~ムラサキ村~
メルに刀を折られたナキリは足を踏み込み、風穴が空いた腹部から血を垂らしながら両腕を引き、高速移動を始める。
地形を無視しているかのように抉りながら、残像が残る程のスピードでシオンの周囲を走り回るナキリ。
「【
しかし、シオンはナキリの動きを予測して「喰式」を放つ。
「グ、ァ……」
重力、電撃、神性、闇、その全てがナキリの全身を削りとる。
「【ボルト・オブ・ヴァイオレット】」
「……ヴゥゥゥゥ!!」
鎧は綻び、丹田を削られ、力が抜けていく。
「これで終わりにする……終わりにしないといけない……!!」
「……!」
力を込めることもできず、武器も失ったナキリは満身創痍だった。
鬼の悲劇を、友の暴走を止める。
「喰式」を纏い、地面に対して逆に重力をかけることで、実質的な反重力装置として空へ飛び上がり、浮遊した状態で右脚に雷を集めるシオン。
限界はナキリは膝を突こうと、腰を落とす。
「【サンダーボルト】」
雷を纏ったシオンの蹴りが、天高くよりナキリに襲いかかる。
地に膝を突いたナキリは、為す術も無く電撃の中へ姿を消していく。
「……ガァッ!」
……フリをして背後へ飛び上がり、電撃が一瞬、身を掠める程度に被害を抑える。
「っ……!?」
「グァァァ!!」
そして、間もなくナキリの回し蹴りがシオンの身体を吹き飛ばす。
「はぁっ……!?」
衝撃で内臓を揺らされたのか、口から血を吹き出してそのまま地面に倒れ込む。
「……シオン」
「あや、め、ちゃん……」
「……【
ナキリは右腕に魔力を纏わせ、一度に放出。
「が、はぁ……!!」
意識が朦朧とした状態で倒れていたシオンは、ナキリの右腕から放たれた魔力の波に吹き飛ばされた。
シオンの小さな肉体は吹き飛ばされるように宙を舞い、境内前の階段辺りで受け身をとって体勢を立て直す。
「……!」
「がはっ、がはっ!……あやめちゃん……!!もう、やめて……!」
最早、正気どころか「百鬼あやめ」さえも失いつつある鬼。
かつて失った友人が、本人の自我の一切を失って暴れまわる姿。
それはシオンの思考も、覚悟も、その全てをグチャグチャにかき乱すには十分であった。
「……!」
傷だらけのシオンは、右腕に触れる何かを感じる。
「おい、魔女っ娘……」
「ぺ、ぺこらちゃん……!?」
そこには、右手でシオンのスカートの裾を掴み、掠れた声をあげるぺこらの姿。
「これ、を、つか、う、ぺこ……大切な友達、が、相手、なら……これが……」
ぺこらは、渇いたナキリの血が付着した自身の剣をシオンの左手へ託す。
「ぺこらちゃん……!」
シオンはそれを手に取り立ち上がり、しかし一方で肉体が限界を迎えたぺこらは、シオンの左手に己の右手を重ねたまま意識を失った。
「……ぅ」
「ぺこらちゃん、ありがとう。……行ってくる」
シオンは両手でぺこらの剣を持ち、一歩、また一歩とナキリへ近付く。
「ヴヴ……ガァァ」
「……最終決戦だよ、あやめちゃん!」
「……!」
ナキリは足を地に踏み込んで構えをとり、シオンは全身に雷を纏った状態でぺこらの剣を構える。
勝敗は今、血に染まった村の跡にて決しようとしていた。
叫びの内側へ
常闇トワによる闇の魔術
空間を削り取る空間、「暗黒空間」と呼ばれるそれを生成する
声帯を触媒として発動するため、道具を必要としないが無詠唱での発動は不可能
悪魔は魔術の扱いに長けている
そして歌を得意としたトワは声帯を触媒に、範囲を広める魔術を見出した