~???~
どこでもない場所。
「グゥ……アァァァ……!」
鬼の少女は太刀を振り、その刃はただひたすらに空を斬る。
石を、鳥居を、境内を、その全てを切断する。
「ハァ、ハァ……。余は……結局、何も出来なかった……これじゃ、あのカミ様達と同じだ余……!」
再び狂気に呑み込まれかけていたあやめは、辺り一帯の建造物が粉微塵になるまで刀を振り回した後、正気を取り戻して嘆く。
カミは世界を救えない。
現に、白上フブキであった筈の存在は本人でさえも気付けない欺瞞に塗り固められた存在であり、あやめが慕っていたミオは、本物の白上フブキに殺されてしまった。
今は旅に出ているという犬と猫の神も、福音の廃城近辺で消息を絶ったらしい。
こんな世界なのだ。
かつての青春を過ごした魔界学校も、今やどうなっているか分かったものではない。
「余は……どうすればいいの……ア、アア……」
再び狂気に蝕まれ始めたあやめ。
「ヴヴヴ!!……ハァ、ハァ……」
しかし、自身の左腕を刺して無理矢理に正気を取り戻す。
日に日に、己を蝕む狂気が力を増している。
一度は取り戻された正気も、急速に失われ始めている。
「このままじゃ……このままじゃ、いけない……でも、でも……!」
百鬼あやめは、既に不死の身。
何度己を斬ろうとも、何度死のうとも、トドメを刺されない限り何度も蘇る。
そして、狂い果てた自分にトドメを刺してくれる人は誰もいない。
「ハァ、ハァ……!何で、こんなの、こんなの……!」
あやめはもう一度、己の首を二本の刀で斬り裂く。
「死ぬより、辛い……」
血飛沫。
首元から噴射される朱い霧に紛れて、首が境内跡から転がり落ちる。
しかし、その数十秒後。
「ぐちゃ、ぐちゃ、ぎぎぎぎ」という音と共に、百鬼あやめの首が徐々に再生する。
「ハァ、ハァ……また、首が戻ってる……」
美しい顔をした首を量産したいのであればともかく、こんな状況なのだ。
本人でさえも、それを不気味に感じずにはいられなかったのだろう。
「ア、ア、アア……」
放たれる邪気とともに、僅か一分程であやめの首は角の一欠片、頭髪の一本まで完全に復活。
これで何度目か、邪気に呑まれるあやめ。
「アアアアアアアアア!」
目も赤く発光し、もはや何も無くなった空間を斬り刻む。
己の首のみならず、辺りの全てを斬り裂かんとするそれはまさに鬼。
卓越した剣術に、邪気と狂気を孕んだ鬼の力。
「ナキリ」は、とうとう空間をも斬り裂こうとしていた。
せめて、清らかに狂えたのならば。
僅かに残り続ける正気は、悲鳴を上げることも許されなかった。
正常と異常は、同時に存在し得ない。
その現実だけが、百鬼あやめの自我を鞭打ち続けていた。
???
稲荷博士の元同僚であり、深淵へと引きずり込まれた博士
薄い金色の髪に黒縁眼鏡が映える
彼女は研究を続け、優秀な研究者として世界の存続に尽力し、しかし遂には深みへと消えていった
もはやその存在を知る者も、ごく僅かである
しかその意匠が隠されているのか、それとも単なる偶然か
古代兵器の一つに、彼女の名が刻まれている
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