハ」の息がかかった者の存在を感じ取っていたAZKiとロボ子さんは、二人でアルマ村へと向かった。

 

「エルフの村……どんななんだろうなぁ~。素敵な歌とか綺麗な楽器の音とか……聞けるかなぁ」

 

「きっと、美味しいものとかいい香りのお花とか……いっぱいあるよ~」

 

各々、エルフの村に期待を寄せる。

 

そして二人が辿り着いたのは、ブッシュ森林。

 

……が、かつて存在したであろうどこかであった。

 

「「森が……無い?」」

 

焼失した森を前に、唖然とする二人。

 

確かに、ここには森と村があった。

 

ロボ子さんの記憶とAZKiの歌を聴きに集まった人々の話。

つい数日前まで一切の関係を持たなかった二人の記憶が繋がっているということは、これはおそらく、紛れも無い事実なのだ。

 

しかし、今ここには森も村も無い。

 

あるのは木や家屋であったらしき灰の山と、ドロドロに溶けた神殿跡らしき石造りの建物の残骸だけであった。

 

「まさか……もう『ファミリア―』が暴れて……?」

 

ロボ子さんは「ウルハ」の息がかかった古代兵器の暴走を案じたが、特にそのような跡は見当たらない。

 

それどころか、アルマ村として認知されている場所は、かつて白銀聖騎士団の古代兵器部隊が消息を絶った場所であるにもかかわらず、そのような兵器はおろか、部品の一つも落ちていないのだ。

 

「いや、でも……古代兵器が暴れたって……村って、ここまで何も無くなるまで壊れるかな……」

 

AZKiも焼け落ちた灰の山を前に、これが古代兵器の乱雑な壊し方ではないと気付く。

 

そもそも「ファミリア―」及びそれに類する量産型の古代兵器が暴走したことがアルマ村崩壊の原因なのであれば、「神殿が形を保ったまま焼き溶ける」などという事態には陥らない筈なのだ。

 

「うーん……。確かにボクも、こんな壊され方をしたトコを見るのは初めてかも」

 

そして、それには数ある古代兵器の中でもトップクラスの性能を誇ったワンオフ機であるロボ子さんも気づいているようで……神殿の壊れ方を見て、何か違和感を覚えたようだった。

 

「わっ、何あれ……?」

 

そんなこんなで、探索すること20分。

AZKiは、ちょうど広場……「アゴラ」と言うべきだろうか、それに近しいものであったらしき場所を発見した。

 

そして、その中央に位置する場所に、二つの人骨と、そのそれぞれに対応していると思しき指輪を発見する。

 

片方は絶えず燃え続け、もう片方は漏れ出す邪気を炎に絶えず燃やされ続けているという、何とも奇妙な光景。

 

しかしそれを目にするだけで、AZKiはこの村で起きた惨劇を背筋で感じ取ってしまった。

 

「どうしたの、AZKiちゃん……?」

 

「来ちゃダメっっっ!!」

 

AZKiの姿を見て、視線の先にある指輪へ近付こうとするロボ子さんに、AZKiは珍しく声を張り上げた。

 

「わっ、な、何で……?」

 

ロボ子さんは驚き、足を止めて振り返った。

 

「その指輪は……多分、ダメだと思う……あの指輪には、誰も関わっちゃいけないって……そういう風に感じたんだ」

 

AZKiは「歌姫」という概念の化身。

故にこそ、感受性に優れているのだ。

 

そして今、その第六感が指輪を視界に入れた瞬間に危険信号を発した。

 

きっとこの指輪には、近付くべきではないのだろう。

 

「……えっと……じゃあ、帰ろうか」

 

「ファミリアー」は見つからない、エルフの村も無い。

完全に目的を失ったロボ子さんは、再び森の外へと向かって歩き出す。

 

「そう、だね」

 

そして、AZKiも「ここにいるべきではない」と感じたのか、すぐさま森に背を向けた。

 

歌姫と機械人形は森を去る。

 

AZKiは指輪から深みの気配を感じ取っていた。

故に、ロボ子さんからあの指輪を遠ざけたのだ。

 

しかし、AZKiはあの二つの指輪から別の……何か。

入り乱れた感情のようなものを感じ取っていたのだ。

 

「ねぇ、AZKiちゃん。……あの指輪、結局何だったんだろうね」

 

「……ね」

 

それは、最後に二人の少女が遺したもの。

悲劇の果てに、愛を、ただそれだけを取り戻した二人の魂が宿った指輪。

 

「どうしたの、AZKiちゃん?」

 

混ざり合う業火と深淵。

 

それもまた、二人の愛の形であったのだ。

 

そしてAZKiは、指輪がただ深淵と業火を放出し続けるだけの物では無いことにも、気が付いていたのだ。

 

「……さようなら」

 

しかし全てを察して尚、この村で起こった事をロボ子さんには放そうとしなかった。

 

手招きをするロボ子さんの方へ駆け寄るAZKi。

 

「ねぇ、これからどうしよう?ボク達、目的を失っちゃったよね」

 

「どうしようね。悪い予感も……私の勘違いだったみたいだし」

 

少し言い淀んで、しかし、返答を続けたAZKi。

 

「これは私達が関わるべき問題では無いのだ」と、自分自身に言い聞かせていたのだろうか。

 

「これから、どうしようね」

 

「ね、どうしようかな。とりあえず、私の家にはいつまででも居ていいけど……そうだ、ロボ子さん!明日の朝、近くの村に行ってみない?もしかしたら、まだ動いてる危険な『ファミリアー』とか、『ウルハ』とかの事について知ってる人がいるかも!」

 

「いいねぇ!行こ、行こ!」

 

ブッシュ森林跡を抜けた二人は帰宅後、すぐさま翌日の出発に備えるべく、食料や道具を用意することとなった。

 

役割を分担し、様々な荷物を荷車に詰める二人。

 

彼女達は、また新たな出会いと別れを前にしようとしていた。




ファミリア―


古の時代、白銀聖騎士団によって製造された量産型の機械人形
Radical-buster-crusade-TypeOシリーズ、そのファーストロットとして製造された三機の内、唯一残った三号機ことType3Oの量産計画である「Familiar計画」によって造られたもの

「Radical-buster-crusade-TypesLeo」、「ラディス」とも呼ばれるそれは、後に「ウルハ」によって操られ、「ファミリア―」と呼ばれるに至った

RBCシリーズは命ある機械人形、故にこそ、死霊術師の傀儡となり得るのだ
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