ホログラム・パラドクス   作:モガミのコッコ

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ストームルーラー

~ムラサキ村跡~

 

「鬼の首……メルが貰うよっ!!」

 

「……」

 

メルは、全身から噴出した血で生成された大鎌を二丁構えてナキリへと飛びかかる。

 

「トワも戦うよ!!はっ!喰式(グラビティ・イーター)

 

「行くぺこっ!【ストームルーラー】」

 

「フンフンッ!」

 

そこへ、トワによる重力魔術とぺこらによる風の刃を吹き飛ばした攻撃が援護に入る。

 

しかし、ナキリは鎌を弾いた上で腹部に蹴りを入れてメルを吹き飛ばし、トワの魔術から逃れた上でぺこらの剣から繰り出された突風をもう一本の脚で吹き飛ばし弾いた。

 

「う、とんでもないパワーだね……メルでも一人じゃ多分勝てなかったよ……!」

 

「でも、ぺこーら達が皆で戦えば!」

 

「きっと、倒せる!!【死神の神(サイス・オブ・カリ)】!」

 

「【ストームルーラー】!」

 

「【ブラッディ・ミサイル】!」

 

今度はトワが鎌を振り回してナキリへ急接近、そしてぺこらの風とメルの固めた血が援護する。

 

「フンフンッ!ガアアッ!」

 

ナキリは太刀で血のミサイルを弾き風を回避した上でトワの鎌を弾く。

 

瞬く間に対象を切り替えながら、一対一の状況を作り出す。

 

「はぁ、はぁ……どうしよう、メルの血のミサイルも、ぺこらちゃんの風も全然当たらない……!」

 

「……ちょっと下がってるぺこ。デカいの一発、ブチ込んでやるぺこだよ!!」

 

傷一つ無く着地するナキリ、その冷静な戦いぶりに、現状のままではこちらが消耗させられるだけであると判断したぺこら。

 

何に頭を悩ませたか、その場を動かないシオンの元へメルとトワを下げ、剣に突風を纏わせる。

 

それは今までの「ストームルーラー」とは大違いの、真空状態を作り出す双方向に回転する複数の風の渦。

 

「スキアリ……!」

 

「受けられるものなら受けてみるぺこ!!スープのレシピを教えてくれたおじさんの必殺技ァ……」

 

ぺこらの懐へと潜り込むナキリ。

 

居合の構えから目にも止まらぬスピードで引き抜かれる大太刀。

 

その刃は、ぺこらが剣を振り上げた時点で腹部の皮膚を斬り裂き、胸部の肉へと達する。

 

「ハァァ……」

 

「ッく……ゥゥゥゥゥゥ!!!はぁぁぁ……!!【嵐の王】ッッッ!!!」

 

「!?」

 

しかしぺこらは右足を踏み込んで剣を構え直し、傷口から血を吹き出しながらその剣を突き出す。

 

その風はナキリを宙へ浮かべ、腹部を抉る。

 

そして、剣に纏わせていた風を放出。

 

「……やぁぁっ!」

 

それと同時にナキリの腹部に「嵐の王」最大の風圧がナキリの腹部へ押し寄せる。

 

「ゴアア……?」

 

足の踏み場もない空中ではナキリの強い体幹も意味を持たない。

 

そのままナキリは村の外まで吹き飛ばされ、とうとう腹部には風穴が空いた。

 

「よぉし!!効いてるぺこぉ!げふぅっ……!はぁ、はぁ……!」

 

「ぺこらちゃん!……あっちで休んでて、後はメル達が何とかするから!」

 

「す、すまねぇぺこ……」

 

血みどろになり、丘の上に倒れ込んだままのナキリ。

 

一方のぺこらも傷口からの出血が止まらず、戦闘不能になってしまった自分を邪魔になると判断し、戦場となっている村の西部から離れて境内へと続く階段へ戻り、その一段目と二段目に寄りかかるかたちでゆっくりと倒れ込んだ。

 

「……ガ、ァゥ……」

 

ナキリは倒れたまま起き上がることなく、丘の上に倒れている。

 

「見つけた!さっきの鬼!」

 

「先代の生徒会長……強いとは聞いてたけど、まさかここまでだったなんて……」

 

「ぺこらちゃんがいなかったら危なかったね」

 

メルは血で生成した羽、トワは自身に逆向きの「[[rb:喰式>グラビティ・イーター]]」をかけて反重力装置とすることで浮遊、「嵐の王」によって吹き飛ばされたナキリの元へ向かう。

 

「さあ、ナキリ会長……覚悟しなよ!!」

 

トワは右手に魔力を溜める。

 

そして魔弾を発射しようとした、その瞬間。

 

「トワちゃん!!危ないっ!!!」

 

メルはトワの眼前に血液の壁を生成し、肩を引っ張って身を引かせる。

 

トワの眼前を刃が通過。

 

血の壁は真っ二つに斬り裂かれ、その先には腹に穴がぽっかりと空いたままのナキリの姿があった。

 

「ァァァ」

 

「そ、そんな……あんなにボロボロになって、まだ戦う気……?」

 

「危機一髪だったよ……。トワちゃん、もうひと頑張りしなきゃいけないみたい」

 

メルは全身から血を噴き出し、鎧のような形状へと変化させる。

 

「そんなこともできるんだ、その血……」

 

「ふふん、メルは天才だからねっ!さあ、行くよ!」

 

あと一押し。

 

メルとトワは魔力効率を考えずに全ての力を振り絞って突撃。

 

鬼の暴走に終止符を。

 

しかし彼女達の瞳に映っていたのは、再び刀を握って確かに立っていた鬼の姿であった。




嵐の王


巨いなる脅威に打ち克つべく造られた大剣、ストームルーラー
その概念及び記憶によって見出される戦技

それは嵐の中、或いは巨人の前でのみ真価を発揮する

騎士は友との約束のため、剣と記憶を手に罪の都へと赴いた
もはや理性無き友へ、そして壊れてしまった巨人の王へ
それは最後の手向けであった
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