~カバー南部~
煌びやかな純白のドレスを身に纏ったあくあと、桃色のドレスを身に纏ったルーナ。
二人のプリンセスが居合わせたお菓子の国跡地。
そこに、しばらくまつりとルーナの元を離れて周囲の巡回にあたっていたノインが再び姿を現した。
「周辺、異常無しだよ……あれ、そっちの二人は?」
「ああ、ノインちゃ。巡回お疲れさまなのら。こっちの二人は、宝鐘海賊団のマリン船長とあくあちゃなのらよ。……今、その船に乗せて欲しいってお願いをしたのらけど……」
「残念ながら、今のボートは二人とちょっとした荷物を載せるだけでもういっぱいなんですよねぇ……」
「……って、わけなのら」
「どうしようね~」
「流石にあてぃしでも全員を長時間波乗りさせるのは難しいし……」
「「「「うむむむむむむむ」」」」
全員で出発しようにも、船のサイズと強度に頭を悩ませる四人。
「そういえば、姫森城に資材置き場ってあったっけ。……見てくるね、ルーナ姫!」
岩々と蹴って空中を飛び回り、資材置き場へ向かうノイン。
「……自分のことながら、すごいのらね」
「どういうことですかぁ?」
「そういえば、二人には話してなかったのらね。あのノインちゃって騎士……実は」
ルーナは「円卓の騎士」が何であったか、在った筈の国の行方も含めて、自覚した全てを語り切った。
「「へぇ~……」」
マリンとあくあは、未知の領域にある話であったためか、話を聞きながらもポカーンとして、文字通り理解に苦しむ。
「まつりにもよく分からないけど、ルーナはとんでもない力を持ってる」
「その分、消耗も激しいのらけど……でも、きっとマリン船長の力になれるのら。今はただ立派な船を作り出すだけの力が残ってないのと、船に関する知識がルーナにぜーんぜん無いのが苦しいだけなのらね。イメージが掴めないモノは作れないのらし、そもそも『おかしの国』自体を作っちまったことがそもそもイレギュラーなのら」
「ど、どゆこと……?」
「えーっとぉ……あまりにも衝撃がデカすぎて混乱してるんですけどぉ……ルーナたんは条件付きで何でもできる能力を持ってるって事ですかぁ?」
首を傾げるマリンとあくあ。
「うーん、ルーナも説明しづらいのらけど……そんなもんだと思ってくれればいいのらよ」
ルーナが溜め息をつき、どうしたものかと立ち上がった時。
「ルーナ姫ー!あったよ、資材!ちょっと少ないかもしれないけど!」
丁度ノインが大量の資材を担いで、資材置き場から戻ってきた。
どうやら資材置き場にあったのはこれで全てらしいが、これだけあれば5人乗りの船を作ることくらいはできるだろう。
山のように積まれた木材や鉄板を見れば、それは火を見るよりも明らかだ。
「マリン船長、船大工はいねぇのら?」
「船大工は、二年前の事故で……」
「そういえば、船員がマリン船長とあくあちゃしかいないのって……突然姿を消した宝鐘海賊団……ああ、そういうことなのらね」
ルーナの脳内で、全てが繋がった。
マリンがわざわざ詳しい状況を説明するまでもなく、過去に起きたであろうことと結び付けてここまで理解してしまう洞察力は、やはり女王の器なのだろうか。
その後。
ノインは、本来であれば対象を地面に叩きつける【響く力】を逆向きに使って大量の資材を浮かせる要領で軽々持ち上げ、ルーナ、まつり、そしてノインを加えた宝鐘海賊団一行は、再びボートを泊めた岸部へとやってきた。
「じゃあ、ルーナたん。とりあえず前の船の設計図を貸すので……よろしくお願いしますねぇ」
「上手くいくか分からないのらけど……とりあえず試してみるのら」
マリンが渡した設計図からイメージを掴み、念力のような何かで空中に資材を集め、徐々に船を形作る。
「おお、すごーい!」
「せ、せんちょの日記で見た、昔の船みたい……!」
「ちょっとあくたん!?船長の日記読んだんですかぁ!?」
大量の資材を組み合わせて、少しずつ船を完成させていくルーナ。
集中しているのか、周りの声には全く反応しない。
数時間が経過する。
ルーナが船を作っている間。
あくあ、まつり、ノインの三人が岩にもたれかかって雑魚寝をする中、マリンは出航の準備を始めていた。
「食料よし、備品よし……あとは船だけですね」
マリンは周囲を探索し、荒れ地をうろついていたトカゲを狩り、その肉と少しばかりのハーブを調理して船出を祝う料理に仕上げる。
「……んぁ……?いい匂い……」
肉とハーブの香りにつられて目を覚ますノイン。
それと同時に、再び瞼を開くルーナ。
「ハァ、ハァ……できた、のら……」
倒れ込むルーナ。
「大丈夫ですか、ルーナたん!?」
マリンがルーナの側へ駆け寄ると、目の前には巨大な海賊船が完成していた。
「つ、疲れたのらぁ……」
「すごい……すごいですよ、ルーナたん!」
その船は全長40メートルはある巨体に、元の船には無かった魔力をリソースとする推進器も付属していた。
このアイデアをどこで得たかは不明だが、出来上がったのはガレオン船と蒸気船の中間のような、どちらとも言えないような船。
ところどころに未知の技術の片鱗が見られるが、これもルーナの力によるものなのだろう。
「……も、もうダメなのら……ちょっと休ませて欲しいのら」
意識を失い、マリンの膝の上に横たわるルーナ。
「……お疲れ様です、ルーナたん」
マリンは眠りについたルーナの頭を撫で、目が覚めるまでそのままでいた。
先に船へと乗り込み、そこでマリンの料理を食べ始めるあくあ、まつり、ノイン。
マリンもルーナを背負って甲板に座り込み、再びルーナに膝枕をし始めた。
「せんちょ、何だかお母さんみたいだね」
「行き場を失った母性が溢れて止まないんですよぉ」
「へ、へぇ……」
再び、食事を始めるマリンの瞳に、小さな涙が浮かぶ。
かつて多くの仲間を失ったマリンが、またこうして船長として生きている。
一人の小さな姫までもが、自分のことを慕ってくれている。
「幸せ者ですね、あたしは」
そう呟いて、マリンはそっとルーナの頭を再び撫でた。
アクアの骨片
姫森ルーナより漏れ出た概念、その残滓
姫森ルーナが求めた海賊の像は、いつしか水と共に消え去った
それを拾うは新生宝鐘海賊団が副船長、湊あくあであった