ホログラム・パラドクス   作:モガミのコッコ

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死するべくして

~ムラサキ村~

 

「ハァ、ハァ……」

 

「ガァァァ……!」

 

「耐えて……シオンの身体ッ!!」

 

「シマイ、ニ、スル……!」

 

シオンは詠唱を始め、全身に紫色の雷を纏う。

 

一方のナキリも全身にオーラを纏い、周囲の空間が歪んで見える程の力を右腕に集中させた。

 

「【脚纏喰式(きゃくてんぐいしき)(シン)】」

 

ぺこらから託された剣を背後に構えながら、高く飛び上がって雷と重力を纏わせた右脚を突き落とすシオン。

 

「【鬼ノ掌(オニノテノヒラ)】!!」

 

ぶつかり合うナキリの右手とシオンの右脚。

 

血に染まった家々はあっという間に倒壊し、村はもはや跡形も無く消し去られてしまう。

 

「うううううううう……っ!」

 

「ガァァァァァァァァァ……ッ!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 

一瞬、空間の歪みが生じる。

 

その間にナキリの右腕は消し飛び、しかしシオンも衝撃で吹き飛ばされた。

 

「グゥゥッ!」

 

「はぁぁぁ……」

 

右腕を失い、膝から崩れ落ちていくナキリ。

 

一方のシオンは宙返りからの着地、そして足に纏わせていた重力をナキリの方へ向けて急接近。

 

よろめくナキリの眼前にて風を纏った剣を構え、そして。

 

「【嵐の王】」

 

「ガァァァァァァァァッ!!」

 

胸部を巻き込み、頸部を一刀両断。

 

負荷に耐え切れず、崩壊するぺこらの剣。

 

そしてナキリの首から上は、まさに鬼の形相のまま土の上へと落下する。

 

「終わりだよ、あやめちゃん」

 

胴体と脚部は瞬く間に消滅し、顔もいつの間にか生前のものに戻っていたあやめ。

 

その口から放たれた最後の言葉は。

 

「………………ありがとう、シオンちゃん」

 

「あやめちゃん……うっ」

 

ただ視界を埋め尽くす、かつての友人。

 

そして、自我を失う程までに「鬼」と化した己という邪悪を消し去った勇者。

 

紛れも無い、「紫咲シオン」への感謝の言葉であった。

 

「……シオンの方こそ、今までありがとう。それと……。ごめん。本当に、ごめんなさい……。ごめんなさい……ごめんなさい……!!」

 

膝を突き、滝のような涙を流すシオン。

 

かつて大魔術師と呼ばれたシオンは、泣き声ももはや声にならず、整った顔をくしゃくしゃに崩して、その場に跪いている。

 

それから、どれだけの時が経ったことか。

 

「ひっく、ひっく」と嗚咽しながらも、ゆっくりと立ち上がるシオン。

 

そして。

 

「……もう、いいかな。……【喰力(くうりき)】、解除」

 

シオンは、自身にかけていた魔術を解除する。

 

「……シオンの役目は、これで終わり。あやめちゃん。シオンもすぐ、そっちに……行く……か、ら……」

 

全身の力が抜けたのか、杖と魔導書が地に落ちる。

 

その肉体は急速に干からび、瞬く間に灰と化す。

 

自らの役目を終えた紫咲シオンの生は、遂に終焉を迎えたのであった。




喰力


大魔術師ムラサキが開発した闇の魔術
自らを不死者とし、寿命と生命エネルギーを代償に傷と老化を呪いとして逸らす

大魔術師ムラサキは、紫咲シオンとして新たに生を為した
それは不死者と成り、かつての友を止める為の命を己に与える禁術の類であった

百鬼あやめの死から、長い時が流れた
その身で時を待つには、人の身ではあまりにも無力だったのだ
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