ホログラム・パラドクス   作:モガミのコッコ

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あくあとアクア

~サーバ海~

 

あくあの激励により、本来在った船長の誇りと自信を取り戻したマリン。

 

たった二人、ボートで大海原を駆ける宝鐘海賊団。

 

海の果てを目指す彼女らは、今日も緩やかな波に揺られて先へ先へと進んでいた。

 

不思議なことに、波がボートを浜辺へ押し戻すような事態には一度も陥っていない。

 

「ねぇ、船長。海の向こう側を目指すなら……そろそろ、どっかで立派な船……作らない?」

 

「それもそうですねぇ~……。ここはまだ波が穏やかだから良いですけどぉ、確かに果てに近付いたら簡単に転覆しちゃいますぅ」

 

数時間後。

 

~カバー南部~

 

マリンはオールを漕ぎながら、その船体を段々と陸へ近付ける。

 

「せんちょ?」

 

そして、すぐにボートに乗せていた積み荷を降ろして浜辺を歩き始めるマリン。

 

「さぁて、ここからはお菓子の国を目指して陸を行きますよぉ!」

 

「ま、待ってよ船長!」

 

突然に始まった陸での行動に戸惑うあくあ。

 

無理もない。

 

これからやろうとしていることは海賊ではなく、明らかに山賊なのだから。

 

出遅れるあくあを先で待ち、そしてその手を握るマリン。

 

「いやぁ、こんなに愉快な気持ちで歩くのは久しぶりですねぇ」

 

「せんちょ、大丈夫……?もう、元気になった……?」

 

「うん、あくたんのおかげで、元気になりましたよ。……今の船長に、昔の一味はいませんけど……あくたんがいますから。散っていった一味のためにも、必ずや世界の果てを見てやりますよぉ!」

 

「うん、うん!!その意気だよっ、船長!」

 

すっかり元気を取り戻したマリンは、あくあの手を引いて丘を登る。

 

ゴツゴツとした岩砂漠を超え、前へ前へ、だんだんとお菓子の国へ近付いていく。

 

「さぁて、着きましたよぉ……って、あれ?」

 

すぐ近くまで船で近付いていたにもかかわらず、一時間と少しは荒地を彷徨うことになった二人。

 

しかし、岩砂漠を抜けて荒れた丘を登った後、すぐ目の前に広がるのはお菓子の国……。

 

ではなく、かつて栄えていたであろう都市の残骸が残っていただけの荒地であった。

 

「廃墟……?」

 

あくあは、マリンに先行して廃墟へと足を踏み入れる。

 

足元に大量の水を発生させ、砂だらけの道を波乗りのようにすいすいと進んでいくあくあ。

 

「あっ、待ってくださぁい!あくたん!」

 

つい先ほどまでとは見違えるように先を急ぐ。

 

急いでそんなあくあの後を追いかけるマリンであったが、あまりにも速いあくあとの距離は離れていくばかりであった。

 

「この辺りに、あてぃしの……!」

 

都市の中心部、ここは廃城だろうか。

 

砂まみれの食堂跡らしき場所に転がっていた一本の、おそらくは骨髄と思われる骨片。

 

「あくたん!どうしたんですか、突然……!」

 

やっとのことであくあへ追いついたマリン。

 

座り込んだあくあは、何やら両手に持った白い塊に紐を通し、首にかけようとしている。

 

「みつけた、やっと……!あてぃしの、姿……!」

 

脊髄のペンダントをぶら下げるあくあ。

 

彼女は豹変したように、そして取り憑かれたように骨髄を握りしめた。

 

「あくたん!?あくたん、何やってるんですかぁ!」

 

「大丈夫だよ、せんちょ!これは、あてぃし……私の、『海原』……!」

 

「あくあん!水がっ!」

 

「大……丈夫……っ!」

 

あくあの身体は骨髄から溢れ出した液体に溶け、混ざり合う。

 

「あくたぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

やがてそれは一度スライムのような軟体となり、しかし、すぐさま再び人型を取り戻す。

 

混ざり合っていた肉体と骨髄は再び本来の形へ戻る。

 

分かたれていた海は再び接合する。

 

丸い星に果ては無く、ただ巡り続けるのみ。

 

しかし、この世界の海は。

 

海の果てを視る者は。

 

「……これは、私の果て。私が見た世界。海の果ては……『ある』よ、船長っ!!!」

 

水無くして海無く、海無くして水無し。

 

「湊あくあ」は、水の王女と化した。

 

「ああ、よかった……よかった……!無事だったんですね、あくたんっ!」

 

白に紫と水色のリボンが特徴的なドレスを身に纏ったあくあを抱きしめるマリン。

 

「せんちょ、勝手に先行ってごめんね」

 

「いいんですよ、いいんですよぉ!あくたんが無事なら、それで……」

 

廃墟のど真ん中、城跡らしき場所にて抱きしめ合う二人。

 

探していたお菓子の国は、既に廃れて久しかった。

 

しかし、そこには間違いなく、あくあにとって分け身のような存在が残っていたのだ。

 

「まさか、そっちの方から来てくれるなんて……」

 

声が一つ。

 

「……誰ッッ!?」

 

すぐさまマリンは声の方角へ振り向き、銃を向ける。

 

しかし、そこに在ったのは見知らぬ少女の姿が、二つ。

 

そして足音も二つ。

 

「落ち着くのら、『マリン船長』!ルーナ達は敵じゃないのらよ」

 

「そうだよ、だから銃を下ろして~」

 

そう言って、抱き合うマリンとあくあの側へ駆け寄る、何やら薄い桃色のドレスに身を包んだ少女。

 

その少女に続いてもう一人、ポニーテールの少女も丘を滑り落りるように近づいてくる。

 

「何でマリンの事知ってるんですかぁ、キミは」

 

「そりゃあ大海賊マリン船長っていったら有名なのらよ」

 

「……っていうか、キミたちぃ……誰なんですかぁ?」

 

「私は夏色まつり!で、こっちの姫は……」

 

「姫森ルーナなのら。伝説の大海賊、マリン船長を探して旅をしようと思ってたのらけど……船長の方から来てくれるとは思ってなかったのら」

 

「探すって……何でマリンを探そうと思ったんです?」

 

「……頼みが、あるのら」

 

「何ですかぁ?」

 

「……ルーナ達を、船長の船に乗せて欲しいのらよ」

 

ルーナとまつりは片足を立てて腰を下ろし、マリンの元に跪いた。




月の魔物


かつて獣の街に君臨し、最初の獣狩人を捕らえた「カミ」のようなもの

彼女は非常に慈悲深く、救い無き者に理想の夢を見せる
素晴らしき夢を見た朝の目覚めも、きっと素晴らしいものだろう

だが最初の狩人は己の業を背負って離さず、決して夢に溺れなかった
救い無き現実を前に、夢に溺れることなど敵わなかったのだ
故に、最初の狩人は心折れぬ。ただ、罪の中でならば
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