~???~
「いやー!美味しかったですなぁー!」
「むにゃむにゃ……眠たくなってきちゃった」
「うーーん……ウチも、久しぶりにお腹いっぱい食べちゃったよー!」
食事を終え、境内へと戻る三人。
膨れた腹をさするフブキ、伸びをするミオ、そしてそんなミオに寄り添いながら歩くあやめ。
しかし境内に続く階段の手前、謂わば最初の鳥居前。
そこで、あやめの顔が一瞬にして強張った。
「……フブキちゃん、ミオちゃん。右、何かいる余。……3、2、1で、余に合わせて」
あやめの囁きでミオとフブキも気配に気づき、右に意識を向ける。
「「……わかった」」
右手で刀の鞘に手を置く二人。
……辺りの空気はピンと張り詰め、緊張が走る。
「3、2、1……」
刹那。
物陰から現れたるは、白い体毛を纏った巨大な獣。
いつか大空スバルと角巻わためを喰らった狐。
その歯が、あやめの刀と鍔迫り合いをするかのように擦れ合う。
「ホウホウ……サスガデスネ」
「【
あやめは二本の刀に魔力を込め、獣の歯を弾く。
「【
「【
そこに、フブキとミオが刀を構えて切り込んだ。
「グアッッッ!?」
ミオの斬撃は獣の右前脚を捉え、斬り落とす。
「今だよ、フブキ!」
「任せて!でやぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!」
そして、高く飛び上がったフブキは上空から回転斬りを繰り出し、巨大な狐の太い首に剣先を突き刺した。
「ギャアアアアアアアッッ!」
狐の悲鳴が辺りに響き渡る。
「斬ッッッッッッ!!」
フブキは身を翻し、そのまま刀をぐるりと回して首回りを一周。
そのまま首を捻じるように刃を通し、背骨ごと狐の首を斬り落とした。
「グエエエエエエァァァァァァァァ!!」
イタチの最後っ屁のつもりか、血液と肉片を撒き散らしながら、のたうち回る狐。
しかしそれもやがて静まり、巨大な狐は道の真ん中に横たわった。
「……も、もう終わり……?」
「なの、かな……?」
恐る恐る、狐の死骸に近付くフブキとミオ。
「あっさりし過ぎてる余うな……?」
しかし死骸がピクリとも動かないことを確認したフブキとミオは、一足先に境内へと歩き出した。
一方で、未だ狐の死骸から離れようとしないあやめ。
少し膨れた腹をさすりながら、階段を上り始めようとする二人。
「あれ?あやめ、早く来……フブキ、危なぁぁぁいッッ!!」
「フブキちゃん、避けてっ!!」
フブキの背後から迫り来る刀。
ミオは肩を突き出し、フブキを突き飛ばして自身が身代わりになろうとする。
しかし、この一瞬ではタックルの距離がフブキまで伸びない。
あやめも瞬時に手を伸ばすが、刀は止まらず。
「あ……かはっ」
「終わりです、私……いや、『黒ちゃん』」
その剣先は、フブキの心臓を一瞬にして貫いた。
「フブキッッッッッッ!!!」
「フブキちゃんっっ!」
フブキの髪はみるみるうちに黒く染まり、服の色も白を基調に水色を差したものから、黒を基調に赤が差し込まれたものと変化していく。
「がはっ!!……これは……白上……いや、『稲荷』!テメェ……!ガァッッッ」
白上だったモノ、それの胸部から刀がゆっくりと引き抜かれる。
「はーあぁ。デッカい狐の身体を操るのも大変ですねぇー。やっぱり、この身体が一番です」
「フ、フブキちゃんがフブキちゃんを殺したら……元々フブキちゃんだった方が黒くなって……?」
「フ、フブキが二人……!?」
今の今まで「白上フブキ」であった筈の少女は、みるみる「黒ちゃん」と呼ばれた別人と化していく。
そしてたった今、そんな「黒ちゃん」を殺した「稲荷」という少女が、まるで元から白上フブキであったかのように振る舞っている。
そんな筈が無い、そんな筈が無いのだが……口調や容姿の隅々に至るまで、二人に対する態度以外はミオとあやめが知っている白上フブキと完全に一致するのだ。
「……ごめんね、黒ちゃん。それと……今まで、『白上フブキ』になってくれてありがとう。これからは、当たり前に『黒上』として死んでいってね」
「……ちょっと、どういう事!?どうしてあの狐の中からフブキが出てきたの!?今まで一緒に過ごしてたフブキは!?」
ミオとあやめをよそに、黒上の遺体の頭を撫でるフブキ。
そこに、今の状況を呑み込めないミオがたまらずつっかかる。
「ああ、ミオにも話してなかったっけ、私のこと」
「……何?」
「本物の白上フブキは私で……今まで『カミ』をやっていた白上は、私の分身……『黒上』に、『白上フブキ』の概念を植え付けた存在だったってこと」
「「概念を……植え付ける……?」」
フブキはさらに続ける。
「人は誰しも、概念無しに物事を認識できない。……そしてそれは、『この世界』も同じこと。だから、『カバー』が認識する『白上フブキ』の概念を植え付けられた黒上は、本当にこの世界にとって、『白上フブキ』になってしまっていた……有り体に言えば、『黒上が白上として認識される』催眠を、この世界そのものにかけたてことですよ」
そう言って、フブキは黒上の遺体を右手から生み出したブラックホールのようなものの中へ吸い込んで力を喰らう。
「……じゃあ、今まで喋ってたフブキは……?」
「私の偽物ですねぇ~。で、本物は今の白上、つまり私。……この世界で生きる『皆』の様子はずっと見てましたよ。黒上と仲良くしててくれてありがとう。……『ミオ』」
「……やめて」
「ええ~?何をやめるんですか?ミオ?」
「……その呼び方だよ、『稲荷』……!」
ミオは拳を震わせながら、合図してあやめを後ろへ下がらせる。
「私も『この世界では』白上ですよ?さこれからも仲良くしましょう、ミオ……?」
ゆっくりとミオへ近寄っていくフブキ。
「うるさいッッ!!」
「……っ!?」
しかしミオは、手を差し出したフブキの頬を思い切り殴り飛ばした。
「この世界の話なんてどうでもいいよっっ!!ウチにとっての『白上フブキ』は!!今、『稲荷』が殺した『黒上』なんだよっ!仲良くだなんて……ふざけないでよっっ!!」
そして一瞬の内に刀を抜き、フブキの側へ詰め寄って左腕を斬り落とした。
「なっ、ミオ……!……うああ」
「稲荷。……流石にあなたのことはウチでも許せないよ。もう二度と、ウチの前にフブキの姿と声でウチの目の前に姿を現せないようにさせてもらうから……覚悟して」
「ゲホッ、ゲホッ!ミ……ミオオオオオオオオッッ!!」
フブキは失った左腕の代わりに、異世界から持ち込んだデータから取り出した機械義手を左肩に接続し、赤と黒、禍々しい邪気を放つ二振りの刀を握ってミオの懐へ潜り込んだ。
そしてミオもまた、異世界と繋げた口内から脇差を取り出して自前の刀と併せて握り、構える。
一人の鬼が冷や汗を垂らして見守る中、白き神と黒きカミが今、衝突しようとしていた。
斬星大魂
鍛え上げられたミオの剣に宿る技
「スター」のカードを通じて流星の力を刀身に宿し、一太刀に仇を斬る
大神には、守るべきものがある
為すべきことを為す、何処かの世界から流れ着いた巻物より見出した剣技