オールマイトの隠し子なんだけど、オールマイトに隠し子が居るってマジ? 作:米国主将
〇月×日
明日はついに雄英高校の入試の日だ
といっても、仮にも勉強も個性の使い方も、度々プロヒーローから指導を受けた身だ
ちゃんと実力を発揮できれば、まず落ちる心配はないので全く緊張はしていない。
本来なら推薦入試を受けてしかるべき立場なのに申し訳ないとパパは言っていたが
パパは仕事の都合だけでなく、私の生活を守るためにも
自身のプライベートを秘匿しているのだから、ただの一般人として試験を受けるのは当然の事だと思っている
むしろ、パパへの感情はママが亡くなってから男手一つで私を育ててくれた事への感謝しかない
最近は何時に増して家を空ける事が多いが、今年から雄英の教師になると言っていたので
きっとその準備に忙しいのだろう
今は現役を退く様子は見せていないが、後継者がどうこうという話をしているのを聞いた事があるし
あの体では、やはり現場に立ち続けるのは辛くなってきたのだろうか?
明日の入試で主席合格を勝ち取る事を持って、親孝行としたいと思う
※ ※ ※
『今日は俺のライヴへようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!』
「YO!KOsoー・・・」
雄英高校実技試験会場、ボイスヒーロー・プレゼントマイクによる試験内容の説明会。
受験生の一人である八木 美久子はマイクの呼びかけに元気よく返事をしようとしたが
最初の一声以外はすぐに勢いを無くしてしまった。
(え・・・応えたの私だけ?もしかして私、勘違いしてた!?)
思わずビクつきながら周囲を見回すと、何だコイツと言いたげな目の受験生達が
美久子に注目していた
『受験番号1610くん!ナイスなお返事サンキューな!他の受験生のリスナーも彼女を見習っていこうぜ!
それじゃ実技試験の概要をサクッっとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?』
『YEAHH!!』
「YE!ahh・・・」
どうやら反応したのは間違ってなかったらしい、らしいのだが、やはり反応したのは間違っていたらしい。
またも美久子以外の受験生は誰一人マイクに応えず、彼女は再びさらし者となった。
美久子が真っ赤になって俯いている間に、マイクはサクサクと試験内容を説明していった。
簡単に纏めれば、演習用の無人市街地にいる敵ロボットをひたすらに破壊しろという物だ。
(やった、私向けの試験だ!まぁ戦闘で私の個性に向いていない試験は、そうそう無いと思うけどね)
注目を集めるのは嫌いではないが、あのような形は御免だ、私は貝になりたい。
そう思いつつ、周囲の視線を無視して顔の火照りを醒ましながら試験に集中する。
相手がロボットなら加減は必要ない、ただ全力を出し切ればそれで充分!
『ハイ、スタートー』
(よし!スタート!)
突然のスタートに周囲が戸惑う中、マイクの言葉にのみ集中していた美久子は
先んじて受験生の集団の中から、試験会場へと飛び出した!
『どうしたぁ!実戦じゃカウントなんてねえぞ!走れ走れ!』
マイクの発破を受け、一拍遅れて駆け出した受験生達の足音が美久子の背に迫る
試験の難易度に対する不安は無かったが、この入試に賭ける集団の放つ熱気は彼女が予想していなかった圧力を放っていた
(落ち着け!後ろを気にするな!彼らは敵じゃないし、私達はマラソンをしている訳でも無い!
見るべきものは前だけだ!)
背後に迫るプレッシャーを振り切り、敵ロボットの姿を求めて、更に加速する美久子。
ビルの合間を駆け抜けると、果たして1機目の敵ロボットが彼女の眼前に現れた。
「標的捕捉!!ブッ殺ス!!」
いかにも敵らしい物騒なメッセージと共に、ガトリングの砲口を美久子に向ける敵ロボット
だが彼女は一切怯む事無くロボットへ突進し、その砲口を鷲摑みにした。
「悪いけど・・・」
すると、敵ロボットの動きが鈍り、少女の全身にエネルギー奔流が駆け巡る!
「ぶっ殺されるのはそっちの方だよ!」
彼女が力を籠めると、ロップイヤーラビットの耳のように垂れ下がっていた金色の前髪が天を衝くように逆立ち
その小さな左手に掴まれたガトリング砲は音を立ててねじ曲がっていった
「すまぁーーっしゅ!!」
気合一閃!
振りぬかれた右腕は目にもとまらぬ速さで敵ロボットを吹き飛ばし、その先に居た別の敵ロボットもまとめてなぎ倒していった。
「よぉし!!」
行ける!
美久子は両足に力を籠め、新たな敵ロボットに向かい全力で跳躍する!
「すまぁーっしゅ!」
「すまぁーーっしゅ!」
「すまぁーーーっしゅ!」
掴み!捻り!殴り!吹き飛ばす!
まるで小さな嵐のごとく、敵ロボットを粉砕しながら試験会場を駆け巡る!
「よし!次!」
敵ロボットを上空に向けて跳ね飛ばすと、それを追うように空高く跳躍!
ロボットを掴み取ると、それを砲弾とするべく地上の敵ロボットに目を向けるが・・・
「・・・なにあれ」
いつの間にか、ビルよりでかい敵ロボットがビルを破壊しながら闊歩していた。
「あれが0Pロボット!?いくらヒーローったって、あんなのと戦う機会なんて・・・
いや普通にあるかも、Mtレディみたいな個性持ってる敵も居るかもしれないし」
巨大ロボットの周りに目を向けると、受験生たちが蜘蛛の子を散らすように逃げていた。
「雄英の事だから、安全はちゃんと確保していると思うけど・・・ここで放っておいたらヒーローじゃないよね!」
叫ぶと共に、掴んだ敵ロボットを巨大ロボットへと投げつける!
だが飛来物を感知した巨大ロボットは、その剛腕で敵ロボットを叩き潰す!
相手のカメラが自分を捕捉した事を確認した美久子は、ビルの谷間を跳ねまわりながら巨大ロボットへと接近し
振り回される剛腕を搔い潜ると、ロボットの頭部装甲に左手をめり込ませてその巨体に取りついた。
「見た目どおり凄いパワーだね・・・でも、私の個性の前じゃ、それは無意味だよ!と・う・きょ・う・と~・・・」
その言葉と共に、振り被った右腕にエネルギーが集中し・・・
「すまぁぁーーーーーーーーーーーーーっしゅ!!!」
雄叫びとともに右腕を振り下ろせば、轟音と共に巻き上がる爆発と砂埃!
・・・煙が晴れた先には、見るも無残にペシャンコになった巨大ロボットと
その上で勝ち誇る少女の姿があった。
※ ※ ※
『よっしゃあーー!』
美久子が勝利の雄叫びをあげている時、試験会場を監視している雄英高校のモニター室では、少女の活躍ぶりに教師達が頭を抱えていた
「優秀なんだろうな、とは思っていましたが、まさかここまでとは・・・」
「えーと、ごめんね、一応やりすぎるなとは言ったんだけどさ・・・」
「別にあなたが謝る必要は無いでしょう、彼女は合格ラインを知らないんだから、手を抜くのは合理性に欠ける」
実際、試験官達が気にしているのは彼女の獲得ポイントでは無かった。
彼女は他の受験生のポイントを横取りするような戦い方はしていないし、ちゃんとターゲットの出現数を調整する事で
クジ運のせいでチャンスすら無い、という事態にならないように調整もしている。
「0Pギミックの撃破、これどう判断するべきですかね」
人の本質は圧倒的脅威に晒された時、そこに何のメリットも無い時にこそ明らかになる
逃げるか、助けるか、立ち向かうか・・・あの巨大ロボットの目的は単なる妨害ではない。
そこで現れる人間の正直な行動を見極める事こそが、その真の目的だったのだ。
だが、彼女に対してはそれは当てはまらなかった。
彼女は明らかに巨大ロボットを脅威と感じていなかった。
小型ロボット相手と同じく、ただ勝てるから倒しただけだ。
「単純に強いというだけでも評価に値するのでは?」
「例え脅威と感じ無くとも、他人を守るためにメリットの無い行動を取ったのは確かですし・・・」
「どっちにしても彼女の合格は間違いないかと」
「・・・そもそも評価の必要、無いかもしれませんよ?他の受験生の審査次第ですが、これはもしかして」
・・・巨大ロボットの撃破を抜きにしても、普通に主席合格なのでは?
「さすがは貴方の娘、と言ったところですか、オールマイト」
受験番号1610番、八木 美久子。
世間一般には、その存在も知られていないが、その正体は
世界最強ともいわれる日本№1ヒーロー、オールマイトの実の娘である。
八木 美久子
オールマイトの隠し子。
厳密には隠されているのはオールマイトの正体が八木俊典である事であり
彼女自身は、俊典の娘として堂々と暮らしているので隠し子という表現は正確ではない。
幼いころにヴィランとは全く関係ない交通事故で母を亡くして以来
男手一つでオールマイトに育てられてきた。
ヒーローとしての尊敬も合わさってファザコン。
当然戦闘スタイルもオールマイトリスペクトであり、よく解らない遠慮の結果
アメリカの州の代わりに日本の都道府県を技名にするという暴挙に出た。
一般には存在を知られていないが、オールマイトの正体を知る者、言い換えれば
一流のヒーローやその関係者とは交流がある。
個性発動時には、オールマイトのトゥルーフォーム→マッスルフォームの時のように髪型が変わるが
画風がアメコミになったりはしない。
オールマイトの個性は超パワーとだけ教えられており
OFAとAFOの宿命については知らされていない
名前の由来は八木俊典と同じく「アメリカンコミック」から
個性の詳細は後の話で